▼March 20

Michael Weston King (The Good Sons) (Waterloo)

 この日はまずレコード店でのインストア・ライブから。イギリスで今最も注目すべきネオ・ルーツ・バンド、グッド・サンズのフロントマンが弾き語りで登場だ。それにしても、ちょっとかわいそうだった。いくらアメリカでは知名度が低いとは言え、直前のブルーグラス・バンドが終わったらさーっと潮が引くようにお客さんがいなくなってしまい、がらがらの中で演奏するというハンデは厳しい。いささか緊張気味のキングだったが、伸びのある声と楽曲の魅力で何とか乗り切った。アメリカ・デビューとなる「Angels in the Wind」(傑作!)が店内にも派手にディスプレイしてあったのになあ。何だかアメリカ人の保守的な部分を垣間見た気がする。


Duane Jarvis (Waterloo)

 続いてはルシンダ・ウィリアムスのバックを始め多数のセッションに参加しているベテラン・ギタリストのバンド編成によるライブ。こちらはそこそこ客も増え、まあまあの盛り上がり。現在はナッシュビルで活動しており、その縁もあるのだろう。サイド・ギターはNYから同じくナッシュビルに移って活躍するティム・キャロル(写真右)だ。出たばかりのアルバム「Far from Perfect」からの曲が中心で、味のある演奏が楽しめた。


Jennifer Jackson (Mercury)

 続いて夜の部まで間があるので、Mさんと2人で6番街をぶらつく。すると偶然にも昨日ジュールズと共演していたJenniferが、通りがかった酒場で演奏しているではないか。もう始まってかなり経つのか、入ったらすぐに終わってしまったが、シンプルでムーディーな曲に人柄の良さがにじみ出ているような、なごめるひとときだった。こういうところがsxswの面白さだね。偶然に感謝。


Reckless Kelly (Liberty Lunch)

 いよいよ夜のハード・スケジュールの始まりである。まず最初は地元で注目の新人カントリー・ロック・バンド、レックレス・ケリー。会場も満員で、最初の"Walton Love"からもう盛り上がる、盛り上がる。バンドもそれに応える形で、最後までテンションが高い。フィドルやマンドリンが効果的に使われていたが、ウィスキータウンほどルーツ度は高くない。こうやって見るとやっぱり基本はロックンロールだね。若さゆえの未熟も多少はあるものの、ノリのよさでカヴァーしている感じ。これからに十分期待できそうだ。


Michael Fracasso (Cactus Cafe)

 密かにこの日一番期待していたのがこのマイケル・フラカッソ。チェロまで加えたバンド演奏というのがうれしかったし、まあ予想通りとは言え、生で聞くマイケルの声はやはり格別だった。アルバムと同じくチャーリー・セクストンがサポートし、全曲でドラムを演奏していた。


Chuck Prophet (Cactus Cafe)

 「Homemade Blood」で僕の一番好きな"Whole Lot More"で始まるオープニングからもうノック・アウトだ。しかも、アルバムとは全然アレンジが違う。ステファニー(写真左)のアコーディオンを大きくフィーチュアした、カントリー・ヴァージョンとも言うべきのどかな演奏に心が大きくなごむ。静かにチャックの弾き語りで演奏される"You Been Gone"などは寂寥感も一潮で、こうやって別の解釈が出来る曲っていうのは本物なんだよなあと思ったりする。アルバムのごつごつした感触も好きだったんだけど、こういう料理の仕方も悪くない。最後までリラックスしたムードで、楽しませてくれた。


Kelly Willis (Liberty Lunch)

 1曲だけ話題のJeb Loy Nicholsを見てから、急いで会場を移る。Jeb Loyファンには悪いが、Kelly Willisは一度見たいと思っていたのだ。ショービズ・カントリーの世界に嫌気がさして、メジャーから離れ、先日サン・ヴォルトのメンバーと組んだEPを出した、となればカントリー嫌いの人も少しは興味がわくでしょう。そういう人なんです。ぎりぎりで会場に着いてほっと一息。何とか間に合った、とメンバーを見てびっくり。おいおい、ギターがチャック・プロフィット!? さっきまでカクタス・カフェにいたじゃないの。って自分もそうか。大変なのは会場移動する客ばかりと思っていた自分を大きく反省しました。アーティストも掛け持ちの場合は大変なのね。道理でさっきは大慌てで機材を片づけていたわけだ。演奏も曲も取り立ててすごいというわけではないが、さっきのチャックのライブと同じく終始なごやかなムードで、何よりケリー自身が楽しそうに歌っていたのが印象的だった。


photo (C)Mutsuo Watanabe

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