「。砂が髪に入るぜ。」
「おあいにくさま。私の髪はディアッカと違ってストレートだから平気。」
憎まれ口をたたきつつ、そのまま上を見ていたら、ディアッカと目が合った。
私を上から覗きこんでいた。
「何?」
「いや別に。」
なんだか、変だ。今日は。
ラスティも、ディアッカも。
「ねぇ、どうしたの?」
私と目をそらして、ディアッカはそのまま波打ち際を歩き出した。
あわてて立ち上がり、あとを追う。
「ディアッカ!」
「なぁ。お前、俺のこと避けてただろ。」
ラスティに言われたことと同じことを言われる。
何よ。私が悪いって言うの?
こちらを向いたディアッカにニラみをきかせていたら、ディアッカはふっと笑った。
「そんなこと言う気はねぇよ。」
まるで私の心の中を読んでいるような言い方だった。
「最後だから、ちゃんと話したかったんだよ。」
最後。
どうして・・・・。
「ディアッカまで、どうして最後とかいうの?」
二人一緒に転校? そんな馬鹿な。
「俺たち、軍に志願したんだよ。」
目を見開いた私に、ディアッカが歩を寄せた。
「卒業待ってたら、志願者も増える時期になっちまうからさ。ラスティと話して、今行くことに決めたんだ。」
ラスティ。
ディアッカ。
・・・・だから、“最後”?
戦争をしているのは知ってた。
プラントと地球で。
でも私たちは変わりのない日常を送っていて。
戦争をしているのは軍だけ。
ザフトだけだって、思ってた。
ナチュラルとコーディネーター。
いがみ合いは昔からあったから。
「軍て・・・ザフト?」
私の言葉に、ディアッカは吹き出して笑った。
「地球軍に入ってどーすんだよっ」
ちがうちがう。
私が言いたかったのは、戦争を、本当にするところに行っちゃうの?ってこと。
だって。
私たちは、ずっと一緒だった。
私にだけ、ヒミツだったの?
「はさ、薬の研究者になりたいって、言ってただろ?」
ディアッカの言葉には正直驚いた。
一度話したかどうかのことだったから。
「治せない病気も、治せる薬をつくるんだって、言ってたよな。」
うん。
その夢は、今も変わってないよ。
だから私は卒業後の進路を理系で考えている。
「それだって、人の命との戦いだろ? すげーなって、ラスティと話してたんだぜ?」
人の、命。
「だから俺たちも、人の命を守れることがしたいなって、決めたんだ。プラントって、デカイ命をさ。」
間違ってるよ、ディアッカ。
ザフトの行為は、人を殺して守ってる。
でも、プラントに住む以上、それは禁句で。
戦争をしているのだから、仕方ない。
そんな言葉で、片付けられていて。
「俺たち、今日の夜にアプリリウスへ発つよ。」
ディアッカの声に、引き戻された現実。
私に、本当の気持ちを言う勇気はなかった。
「何よ! 決めたんなら、とっとと行きなさいよ!」
いや。
行かないで。
「エラそうなこと言って、初陣で撃墜されたら笑ってやるから!」
お願い。
行かないで。
「赤の軍服以外着てたら、鼻で笑ってあげる!」
うそだって言って。
全部。
そんな姿、見たくない。
「OK。わかったよ。」
潮風に抱かれながら、私はディアッカにも抱かれていた。
「死んだって、泣いてあげないから。」
だから、行かないで。
「OK、。」
抱かれたまま、ポンポンっと背中をたたかれる。
何を言っても、行っちゃうんだね・・・・ディアッカ。
家についた頃には、すでに夕日の時間になっていた。
「送ってくれて、ありがとう。」
いつものように、お礼を言った。
特別な言葉を言ってしまうと、永遠の別れになりそうで、怖かった。
エンジンをかけようとした手を止めて、ディアッカが言った。
「好きだぜ、。」
そして振り向きもせずにバイクに乗って走り去る。
まってよ。
返事も聞かずに行っちゃうの?
何でよ。
私の気持ちなんて、わかってるとでも言うの?
あんたなんか、帰ってこなくていい。
私は絶対、待っててなんてあげないんだから。
もう見えなくなった背中に向かって、私は想いをささやいた。
「ディアッカ。・・・・・・すき。」
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【あとがき】
どうしてディアッカ相手の夢は、普通に書けないんでしょうか?
両思い、なのに別離。
それ以上に、ラスティ。・・・・ごめん・・・・。