▼March 21, Blue Rose Showcase (Saxon Pub)

Todd Thibaud

 この日の午後は、街の中心部からずっと南へはずれたSaxon PubでBlue Roseのショウケースがあることを知り、少し遠いがMさんと一緒に行くことにした。結果は行ってみて大正解。何よりまず会場となったSaxon Pubは比較的新しい建物で中はきれいだし、空間にはゆとりがあり、音もいい。Hole in the Wallが3倍くらい大きくなって新装開店した感じといっても、誰にもわからないか(ごめんなさい、他にいい喩えを思いつきません)。内容次第では早めに出ようかと思っていたが、1時から6時過ぎまで結局どっしりと腰を落ち着けてしまった。一番手はケヴィン・セイラムのプロデュースでソロ・デビュー作をリリースしているトッド・シバード。元々は92年と94年にアルバムを2枚出しているCourage Brothersのフロントマンだった人だが、96年に自主製作で出したソロがブルー・ローズの目に止まり、97年に再発となった。"Destiny"から始まった、さわやかでスケールの大きな演奏はアルバムそのままだ。今年になって米盤も出たので、未聴の方は是非探してみて欲しい。


Russ Tolman

 続いてうれしいことにラス・トールマンの登場。オースティン・クロニクルの告知には彼の名前は載っていなかったので、急遽出演が決まったようだ。サポート付きではあるものの、基本的にギター1本での弾き語りで、少し物足りなさは残ったが、味わい深い歌の数々を披露してくれた。演奏後、e-mailでインタビューした者だと自己紹介すると、新しい号はいつ出るの? と聞かれてちょっと困ったのだった。8号の表紙にはこのとき撮った写真(下)が使われています。他にはマーク・ウォルトンと再会を抱き合って喜んでいたのが印象的だった。


Shakin' Apostles

 地元オースティンのご機嫌なルーツ・ロック・バンド。バンドの息もぴったりで、たるみのない引き締まった演奏にはひたすら感心。新作が出たばかりだが、僕の一番好きな1枚目の曲も結構やってくれて、うれしかった。


Paty Spiglanin

 たぶん今頃リリースされているカリフォルニアのNaked Barbies(アルバムが既に2枚あるようだが、未聴)というバンドの女性ヴォーカリストが、一人で登場。落ち着きのある歌を弾き語りでじっくり聞かせてくれた。ちょっと単調で物足りなかったが、バンドではまた違う魅力があるのだろう。


Continental Drifters

 今日のハイライトは疑いなくこのコンチネンタル・ドリフターズだろう。しかし、よく見るとCarlo Nuccioがいない。後から調べたらいつの間にか脱退していて、この日の若いドラマーは助っ人ではなくて新メンバーだったのだ。それ以外のラインナップは変わりなくPeter Holsapple, Vickie Peterson, Susan Cowsill, Mark Walton, Robert Mache(写真左から右、ただしRobertは切れて写っていません)という強力な布陣。待望の新作を5月に控えて、エネルギーに満ちあふれたライブを見せてくれた。新曲がメインだったこともうれしかったが、何よりもバンドの充実ぶりが一番の驚きであり、5月発売の新作にいやが上にも期待は高まるのだった。クライマックスはイアン・マシューズを迎えての"Meet on the Ledge"(シングルB面でも披露されていたフェアポート・コンヴェンションのカヴァー)。恥ずかしながらMさんに教えられるまで、僕はこの人がイアンだというのをわかっていなかった。ごめん、イアン(笑)。


Iain Matthews

 しかし、次に登場したイアンはどういうわけかとても疲れているようだった。途中何度かイントロを失敗し、2,3回繰り返したあげく、ついに放棄して次の曲に行ったりして、どう贔屓目に見ても生彩を欠いていた。まあ、今日の出演者の中では一番の大物であることは間違いなく、姿を拝めただけでもよしとしなければならないだろう。


Jimmy LaFave

 直前のもやもやを吹き飛ばすかのような、貫禄のステージを見せてくれたのはジミー・ラ・フェイブ。アルバム通りの痛快としか言い様のない堂々とした演奏は、まさしくギターを持ったバッファロー。曲の見せ方をよく心得た人だなという印象だった。


Rainravens

 トリを飾ったのはオースティンの若手ネオ・ルーツ・バンド、レインレイヴンズだ。場所柄もあるのだろうが、例えばReckless Kellyのカウンター・パンチに対して、こちらはじわりじわりと効いてくるボディー・ブローのような渋さがあり、そこがまた、ファンにはたまらない。もっと聞きたかったが、時間になり幕。5時間以上に渡る、スペシャル・イベントは終わりを告げた。


photo (C)Mutsuo Watanabe

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