〔 淡い香り 〕
「本当に、泣き虫だな。は。」
まだ顔をあげられずにぐしぐし泣いている幼なじみに、アスランは優しく声をかけた。
嫌味でなく、あきれるでなく、ただただその声が優しくて・・・。
はまた、新しい涙を流した。
「ほら。顔あげて。・・・の顔、ちゃんと見ていきたい。」
少し頬を赤く染めて、アスランが言った。
はてのひらでごしごし涙をぬぐうと、顔をあげた。
泣き続けて目は赤く、頬には幾筋もの涙のあと。
「、すごい顔。」
となりにいたキラは思わず笑ってしまった。
「キーラ。」
「ひっどいよ〜。笑うなんて。」
「ごめん、ごめん。」
に痛くもない拳でポカポカと叩かれてキラは笑った。
「だって、そんなにが泣いてるなんて思わなかったから。」
「泣くよ。だって明日からいないんだよ?アスランが。
学校行くのも一緒に行けないし、帰りも一緒に帰れないし、ジュース飲んで寄り道して帰ることもできないし。
アスランとキラと、三人でいることが当たり前だったのに。
・・・いつも、当たり前だったことが当たり前じゃなくなる・・んだよ・・・?」
そう言ってまたうつむいてしまったに、触れようとアスランは手を伸ばした。
耳のあたりからの髪に触れるが、自身には触れることなくそっと手を離した。
「ごめん。」
謝るアスランに、彼女は今度は首を振った。
アスランが悪いわけでないことは、もキラもわかっている。
14歳の子供では、どうしようもない理由なのだとわかっているのだ。
「そのうち、キラの家もの家も、プラントへくるんだろう?」
気を取り直してアスランが二人に聞いた。
キラは、ちょっとわからないなと首をかしげた。
は浮かない顔のままで、逆にアスランに聞いた。
「・・・戦争になんて、ならないよね。」
「あぁ。俺の避難のほうが意味ないことになるよ。きっと。」
「うん。そうだよね。」
アスランの言葉に、はほっとした顔を見せた。
「それじゃ、そろそろシャトルの時間だから。」
「うん。元気でね、アスラン。」
「あぁ。キラも、元気で。」
「また、ね?アスラン。」
「・・・・あ、・・・。」
「?」
キラにはすぐ言葉が出たのに、にはすぐに返す言葉が出なかった。
は不思議そうにアスランを見ている。
アスランは照れくさそうに空を仰ぐと、ボソッと言った。
「キラばっかりじゃ・・・、嫌だな。」
「うん?」
「なに?僕がどうしたの?」
「あああぁいやっ!なんでもない!」
ひとしきり慌てた後で、やっとの思いでアスランは言った。
「俺のことも、・・忘れないで。その、さっきが言った『3人が当たり前』って、俺も、ずっとそう思ってるから。」
照れくさそうに言ったアスランと目が合うと、はまだ目に涙を溜めたままで、それでも嬉しそうに「うん」とうなずいた。
まだそれは、恋とも呼べない淡い想い。
その3人が再会するのは、3年後。
END
【あとがき】
まさかマユが見ているぷりてぃきゅあで、萌えるとは(笑)
発生源は最初のセリフ。
(だからタイトルもそのまま)
あれを聞いた瞬間に、ぱあっとこれが浮かんだライナです。
あの声はまさに幼少期アスラン。
・・・・妖精ボイスをイケメンボイスでやれるのはさすが石田さんです。
ちいちも勝平さんもあんな声なのに・・・。