「誰ですかぁ? 落葉樹なんて植えてくれちゃったのは。」
ボヤくラスティに、すかさずイザークのゲキが飛ぶ。
「文句を言うなら手を動かせ!」










〔 落ち葉とサツマイモ 〕










月当番で回ってくる、アカデミーの外掃除。
地球の四季観を大切にするため、という理由で植えられている落葉樹。
夏から秋へ、秋から冬へと季節は調整され、それらは一斉に葉を落とす。

「だからってさぁ、よりにもよって俺らが大当たり?」
ディアッカがのろのろと箒を動かしながら、落ち葉を一ヶ所に集めていく。
「昨日、いっせいに落ちたもんねぇ。雨の日で。」
がなぜか嬉しそうに答えた。

は楽しそうだな。」
アスランが声をかけると、ニコルが言葉を付け足す。
「感性の問題ですよね? 秋晴れの日に外掃除は気持ちがいいですから。」
ニコルの言葉に、はうなずく。
「雨の日のあとにこんな晴れの日がくるなんて、天気が調整されるのも悪くないよね。」

「だーから? 掃除も楽しいっつーのかよ。」
文句を言いながらも手が動いている当たり、さすがはディアッカ。
イザークは会話に加わることもなく、黙々と掃除をしている。
家柄のよいお坊ちゃまたちのこの姿、なかなか拝めるものではない。

「そういえば、ラスティはどうしたんですか? 姿が見えませんね。」
「さっきむこうへ走っていくのを見たが・・・。」
「なにィ?!」
アスランの言葉に、イザークが噛みつく。
「アスラン! 貴様見ていながら見逃したのか?!」
「・・・逃げたな、あいつ。」

四人がそれぞれに思いをめぐらせる中、掃き掃除をひとり続けていたが、ラスティを見つけた。
「ラスティ、みーっけ。」
どこまでも楽しそうなの声に、全員が反応してそちらを見る。

「へっへ〜。ただ落ち葉掃除だけで終わるわけないっしょ?」
戻ってきたラスティの腕には、なぜかサツマイモが抱きしめられていた。

「なんだ? これ。」
ディアッカがひとつ、ものめずらしそうにつまみあげる。
「サツマイモ?」
がディアッカからそれを受け取りながらラスティに聞く。
「当たり〜。前にTVで見たんだよねぇ。落ち葉燃やして、これを一緒に焼いて、食べるの。」

「まったく。どこで手に入れたんだ?」
さすがにイザークも掃除の手を止めて、の手からサツマイモを取る。
「そりゃー、色仕掛け? 食堂のオバチャンたち、僕のファンだし。」
要領のいいラスティのこと、上手く言いくるめて手に入れたのだろう。


高く積み上げられた落ち葉の中に、新聞紙に包まれたサツマイモが忍ばされる。
一通りの作業を終えると、はあることに思い当たった。
「ねぇ、火ってつけちゃっていいの?」

なんといってもここはアカデミー。
軍人養成所とはいっても、学校であることに変わりはない。
寮内においても、タバコ、酒、は禁止行為だ。

の言葉に、ディアッカがパパパっと自分の服のポケットを確かめた。
「あちゃー・・。俺、禁煙中だから火がねぇよ。」
が言っているのはそれ以前の問題なのだが・・・。

心配になってきたに、ニコルがニコニコと言葉をかける。
「大丈夫ですよ、。僕たちを誰だと思っているんです?」
滅多なことでは口にしないが、彼らはナナヒカリ族。
実力もあり、ただの七光りに落ちついていないところが、目下、教官たちの悩みを大きくしていることは秘密である。

「なにかあっても、責任は父上がとってくれるさ。」
アスランが笑顔で補足した。

アスランの父親は国防委員長のパトリック・ザラ。
つまり、このアカデミーの最高責任者である。
一部ではかなりの親バカだと言われているため、こんな息子の行為は他愛のないものだろう。
教官たちにしてみれば、胃に穴が開きそうな存在だ。

「えー・・と。・・・あ! 僕も火がない。」
ディアッカと同じくポケットを探っていたラスティが、がっくりとうなだれた。
どうやらラスティも禁煙続行中だったようだ。

「まったくお前は、つめが甘いぞ! これが作戦中だったら・・・・。」
「サツマイモと戦争を一緒にしないでください。」
お得意の説教モードに入りかけたイザークを、ニコルの冷ややかな目線が止めた。
はみんなのやりとりを面白そうに見ていた。


「火なら問題ない。―――このハロ・レッズがあれば充分だ!」
未来の道具を取り出すときのような効果音をつけながら、アスランが赤いハロを出した。
どこに隠し持っていたのかは、謎である。

「なんでレッズ? 赤ならレッドじゃないの?」
「某サッカーチームをイメージしてみたんだ。」
純粋に疑問をぶつけたに、なぜか照れながら答えるアスラン。
どうやらハロのことはすべて誉め言葉に聞こえるらしい。

「早く焼こうぜ〜。ハラ減ってきた。」
「ディアッカ、火をつけてすぐ食べられるものじゃないよ?」
待ちきれない様子で、サツマイモを枯れ枝でつつきだすディアッカ。
枯れ枝を没収して、がラスティに渡した。
企画者のラスティもワクワクする気持ちで枝を握りしめた。

「じゃあアスラン、点けてください。」
「イモはひとり一本、大きさに文句はなしだぞ。」
なんだかんだとイザークも乗り気だ。

「よし。いくぞ、ハロ・レッズ!優勝記念、火炎放射〜〜〜っっ!!

アスランの言葉と同時に、ハロの口から火柱が吹き出した。
それはモビルアーマー並みの火力で、落ち葉は一瞬で灰になった。
もちろん、その中に隠されたサツマイモも道連れにして・・・・。

「「「「「 ア〜ス〜ラあぁぁぁンっっ!! 」」」」」

「・・・・・。すまない。」



その後、アスラン自慢のレッズちゃんは、仲間たちにより没収された。
そのレッズちゃんがラスティによりオークションに出され、ギルバート・ギュランダルが落札。
少しの改良が加えられた後に、ニセモノのマスコットにされた事実を、アスランは知らない。





【あとがき】
 今さらな気がしつつ、五千hitお礼夢です。
 みんなでわいわいしたかったので、アカデミーの日常でギャグになりました。
 五千hitのときに秋だったので、お話も秋にしてみましたが、現実にはもう師走。
 あと二週間で年越しです。トホホ・・・。
 お礼の意味をたっぷりこめて、フリー夢になっています。
 気に入ってくだされば、遠慮なくお持ち帰りください。報告不要です。
 フリー配布期間も特に設けませんので、ご自由にドウゾ!
 
 五千hit、本当にありがとうございました。
 これからもお付き合いいただけるように、がんばります♪
 (2006.12.20)