2018.04.23
    大分前、ラジオで聞いて良いなあと思って注文したCD『アルフォンシーヌと海』(波多野睦美とつのだたかし)がやっと届いた。イギリスで古楽を勉強してきた人。日本ではこの分野の第一人者である。伸びの良い美しい歌声で、いろいろな言語で歌うにも関わらず表現力が素晴らしい。一つ一つの単語を慈しむように歌う。

    表題曲は自殺したアルゼンチンの女性詩人を歌ったものだった。

アルフォンシーナ あなたは行く 孤独とともに
どんな新しい詩を探しに行った?
風と潮のなつかしい声が
あなたの魂を誘い 連れ去ろうとしている
あなたは行ってしまう 夢見るように
アルフォンシーヌは眠る 海をまとって

他、ピアソラやヴィラ=ロボス、ラベルやプーランクの小品も出てくる。知っていた曲は『オブリヴィオン』『愛の小径』。最後は武満徹の2曲。一番最後の『三月のうた』がいつまでも心に残る。谷川俊太郎の詩。

わたしは花を捨てていく ものみな芽吹く三月に
わたしは道を捨てていく 子等のかけだす三月に
わたしは愛だけを抱いていく よろこびとおそれとおまえ おまえの笑う三月に

そういえば中島みゆきのちょっと怖い歌に『船を出すのなら九月』とか『十二月』があった。この谷川俊太郎の詩に触発されたものかもしれない。
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