〔 魂の記憶 〕





深く、深く刻まれた、魂の記憶は消えない。
運命という言葉を、私は、生まれる前から知っていた。


物心ついたときから、忘れられない記憶がある。
でもその記憶は、今の私、のものじゃない。


完全平和主義を唱えたラクス・クラインの死後50年が経って、世界は今なお平和を維持している。
なのにこの記憶は、戦争を知っていた。

記憶の中のは、愛しい人を戦争で亡くしていた。



「帰ってくるまで、待ってろよ?」
はにかむ笑顔に別れのキス。
還らなかった、愛しい人。



「・・・ミゲル。」
18歳になって、私は現実に確かめた。

プラントの国会図書館のサーバーで、旧ザフトの軍籍リストから、自分の記憶にある名前を。

ミゲル・アイマン。
C.E71。
L3・ヘリオポリスにて戦死。

画面に映しだされた鮮明な写真が、記憶の中の彼と一致した。
「あなたが、私を遺して死んだのね?」
泣いているのは、どっちの


そのままの足で、戦没者のお墓へ向かった。
彼の身体はそこにいなくても、彼の遺品は埋められているはず・・・。
何か、感じることができるかもしれない。

きっと私は、その場所を知っている。


同じ形のお墓がいくつも同じように列を成しているのに、私の足は迷わず“そこ”に辿り着いた。

「会いに来たよ、ミゲル。」

私は貴方が死んでから、がどう生きたか、を知らないの。
記憶はね、貴方が生きていた日までしか、残ってない。
まるで私も、その日で終わってしまったみたい。


静かに黙祷したとき、後ろに人が立つ気配がした。
振り向いた私の目に飛びこんできたのは、夕日に染まる金髪の・・・・

「ただいま、。」
「ミゲル・・・?」
「な? 帰ってきただろ?」
はにかむ笑顔に出逢いのキス。


おかえりなさい。
魂に刻まれた、愛しい人。


                             

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 【 あとがき 】
   同じ容姿?という疑問はありますが、それはそれで・・・。
   前世のちゃんは、自殺したわけじゃないです。
   ただ、ミゲルを失って、その後は失意の人生だったのでは、と。
   完全平和主義は、ピースクラフト(ガンダムW)でしたっけね・・・。