うーん困った。ノット・レイムに頼んだものがまだ届かない。その中に今回取り上げる予定だったアルバムが入っていたのだ。しかたがないので今回はお茶を濁すことにする。何をするのかというと、ここ数ヶ月マイルズで購入したルーツ・ロックにコメントをつけるのである。アルバムの順序は適当なようでいて実は結構考えてあるので、何だ手抜きかと思わないよーに。

・Jay Bennett 『BIGGER THAN BLUE』(Undertow)

 ウィルコやジェイ・ファーラーの新作がそれぞれ好評の中、個人的に是非がんばってほしいと思っているのが、このジェイ・ベネット。前のアルバムはエドワード・バーチとの共作だったから、これが初ソロになるのかな? 全体的には落ち着いたナンバーが多いけれど、アーシーな八曲目、コステロっぽい二曲目がなかなかキャッチーで気に入った。そういえばヴォーカルもコステロに似てるよね。

・Michelle Anthony『STAND FALL REPEAT』(Burn & Shiver)

 そのジェイ・ベネットがプロデュースを担当した、ミルウォーキーの女性シンガー。ハスキーでけだるいヴォーカルは貫禄たっぷりで、バラードありロックンロールありと幅の広い作風もなかなか。八曲目の題名ではないが「アナログ・フィーリング」たっぷりなところがいい。

・Cary Hudson 『COOL BREEZE』(Black Dog)

 ウィルコ、サン・ヴォルトといえば次はブルー・マウンテン、という時代がかつてあったわけだが、その中心だったキャリー・ハドスンは地道にソロでアルバムを出し続けている。南部の深い森の中に迷い込んでいくようなルーツ風味とアーシーなドライヴ感覚は相変わらず。深みにはまりたい人は是非お試しあれ。

・Jayhawks『LIVE FROM THE WOMEN'S CLUB』(self release)

 ウィルコ、サン・ヴォルトといえば次はジェイホークスという時代がかつて……じゃなくて、もともとデビューは彼らの方が古いし、先輩格なんだよね。そのうえ今もちゃんと現役で活動しているのだから立派。これは02年のライブを収録した公式海賊盤。素晴らしかった昨年の新作収録のナンバーを聴くことができるし、ファン必携の一枚である。

・Dave Alvin 『ASHGROVE』(Yep Roc)

 本号にインタビューが載っているアンディ・ヴァン・ダイクもライブでカヴァーしていた名曲「4th of July」の作者がこの人。レーベル移籍第一弾は、特に新機軸はないけれど、安心して聴ける一枚に仕上がっている。それにしてもハイトーンの顔であるこの人が移籍とは意外な感じがした。まあ、それだけ今のYep Rocが充実しているということなのだろうけど。

・Amy Farris『ANYWAY』(Yep Roc)

 そのデイヴ・アルヴィンがプロデュースを担当した注目女性シンガー。オースティン出身で現在はLA在住。フィドラーとしての腕前を買われてアレハンドロ・エスコヴェードのツアーに参加したこともあるとか。キュートでアダルト、両方の魅力を持ったヴォーカルがまず印象的だ。アルヴィンのバックでお馴染みのベテランにも支えられた堅実な演奏に、自ら奏でるフィドルがいい感じで絡む。ビートルズとXに影響を受けたといいながらルーツにも根ざした自作曲(アルヴィンとの共作もあり)にブルース・ロビスンやXのカヴァーを加えていくセンスにも、思わずにやりとさせられる。オースティンとLAを結ぶ存在として、これからも注目していきたい。

・Gurf Morlix 『CUT 'N SHOOT』(Blue Corn)

 オースティンの名前が出たところで、ヴァン・ダイクのインタビューにも併せて、同地の注目作をまとめておきたい。まずは、レインレイヴンスのアルバムでもお馴染み、ガーフ・モリックスの新作から。従来にも増してカントリー風味が強く、リラックスしたムードが楽しめるのはよいが、ギターが控えめなのは少し残念かな。プロデュース業も忙しいようだけれど、今くらいのペースでアルバムを出し続けてほしい。

・Resentments 『THE RESENTMENTS』(Freedom)

 ヴァン・ダイクに好きなオースティンのミュージシャンを尋ねたとき真っ先に挙がったのはエリック・テイラー、そしてJ・D・グレアムの名前だった。これはそのJ・Dにスティーヴン・ブルトン、ジャド・ニューカム、ブルース・ヒューズらを加えたオースティンのスーパー・セッション・グループである。02年のデビュー・ライブ作に続いて結構本気のスタジオ録音作を出してきたのはうれしい。グレアムの歌うビッグ・スターのカヴァー(「Thirteen」)にも感激した。

・Michael Fracasso『A POCKETFUL OF RAIN』(Lone Star)

 もともとNYのフォーク・シーンで活動していたシンガー。オースティンに移ってから随分になる。デビュー作『LOVE & TRUST』(93年)以来ずっとファンなのだが、新作でも深みをたたえながらうねる魅力的な歌声と優しいメロディ・ラインは健在だった。それぞれの新作も素晴らしかったパティ・グリフィン、イライザ・ギルキソンなど、ゲスト・ヴォーカルも充実してます。

・Randy Weeks『SOLD OUT AT THE CINEMA』(self release)

 最後に西海岸勢を二人。ニール・カサールも今はLAで活動しており、このところ注目度は低いとはいっても、伝統がある街だけに、先のエイミー、あるいは次のヴィラロボスのように見逃せない新人もまだ出てきそうだ。それを支えているのがデイヴ・アルヴィンやランディ・ウィークスといった同地のベテランであるのは間違いない。元ロンサム・ストレンジャーズのメンバーによる二枚目のソロは、傑作だった前作同様しなやかで端正、ときに爽やかな、ときにブルージーな感触を楽しむことができる。

・Gina Villalobos『ROCK 'N' ROLL PONY』(Kick Music)

 最近の女性ロッカーでは個人的に一押し。これがセカンドらしいので、前作も探さないと。LAに拠点を置いているそうだが、イリノイでも追加録音されており、その両方と関係が深いようだ。ゆったりとしたテンポの中にこれぞアメリカン・ロックという広がりが感じられ、ちょっとしゃがれた声も魅力的である。人によってはあっさりしすぎだと思うかもしれないが、僕にはこれくらいの濃さがちょうどいい。驚いたのはカントリー・ロック風にアレンジした「Put The Message in the Box」(ワールド・パーティ)。前にVロイズがラーズをカヴァーしたときにも思ったけれど、英国ポップをルーツに持つアメリカン・ロッカーっていうのに僕は弱いんだね。それだけではなく、よく見るとパラソル/マッドからアルバムを出していたアンジー・ヒートンが録音、演奏で参加し、マスタリングはアダム・シュミットだ。やっぱりつながってくるんだなあ(よかった、最後にポップな名前が出てきたぞ)。

・AMY FARRIS『Anyway』 (Yep Roc/YEP2071)2004

・GURF MORLIX『Cut 'N Shoot』 (Blue Corn/BCM0402)2004

・MICHAEL FRACASSO『A Pocketful of Rain』 (Lone Star/TNG-LS4014)2004

・GINA VILLALOBOS『Rock 'N' Roll Pony』 (Kick Music/no number)2004