図書館員のコンピュータ基礎講座

ローマ字

【2013-05-03更新】

日本語のローマ字綴り法についてご紹介します。

標準的な綴り法

主な日本語のローマ字綴り法には、ヘボン式、日本式、訓令式があります。

ヘボン式

ヘボン式は、アメリカ人宣教医James Curtis Hepburn(1815~1911)が1867年に編纂した日本初の和英辞典「和英語林集成」の日本語表記法として用いられたものです。「和英語林集成」のヘボン式ローマ字は、版を重ねるごとに修正され、第3版で完成しました。
英国規格協会の規格(BS 4812:1972)や米国規格協会の規格(ANSI Z39.11-1972)もあり、これらの内容は基本的に同じです。米国規格は1994年に廃止されました。
また、道路標識用、駅名標用、旅券(パスポート)用などのヘボン式もあり、日本の旅券(パスポート)は、基本的にヘボン式から長音符号を省いたものを採用しています。

明治学院大学図書館が『和英語林集成』デジタルアーカイブス外部へのリンクを提供しています。

英国規格(BS 4812 : 1972)―要約外部へのリンク

米国規格(ANSI Z39.11-1972)―要約外部へのリンク

日本式

日本式は、物理学者の田中舘愛橘(1856~1952)が1885年に「理學恊會雜誌」で発表したものです。なお、初出時にはマ行およびマ行拗音が抜けていましたが(誤植と推測される)、1938年に「葛の根 : 田中舘愛橘論文抜集」に再掲された時には補記されています。

訓令式

訓令式は、田中舘愛橘の日本式ローマ字を改変し、1937年に内閣訓令第3号として公布したものです。その後、1954年に廃止され、内容を改訂したものが内閣告示第1号「ローマ字のつづり方外部へのリンク」として告示されました。その第1表が1937年の訓令の内容を踏襲した訓令式ローマ字です。「ローマ字のつづり方」の詳細については、下記の「ローマ字表」を参照してください。
1989年に制定されたISO 3602は、訓令式を採用しています。ただし、厳密翻字に限って日本式ローマ字を採用するとされています(第5項の原注2)。なお、ISO 3602は、ヘボン式に変更される予定になっています。

ローマ字表

以下は、1954年の内閣告示第一号「ローマ字のつづり方」の内容を編集し解説を加えたものです。

「ローマ字のつづり方」は、「まえがき」「第1表」「第2表」「そえがき」で構成され、第1表には1937年の訓令の内容を踏襲した訓令式ローマ字を掲載し、第2表にはヘボン式と日本式の一部が併記されています。

まえがき

まえがきには、次の通り記載されています。

  1. 一般に国語を書き表わす場合は、第1表に掲げたつづり方によるものとする。
  2. 国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第2表に掲げたつづり方によつてもさしつかえない。
  3. 前二項のいずれの場合においても、おおむねそえがきを適用する。

第1表および第2表

第1表と第2表の内容をまとめて表にしました。

かな 訓令 日本 ヘボン かな 訓令 日本 ヘボン かな 訓令 日本 ヘボン かな 訓令 日本 ヘボン かな 訓令 日本 ヘボン
a i u e o
ka ki ku ke ko
sa si shi su se so
ta ti chi tu tsu te to
na ni nu ne no
ha hi hu fu he ho
ma mi mu me mo
ya (i) yu (e) yo
ra ri ru re ro
wa (i) (u) (e) (o) wo (o)
n
ga gi gu ge go
za zi ji zu ze zo
da (zi) di (ji) (zu) du (zu) de do
ba bi bu be bo
pa pi pu pe po
きゃ キャ kya きゅ キュ kyu きょ キョ kyo
しゃ シャ sya sha しゅ シュ syu shu しょ ショ syo sho
ちゃ チャ tya cha ちゅ チュ tyu chu ちょ チョ tyo cho
にゃ ニャ nya にゅ ニュ nyu にょ ニョ nyo
ひゃ ヒャ hya ひゅ ヒュ hyu ひょ ヒョ hyo
みゃ ミャ mya みゅ ミュ myu みょ ミョ myo
りゃ リャ rya りゅ リュ ryu りょ リョ ryo
ぎゃ ギャ gya ぎゅ ギュ gyu ぎょ ギョ gyo
じゃ ジャ zya ja じゅ ジュ zyu ju じょ ジョ zyo jo
ぢゃ ヂャ (zya) dya (ja) ぢゅ ヂュ (zyu) dyu (ju) ぢょ ヂョ (zyo) dyo (jo)
びゃ ビャ bya びゅ ビュ byu びょ ビョ byo
ぴゃ ビャ pya ぴゅ ビュ pyu ぴょ ビョ pyo
くゎ クヮ kwa
ぐゎ グヮ gwa
  • 「ローマ字のつづり方」にはかなは示されていませんが、「かな」の列に、平仮、片仮を付記しました。
  • 「訓令」の列は、第1表に基づく訓令式ローマ字です。( )は、重出を示します。
  • 「日本」の列は、第2表の6~9行目に基づく日本式ローマ字です。
  • 「ヘボン」の列は、第2表の1~5行目に基づくヘボン式ローマ字です。

