▼March 21

Peter Case (Texas Union Ballroom)

 一時伸ばしていた髭をそり髪も切り、何だか若返ったピーター・ケイス。新作の曲を中心に、過去の作品やカヴァーなどをバランスよく並べ、飽きの来ない構成を工夫していた。気になるカヴァーはジョン・プラインの"Space Monkey"。後で調べたら97年に出たばかりの"Live on Tour"でしか聞けない曲だが、ピーターが観客に合唱をうながし、客もしっかりそれに応えていたところからすると、かなり向こうでは知られた曲のようだ(もしかして何かのテーマ曲?)。


Kris McKay (Fat Tuesday)

 1曲目を聞いて、これは別人じゃないのかと思わず疑ってしまった。というのも前作にあったいい意味での素朴さがかけらもなく、悪い意味でのメジャー性を持った没個性的な曲だったからだ。一度確かめようと外に出たがこの場所に間違いはない。戻ろうとしたところ、満員の会場では前列はもはや確保できず、写真が撮れませんでした。その後ステージは次第にいい方向に流れていったが、それにしても違和感が拭いきれない。この傾向で次作が作られるとしたら、ちょっと不満である。

Trish Murphy (Fat Tuesday)

 6番街のど真ん中と言うこともあって、ただでさえ人の多い会場が、地元で人気のアーティストが登場するものだから(詳しくはレビュー欄を見てね)、始まる前から熱気は十分だ。アルバムでは割とオーソドックスなスタイルで統一していたが、ライブではもっとカントリーっぽいアレンジで、かなりワイルドな演奏を意図的に採用していたようだ。片足を上げてギターを弾きまくる彼女の姿に、カーレン・カーターやマリア・マッキーの後継者としての資質を見た、というのは大げさかも知れないが、本当だ。


Amy Rigby (Fat Tuesday)

 ドラムはスミザリーンズのデニス・ダィケンが担当。Last Laundap, Shammsと続いた彼女の長い活動歴を物語る、熟練のステージだった。内容だけでなく、顔の方にもしっかりとその年輪は刻まれており、アルバムの内ジャケットがいかに修正してあったかを初めて知って、少しショックでした(笑)。


Jon Dee Graham (Scholz Beer Garden)

 アルバムは静かな印象だったが、これまたライブではど迫力の演奏を見せつけてくれた。とにかく声が下手なギターの5倍くらい重みがあるから、歌い出すとそれだけで周りが引きずり込まれてしまうのだ。途中SXSWについて「ここは人と人が出会い、お金の話をするところ」と痛烈な皮肉をとばした後、すかさず"$100 Bill"につなげる展開はさすが。どうやらかなり毒舌家のようで、ますます気に入ってしまった。"Soonday"が聞けなかったのは残念だが、締めくくりはアルバムの最後を飾る"Airplane"を長めに演奏して大いに盛り上がっていた。


Vic Chesnut (Electric Lounge)

 とにかく、一体この人がどうやってライブをするのか。不謹慎とのそしりは免れないが、やはり興味はどうしてもそこへ集中してしまう。結論から言うと、途中少しギターを弾いたものの、基本的にはほとんどCDプレイヤーのような機械(写真右端)で演奏を流し、それに合わせて歌うというパターンだった。なるほど、これなら一人でも十分ライブが可能である。演奏しない分、パフォーマンスはかなり過激で、白目を向いたままマイクを股間に挟んでシコシコしたり(下品ですみません。でも本当にやってたんだからしょうがない)、両手を宙に突き出して天を仰いだり、一挙手一投足にいやでも注目が集まる。人とは違う雰囲気を漂わせた、天性のパフォーマーという感じがした。もっと言えば奇人の部類に属するのだろうが、天才とは元来そういうものだ。


photo (C)Mutsuo Watanabe

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