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どうして林業をはじめたの?


林業をはじめた理由を。

そもそも林業って何なの?

 林業:土地に材木を仕立てて培養し、これを経済的に利用することを目的とする生産業(広辞苑より)

 日本の国土面積のうち、森林の割合ってどの位あるかご存知ですか?…実は、約7割が森林なんです。その森林の資源を利用する産業が林業です。具体的な内容としては、建築材・家具材・薬剤の原料などとしての樹木を切り出たり、キノコ・山菜を栽培する…といったものです。

 …これだけだと他の産業と大して差が無い様に思われるのですが、林業には産業としての一面ともう一つ重要なこととして、森林を保全していくことによる災害防止・国土保全・自然環境保護という公共性も含まれます。森林は土砂崩れ・風害を防ぎ、水源を確保し、光合成による大気浄化を賄い、生態系を維持し、そして何より人間の心を安らげます。


林業の現状

 日本の林業は高度成長期をピークに斜陽産業となっています。それまでは家庭内でも家事全般・暖房に薪は欠かせませんでしたし、戦時激しい空襲によって焼け野原になった町を再建するのに多くの材木を必要としていました。それが家庭では電気・ガスに取って代わり、町は木造建築から鉄筋コンクリートのビルが立ち並ぶようになりました。更に日本の険しい山々から高い人件費を掛けて切り出した国内材よりも、重機の入りやすい海外の土地から大量に伐採されフェリーで大量に輸入される外国材のほうが価格的に市場を占めてしまいました。最近は木材需要自体が落ち込んできていますし、建築・工芸でも木材を上手に扱える熟練工が減ってきています。

 日本は少子高齢化が進んでいますが、それは産業全体に影響を及ぼしています。2007年問題と呼ばれる団塊の世代の大量退職による就業人口の減少…当然林業にもその影響は現れます。特に林業は若者の就業割合がかなり低く従事している方の多くは50代〜60代。ウチの組合だけの話をすれば、臨時雇用という体系ではありますが70代の方も働いています。

 最近は環境問題が注目されるようになり、若干ではありますが若者の就業率が上がっているようです。ただ、日本社会の現状としては政府の財政難に伴う公共事業費の削減が進んでおり…林業の造林事業の多くが林野庁等の補助金を当てにしているという事実があります。なので国からの援助はこれからも減り続ける…つまり自前で採算が取れるよう業界全体を少しでも改善していかない限り、絶対に必要不可欠な事業であるにも関わらず、気がついた頃には既に廃れ果てて手遅れになってしまう危険性を孕んでいます。



誰かがやらなければ

 最近では森林ボランティア等民間による間伐作業など、山林の環境を護っていこうという取り組みも市民レベルに浸透しつつあります。私も就業する前に間伐ボランティアに参加した事があります。

 でも、私の所感としては…『ボランティアだけではとても手が足りない』のです。ボランティアは所詮プロじゃありません。本業でも無い方がいきなり足場の悪い急斜面や風倒木の処理なんて危険すぎて出来ません。初心者集団のボランティアがお手伝いしていただけるような現場は比較的平坦でそれも人がなかなか入らないような奥地は無理…って事を考えると全体の1割にも満たないでしょう。しかも作業が高度になればなるほど(刈払機・チェンソーの使用や高所の枝打ちなどなど)ボランティアだけでの作業は危険ですので結局プロの指導・監督が必要になってしまいます。

 結局、本気で日本の山林を護っていこうと考えれば考えるほど『自分が作業員のプロとしてやっていくのが最善の方法』というのが私の出した結論でした。


数少ない田舎の仕事のうち、私が出来そうな唯一の仕事

 もう一つの理由としては、田舎になればなるほど職が無いのです。固定的にあるのは役場・銀行・観光施設…こんな感じですかね。しかしまず都市部と比較して圧倒的に人口が少ない訳ですからこういった仕事に皆就けるかというとそんな事はありません。しかもそれしか定職が無いとなると、当然新陳代謝が進む訳も無いので常に仕事は不足してしまいます。

 そうなると個人事業…要するに第一次産業が主ですが農業・漁業・畜産・医療・個人商店…こんな感じですかね。でもこれらの仕事については結構初期投資額がかなり必要だったり、採算が取れるようになるまでかなりの時間を要したりというリスクがあります。折角田舎暮らしを始めたと思いきや資金が尽きてそこでの生活を断念せざるを得ない状況になる…結構聞く話です。

 ちょっと都市部に行けば、それなりに仕事はあります。でも、それは田舎暮らしじゃなくて出稼ぎにしかならないし…町内にも町内で暮らしているのだけど定職は隣の大きな都市の企業という方が何人も居ます。これがなかなか曲者で、地元との接点があまり無くなると途端に地域活動に興味が無くなる方が多いみたいなのです。町内のイベント(祭り・運動会・葬儀等)にも殆ど顔を出さなくなり、遊びと言えば都市まで行ってパチンコ三昧…こうなると田舎暮らしとはとても言えませんしそもそも私もそんな生活は望んでいません。

 そう考えると、林業って不人気産業で常に働く人を探している状況だったりします、、、何しろ典型的3K(キツイ・キタナイ・キケン)。しかもその割に稼げないとなるとなかなか成り手が居ない…というのが実情です。
 でも私は山仕事がしたいのでそういう事は予め織り込み済みだし、どちらかというと頭を使う仕事より肉体労働の方が性に合っています。成り手が居ないって事は人柄が認められれば多少の事には目を瞑っても雇ってくれるかもしれない…って考えました。

 そして運良く美郷町に拾っていただき、現在に至るという次第です。




林業作業員の仕事って?

林業の四方山(よもやま)話

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