2023.03.18
昼からエリザベト音大でのコンサートを聴きに行ってきた。

・・・コンサートはエリザベト音大75周年記念スプリングフェスティバルの一環で、フルートの万代恵子とピアノの垣内敦のデュオである。一応プログラムを書いておく。1.タファネル 『「ミニョン」の主題によるグランド・ファンタジー』、2.ゴーベール 『ファンタジー』、3.ライネッケ(編曲がケーラー) 『「ゆりかごから墓場まで」より Op.202』、4.フリューリンク 『ファンタジー Op.55』、5.シューベルト 『「しぼめる花」による序章と変奏曲 Op.160(D.802)』、アンコールは、シューベルト 『アヴェ・マリア』と滝廉太郎 『花』

・・・今回の選曲は、前半が、ベーム式フルートが登場して、性能が飛躍的に向上した結果として技巧的な曲が書かれた頃に焦点を当てている。

・・タファネルとゴーベールは基本練習の本を書いていて今でもほぼ全てのフルーティストに使われている位である。

・・ライネッケの曲は万代氏が「歌曲のような曲」を探して見つけたもので、この曲辺りから演奏が本調子になってきた感じがした。大きな旋律の動きが波打つように繋がっていって、どこに連れていかれるのだろう、という感じがした。フォルテとピアノ、クレッシェンド、デクレッシェンドが見事で、とても勉強になった。

・・後半はウィーンの作曲家であるが、フリューリンクは知らなかった。最近発見された曲らしい。

・・最後のシューベルトの曲は有名なものである。「しぼめる花」という歌曲の詞は失恋した青年が自殺する直前に娘に貰った既にしぼんだ花に語りかけ、一緒に墓に入ってほしいというものである。演奏を聴いていて確かにそんな感じがした。パンフレットの絵はそれに因んで万代氏が探し出した 17世紀オランダの絵で、バラの花は美しくも儚い運命、蝶は人間の魂、カタツムリは死を暗示するものらしい。当時は戦争やペストがあった。これは現代にも通じる。「人間は変化にとても敏感で受容したり、あるいは受け入れざるを得なくて柔軟に対応する、やり過ごすことでまた良い変化に結びつき、引き継ぐ者が居る、そんなことを繰り返して一人一人の人生が積み上がり振り返ると足跡として歴史となっていく。」と万代氏が書いている。なるほどと思った。

・・口元をずっと見ていたのだが、やはり低音ではやや顎を引くようである。ただ、これはフォルテの時で、ピアノの時は引かない。音色もフォルテとピアノで変わる。音色と音量を自在にコントロールする力量は確かに大したものである。

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