知り合ってから、たった2ヶ月の出来事だった。
それでも、絶対的に信頼がおける親友になっていた。
お互いがお互いに、命を掛け合えたほどに。

「元気でね、ちゃん。」
「望美・・・。」

涙はなしにお別れをしよう。

誰からともなくそう決めていたけれど、自然と溢れてしまうものは止められない。
涙は流しても、笑顔で。
は望美と抱き合って、笑顔で別れの言葉を口にした。


「じゃあな、九郎。」
「・・・・・。」
「なんだよ。」
「あ、いや。まだ将臣だと言われても・・・。若いな。」
「三年半ぶん、若返ったからな。」

将臣が元の高校生の姿に戻ったのは、今日の朝の出来事。
同じ部屋で寝起きしていた九郎が、「狼藉者!」と剣を振り上げたことは、最後の大騒ぎとなった。


「ヒノエの本気が最後に見届けられてよかったよ。」
「まだまだ青いね、譲も。」
「ちゃんと大切にしろよ、さん。」
「当たり前じゃん。」


それぞれが現代に残る望美と将臣と譲と声を掛け合い、別れの言葉を口にする。
は最後に両親と抱き合い、三人は最後の親子のぬくもりを抱きしめた。
「時空の狭間が開くよ。」
白龍が両手を広げた。

「さぁ、。」
ヒノエがの手を包みこんだ。
はヒノエを見てうなずいた後に、両親を振り返った。
の母親は右手を振っていた。
の父親はにうなずいてみせた。

ヒノエがその二人に向かって頭を下げた。
つられても頭を下げた。
「元気でね、。」
「ヒノエ、を頼んだぞ。」
両親からの言葉を受けて、とヒノエはそれぞれにうなずいた。

「覚悟してなよ、。もう充分だって言うくらい、幸せにしてやるから。」
の頬に口づけをひとつ落として、ヒノエが耳元でささやいた。
「はい。覚悟してます。」
ヒノエの物言いにすっかりなじんでいたは、笑いながらそう言った。
「では行くよ。」
白龍が言うと、龍脈の流れが生まれてたちはその流れに運ばれた。


「ありがとう、私の世界。大切なことはずっと変わらないから。」

消えていく時空のむこうで、が最後につぶやいた。




   END


【あとがき】
 迷宮設定現代ヒノエ夢、最後までおつき合いいただいてありがとうございました。
 神子設定ではあれど、イコール望美でなく、気持ち的には「遙か2.5」な神子設定で書いてました。
 神子時代の天の朱雀イノトくん。
 「遙か1」のイノリと「遙か2」のイサトを混ぜた名前にしたのはおわかりかと思われますが・・・。
 すっごく貧乏くじを引かせてしまいました。(ごめんねー)
 死んで生き返ったら、好きだった女の隣りには別の男がいましたさ。みたいな。
 ここはもうオリキャラだから!と開き直って書いてました。
 ヒノエにしても最初はイケイケゴーゴーだったのに、書いていくうちに押しが弱くなって。(涙)
 最後まで突っ走ってほしかったですが、なかなか上手くいきませんでした。
 次に書くときは強引なヒノエが書けるようにがんばります。
最後まで読んでいただいた、神子さま。本当にありがとうございました!