ちょっと遅れたが、連載中触れることができなかったものを補足する意味もあって、去年のポップ・アルバムのまとめをする。一応トップ20という形にしたが、思いついた順だから、それほど意味はない。また、再発・編集盤やルーツ系については省いている。個人的にはそちらの方をよく聴いていた一年なので、余裕があったら次回にでも。

1)John McMullan/John McMullan(Kicktone)

 本誌02年8月号参照。

2)Rhett Miller/Instigator(ワーナー)

 オールド97s後期の音楽性を考えれば当然こう来るだろう、でもブラッドショット出身とは思えないよねというポップ性はもちろん、ジョン・ブライオンによるサウンド・プロダクションもかっちりまとまっていて文句なし。ウィルコとはまた別の流れで、ルーツ・ロックからポップへという流れを確立したところがなかなかユニークだ。

3)Beatifics/The Way We Never Were(Bus Stop)

 90年代前半に活動したロッカーフェラーズを前身とした、ミネアポリスのポップ・バンドによる待望の2nd。日本のファンには一足早くレイジー・キャットの編集盤『What's Up Buttercup?』で披露されていたナンバーを冒頭に配し、昨年初めのEPによって高まっていた期待を裏切らない佳作に仕上がっている。ビートルズやビッグ・スターの影響が強いクリス・ドーンのポップ・センスがよく伝わってくる一枚。

4)Lackloves/Star City Baby(Rainbow Quartz)

 90年代初期に佳作を二枚残して解散したブロウ・ポップスのメンバーだったマイク・ジャーヴィスによる新バンドがラックラブズ。1stも初期ビートルズの匂いを濃厚に漂わせながら独自の味付けを施した傑作だったが、今回の2ndは楽曲、演奏ともに一段とスケール・アップ。新録音された前作のナンバー三曲もソリッドに生まれ変わり、バンドとしての充実を見せつけてくれたのは嬉しい限りだ。

5)Bigger Lovers/Honey In The Hive(Yep Roc)

 ロックしながらポップで幻想的という傑作2nd。1stより一回り大きくなって、バンドの成長ぶりがたのもしい。マラーがああなってしまった今(昨年の新作にはがっかり)、フィラデルフィア期待の星はビッガー・ラバーズに変更しておきます。

6)Blue Cartoon/The Wonder Of It All (Aardvark)

 テキサス州で地道に活動を続ける、ピュアなポップ・バンドによる3rd。メロディーやハーモニーの美しさは変わらない上に、今回はポール・フォックス(XTC、シュガーキューブス等)をプロデューサーに迎え、サウンド面での充実を図りながら、そのポップ・センスにますます磨きをかけている。

7)P.J.O'Connell/Happy Go Lucky(ハヤブサ・ランディングス)

 80年代にはフェッチン・ボーンズやコネルズ(一昨年の新作もよかった)らと共に注目を集めていた、ノース・キャロライナのフライング・ピッグス。その中心人物だったポップSSWによる2ndソロは間違いなく昨年の収穫の一つだろう。これをNRBQファンだけのものしておく手はない。日本盤には「New Orleans」(1stや前述のレイジー・キャット編集盤でも聴ける名曲)他が追加されていてお買い得。

8)Marc Bacino/Million Dollar Handshake (日本クラウン)

 出る出るといわれていたアルバムがようやくリリース。これまた待った甲斐はありました。1stを凌ぐ傑作です。簡単に日本盤が手に入るので、まだ聴いていない人はこちらも是非。

9)Model Rockets/Tell The Kids The Cops Are Here(Not Lame)

10)Shazam/Tomorrow The World (Not Lame)

11)Myracle Brah/Super Automatic (Not Lame)

12)Starbelly/Everyday And Then Some (Not Lame)

 ノット・レイムものをまとめて。この中で一番のお気に入りは六年ぶりに待望の三枚めを発表してくれたモデル・ロケッツ。先輩格のヤング・フレッシュ・フェロウズに通じる飄々とした佇まいがたまらない。その他、ストレートなロックンロール感覚を前面に押し出したシャザム、安定感すら漂わせ始めたミラクル・ブラー、前号のレビューでも大きく扱われていたスターベリー等、それぞれ力作ぞろい。今年もJTGインプロージョン、マイケル・カーペンター、ボビー・サトリフの新作等、意欲的なリリースに期待できそう。

13)Richard X. Heyman/Basic Glee (Turn-Up)

14)Brendan Benson/Lapalco(東芝EMI)

 それぞれいかにもポップ職人らしい完成度の高さで、健在を印象付けてくれた。後者は日本盤も出ているが、ヘイマンはもっと注目されていいと思うけどなあ。

15)Jesse Valenzuela/Tunes Young People Will Enjoy(Gabriel)

16)Tommy Keene/Merry-Go-Round Broke Down(SpinART)

17)Jay Bennett & Edward Burch/The Palace At 4 AM(Undertow)

 ヴァレンズエラについては先月号参照。そこにゲスト参加していたトミー・キーンも新作を出している。スピンアートからというのは意外だったけれど、内容はいつもの通り。ヴァレンズエラ、ロビン・ウィルスン、アダム・シュミット、ジェイ・ベネットなど、お馴染みのメンバーがずらりとゲスト参加して、安心して聴ける一枚。ウィルコを離れて正解でしょうのジェイ・ベネットはエドワード・バーチと組んでアルバムを発表してくれた。もっと骨っぽいアルバムになるのかと思ったら、全体的にはメランコリックな色が濃く、ヴァラエティに富んだ仕上がり。冒頭の「Puzzle Heart」はキャッチーなスタイルにこだわる彼の姿勢を反映した好ナンバーだ。

18)Kennedys/Get It Right(Jiffyjam)

19)Jill Olson/My Best Yesterday(125;Innerstate)

20)Will Rigby/Paradoxaholic(Diesel Only)

 18・19は本誌02年10月号参照。20は02年7月号参照。

 次点としてはパララックス・プロジェクト、ジゴロ・アンツ、ヴェルヴェット・クラッシュ、ヴァン・デューレン&トミー・ホーエン等。また、日本盤が出るだろうと思って購入を見送ったメイフライズUSA、ダグ・パウエル、エド・ジェイムズ、スーパードラッグあたりはその後出る気配がなく、あわてて今ごろ注文を出したりしているのだが、聴いていればおそらくリストの中に入ったはず。年末にリリースされたパット・ブキャナンも入手が間に合わず残念。ほかにもサイツのセカンド、フローラポップ等、未聴のアルバムがざくざくあるので、また機会があれば取り上げていきたい。

1)Beatifics/The Way We Never Were(Bus Stop/BUS1020)2002

2)Lackloves/Star City Baby(Rainbow Quartz/RQTZ-073)2002

3)Bigger Lovers/Honey In The Hive(Yep Roc/YEP2037)2002

4)Blue Cartoon/The Wonder Of It All (Aardvark/AR-72004)2002