2023.05.19
・・・流川教会は3回目か、4回目だろうか?ちょっと不便な処にある。上幟町公園でサンドウィッチを食べてからちょっと北に歩く。今日は『ザ・リアル古楽 in 広島』というコンサートがあって、「オール・バッハ・プログラム」ということなので、行くしかないと思ってチケットを買ったのである。柴田俊幸というフラウト・トラベルソ奏者をメインとして、他は広島在住の人達であった。最初の挨拶によると、「全国や世界規模で活躍している演奏家も良いけれども、地方で活動している優秀な演奏家が居ることを知ってほしい」というのが趣旨だそうである。チェンバロの佐々木悠氏が2曲のバッハのフルートソナタ(変ホ長調BWV1031とイ長調BWV1032)を一緒にやったのだが、この二人がやろうと言い出して、他の3人を引きずり込んだということである。岡山でもやったようで、そもそも使われたチェンバロが岡山で制作されたもので、その製作者が自ら最初の調律をやっていた。このチェンバロというのが素晴らしい音だった。トラベルソやテノールやソプラノとの音色の融合が何とも美しい。

・・・主役の柴田俊幸さんは流石にフラウト・トラベルソの特性を存分に生かした素晴らしい演奏を聴かせてくれた。フルートだとチェンバロが目立たなくなるのだが、トラベルソだと音量のバランスがちょうどよい。バッハのソナタは、細かいリズムの変化の面白さと、長い持続音の移り行く表情が魅力的であった。真面目な顔立ちとは対照的に、お茶目なボケが面白い。

・・・チェンバロの福原之識(しおり)さんは、後半最初にゴールドベルグ変奏曲の説明をして、有名な最初の「アリア」だけを演奏したのだが、なかなかのものだった。昔、箏と合奏したことがあって、その人から聞いたのだが、箏の演奏(三味線もそうらしい)はバリバリと正確に弾くことは「はしたない」とされていて、少しだけ稚拙な感じを残すのが良いらしい。聴いている人がちょっと手を添えたくなるように。チェンバロだと、それはリズムの揺らぎ、ちょっとした遅れや走りなんだろうと思う。それを極めて意識的に組織的に取り込んでいて、旋律の美しさを際立たせている。佐々木悠氏も平均律クラヴィーア曲集の最初のハ長調を演奏した。こちらは整然とした演奏。

・・・前半には3曲の宗教曲(シェメッリ歌曲集よりBWV452,505、BWV515)と1曲の世俗曲(コーヒーカンタータBWV211より「ああ、コーヒーって、、」)があって、後半にはミサ曲ロ短調 BWV232 から「Domine Deus」とアンコールでの「Bist du bei mir BWV508」があり、テノールの田尻健氏とソプラノの中川詩歩さんが歌った。なかなか感動的であった。パイプやコーヒーカップを使って、ちょっとしたオペラの演出のようにして楽しませてくれた。歌というのはまあ大体がそうなのだが、装置で聴くのと生で聴くのとはまるで違う。

・・・観客は100人弱位で、皆さん満足していたと思う。これからも継続したいということで、宣伝の為に最後は撮影が許された。僕は撮っていないが、ビデオを撮っている人も居たので、その内 SNS 等で拡散されるだろう。

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