「ラスティ・マッケンジー。」
「ニコル・アマルフィ。」

その二人の名前が読み上げられたとき、ぞわり、と私の体が震えた。
となりにいるイザークの袖を、無言で引き寄せる。
まるで私に「落ち着け」と言うかのように、イザークの手が私の手に触れた。










〔 願い 〕










還ってこなかったラスティ。
直後のヘリオポリス崩壊で、何一つ残らなかった彼の身体。
ナスティは戦後、自分のオレンジの髪を一房、墓の中に納めた。

爆散したニコル。
ブリッツ回収現場に立ち会ったとき、かろうじて判別できた彼の右腕。
オーブで荼毘にふせたそれは、ニコルの両親へ手渡した。



直面した、大切な仲間の死。
受け止める強さも、覚悟もなかった当時の自分。
ラスティが戻らないと知ったときの格納庫の冷たさを、今も覚えている。
まだくすぶり続けるブリッツの残骸に、声を絞り出すことしかできなかった苦しさも、まだ覚えている。

討った者を憎む気持ちはない。
ただ私も、ザフトも、同じことをしてきた事実を忘れない。
同じように心を痛めていることに、ナチュラルとコーディネーターの違いはないのだから。




ラスティ。
ニコル。
約束するね。
もう二度と、戦争なんて起こさない。

痛みを知る私たちができること。
未来へ、戦争根絶の想いを伝え聞かせていくこと。
生き残った私たちが、必ず想いを残すから。

だから今は、そこで笑っていてね。




     「 昔ね、プラントは核を撃たれたの。
       それで、とても多くの人が死んだの。
       大人も、・・・子供も。
       悪いことをしていないのに。
       でもね、忘れちゃいけないことがあるの。
       プラントも同じことをしたってこと。
       プラントも、多くの人の命を奪ったの。
       殺されて、殺して。・・・どちらも同じ傷みと悲しみだけ残った。
       だからもう、戦争なんてことしちゃいけないの。
       ね?忘れないでね。 」
 




     END


【あとがき】
 夏はどうしてもこのテーマから逃げられません。
 大切なことは、「みんな同じだよ」ってことだと思います。