〔 きみのやさしさ 〕
ディアッカとアスランは、MIAに認定された。
艦はジブラルタルへむかう。
「・・・・・・くそっ・・・・・。」
イザークは一度壁に殴りかかったあと、腹立たしげに拳を見つめた。
艦長に欠点を指摘されたばかりだ。
『“赤”なら、状況判断も冷静にできるはずだがね。』と。
アカデミーを卒業して、戦場に出て。
ラスティを失った。
ニコルを失った。
そして今日、ディアッカとアスランを失った。
バスターとの通信が途切れて、大きな爆発音と共にイージスとの通信も途絶えた。
けど、ニコルのときのように、その惨劇を目にしたわけじゃない。
だから、生きているのかもしれない。
ディアッカも、アスランも。
それでも帰投を命じられている私たち軍人は、そこへ戻ることを許されない。
捜索には、別動隊が任にあたっている。
イザークがせわしなく部屋の中を徘徊しだした。
彼もまた、ここを飛び出して行きたい気持ちを抑えている。
あの二人が生きていると、信じている。
でも、戻れない私たちは、ただここで心を抑えることしかできない。
「イザーク、座ってよ。」
先ほどから目の前をいったりきたり。
これじゃあ私の心もおさまらない。
「イザーク、すわって!」
少し声を強めたら、イザークが獲物を見つけたかのように、食ってかかってきた。
「すわれ、だあ? こんな状況で、落ちついて座ってなどいられるか!」
「こっちまでイライラしてくるんだよ、イザークのせいで。」
「なんだとお・・・っ! 、ずいぶんと冷めた物言いだな!」
こうしてイザークと衝突するのは久しぶり。
最近はもっぱらアスランとばかりやりあっていたイザークだから。
その彼も、いない。
「俺の機体は動ける! なのにあいつらを助けに行けない! どう落ちつけと言うんだ、貴様は!!」
「――― 信じて。」
私の言葉に、はっとして身を固めるイザーク。
私はイザークをまっすぐ見て言った。
「アスランとディアッカを信じて待とう? あの二人が死ぬと思う?」
「・・・・だがっ」
「今だけじゃない。もしこの先、私がMIAに認定されても、絶対に探さないで。」
「は?」
突然の話題転換に、イザークは動揺を隠さない。
「・・・・・は、俺がそんなに冷たい男だと思うのか?」
いつものように眉間にシワをよせて、イザークが言う。
「思わないよ。だから言うの。」
イザークの顔はますます困惑する。
「どんなことになっても、私は必ず戻るから。」
還らない仲間。
二人きりになってしまった私たち。
だから約束する。
私は戻る。
直立不動のイザークに、私は抱きつく。
「イザークがここにいるなら、私は戻ってくるから。」
「。」
「同じだよ、アスランもディアッカも。必ず戻ってくるよ。」
だから、信じて待っていよう。
「・・・・・・・が、・・・・そうまで言うのなら。」
抱きしめ返してくれるイザークの心音が、優しく心に響いた。
探さないで。
たとえ私がいなくなっても。
私は必ず還るから。
大好きな、イザークのところに。
だから。
信じて待っててね。
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【あとがき】
誕生日おめでとう!イザーク。
仲間を思うイザークの優しさが大好き♪なので、こんな夢に。
誕生日らしからぬ作品ですけど・・・。