そえがき

「そえがき」の内容を編集し、例を加えたものです。

  1. 撥音「ん」
    • 全て「n」と表します。
      例: 女(onna)、新聞(sinbun/shinbun)
    • 後続する母音または「y」と切り離す必要がある場合には、「n」の後に「'」(アポストロフィー)を付けて表します。
      例: 親愛(sin'ai/shin'ai)、パン屋(pan'ya)
  2. 促音「っ」
    • 最初の子音を2つ重ねて表します。
      例: マット(matto)
  3. 長音
    • 母音の上に「^」(サーカムフレックス)を付けて表しますが、大文字の場合は母音を並べてもよいとしています。
      例: ゲーム(gêmu)、アート(ÂtoまたはAATO)
  4. 特殊音
    • 特殊音の書き表し方は自由としています。
  5. 大文字
    • 文の書きはじめ、固有名詞の頭文字は大文字で表しますが、固有名詞以外の名詞の頭文字は大文字で表してもよいとしています。

ポイント
James Curtis Hepburnのヘボン式では、撥音は、「b」「p」「m」が後続する場合は、「新聞(shimbun)」のように「m」と表します。促音は、「ローマ字のつづり方」と同じです。長音は、「勝負(shōbu)」のように母音の上に「¯」(マクロン)を付けて表します。
また、英国規格や米国規格では、「sh」「ch」「ts」の撥音は、「熱心(nesshin)」「発着(hatchaku)」「ナッツ(nattsu)」のように、それぞれ「ssh」「tch」「tts」と表します。「tch」は、日本の旅券(パスポート)でも採用されています。

田中舘愛橘の「理學恊會雜誌」の論文の日本式ローマ字は、上表の日本式ローマ字と次の点で違いがあります。

  • ヤ行: イ(yi)、エ(ye)
  • ワ行: ヰ(wi)、ウ(wu)、ヱ(we)

ただし、「葛の根 : 田中舘愛橘論文抜集」の「5.音韻學上より見たる日本語の音聲と正字法」(1926年4月28日の日仏会館における講演記録)では、イ(yi)はイ(i)、エ(ye)はエ(e)、ウ(wu)はウ(u)となっています。

また、田中舘愛橘の「理學恊會雜誌」の論文には撥音、促音、長音に関する記述はありませんが、「葛の根 : 田中舘愛橘論文抜集」の「5.音韻學上より見たる日本語の音聲と正字法」は、「ローマ字のつづり方」と同じ内容となっています。ただし、「理學恊會雜誌」の論文の例では、長音として「¯」(マクロン)を使用しています。

ISO 3602が採用している訓令式は、撥音、促音、長音の表記については「ローマ字のつづり方」と同じですが、次の点で違いがあります。なお、厳密翻字のために日本式ローマ字を採用する場合には、長音は、母音の上に「¯」(マクロンス)を付けて表します

  • 助詞: は(wa)、へ(e)

特殊音

国立国会図書館の「『JAPAN/MARC MARC21フォーマット』におけるローマ字読み表記要領(PDF)外部へのリンク」では、「ローマ字のつづり方」の第1表に従い表記し、第2表につづり方が示されているものは、第2表に従い表記するとしており、別表として一覧を示しています。この別表の一部は、国立国会図書館が独自に追加したもので、これらは、「ローマ字のつづり方」の「そえがき」の特殊音に当たる、特殊な方言、外国語などを表わすためのローマ字法と考えられます。以下の表は、この別表から、上記の「ローマ字のつづり方」にないものを抽出したものです。

かな ローマ字 かな ローマ字 かな ローマ字 かな ローマ字 かな ローマ字
a i u e o
ka ke
ya yu yo
wa
きぇ キェ kye
しぇ シェ she
ちぇ チェ che
てぃ ティ ti とぅ トゥ tu
てゃ テャ tya てゅ テュ tyu てょ テョ tyo
にぇ ニェ nye
ひぇ ヒェ hye
ふぁ ファ fa ふぃ フィ fi ふぇ フェ fe ふぉ フォ fo
ふゃ フャ fya ふゅ フュ fyu ふょ フョ fyo
みぇ ミェ mye
りぇ リェ rye
ぎぇ ギェ gye
じぇ ジェ je
ぢぇ ヂェ je
でぃ ディ di どぅ ドゥ du
でゃ デャ dya でゅ デュ dyu でょ デョ dyo
びぇ ビェ bye
ゔぁ ヴァ va ゔぃ ヴィ vi vu ゔぇ ヴェ ve ゔぉ ヴォ vo
ゔゃ ヴャ vya ゔゅ ヴュ vyu ゔょ ヴョ vyo
ぴぇ ピェ pye
  • 1~4行目は小書き文字です。
参照・参考文献
ページのトップへ
CyberLibrarian : tips on computer for librarians, 1998-