〔 不機嫌な王子サマ 〕
「暑いねー。」
目をおとしていた資料から顔をあげてが言った。
目を向けた窓の外では、運動部が声を張りあげている。
真夏の太陽の下で、暑さなんて感じさせない集中ぶりは実にスポーツマン。
反面、クーラーのある職員室だというのにこの身体のダルさはなんだろう。
認めたくないけれど、年の差?
頭に浮かんできた言葉をは慌ててかき消す。
まだ嫁入り前の20代前半。
負けてたまるか。
「生徒を見ているのもいいが、自分の仕事はできたのか?。」
ふと視界がさえぎられると、の目の前にはイザークが。
シルバーの縁をしたメガネが、髪の色とよく似合っている
「イザークは涼しそう。ね、先月からクールビズなのよ?ネクタイ着用免除なのに、相変わらずね。」
「外すほうが落ち着かない。悪いか?」
の机に右手をついて、の顔をのぞきながらイザークが言った。
不機嫌そうに顔がしかめられている。
「悪いとは言ってません。すぐマイナスにとらえるのやめてくれるかしら?」
「それならもいいかげんに仕事を片づけてくれ。」
暑さなんて微塵も感じさせないクールな顔で、イザークがに言った。
「見ていれば運動部ばかりに目がいっているようだが?」
不機嫌なイザークの顔が、ますます不機嫌になった。
は笑ってしまいそうになる口元を隠すのが大変だった。
イザークはやきもちを妬いている。
あの、クールで夏の暑さもものともしないイザークが、気持ちの中でふつふつと熱くやきもちを妬いている。
のために。
「妬いてるの?」
そのままストレートに聞いたところで、答えが返ってくるはずないことはもよくわかっている。
「学生相手がいいなら乗り換えろ。教え子とじゃ騒ぎになるのを覚悟するんだな。」
案の定、まったく違う答えがイザークからに返された。
は資料を閉じた。
「外を見た時点で仕事は終わっていたのよ。だから顔をあげたの。でも、おかげでイザークのめずらしい一面を見られたわ。」
そう言ってがにっこりほほ笑むと、イザークが少し驚いた。
そして「しまった」とでも言いたげに、そっぽを向いてしまった。
「さすがにイザークでもこの暑さにはやられるわよね。さ、教え子たちに見つからないうちに行きましょうか?」
教師同士の恋愛も、騒がれないわけがないのだから。
END
【あとがき】
イザーク誕生日おめでとう!!
今年もまたお祝いできたことをよろこびつつ。
イザークへの愛は変わりません♪