早いもので、創刊号から始まったこの連載も20回。英国ポップ・ファンにも楽しめるアメリカ(たまにカナダやオーストラリア)のポップ・アルバムを紹介するという主旨に変わりはないが、筆者の好みにより、80年代ポスト・パンクや現在のルーツ・ロックなども取り上げてきた。正直言って、題名に偽りありと自分で思うときもあるけれど、好きなものはしかたがない。本人は一応「ポップ」をキーワードにしているつもりなので、今後も温かく見守っていただけるとありがたく思います。

 さて、この原稿を書いている段階では、2001年も既に二ヶ月が過ぎ、前号で岩本編集長がプッシュしていたトーリーズの新作、スプリッツヴィルの『コンプリート・ペット・ソウル』(以前出ていたプロモEPの完全版。お馴染みエアーメイルから)、元サムラブズのダリル・メイザーを中心にした豪米合体ポップ・ユニット、オレンジ・ハンブル・バンドのセカンド『ハンブリン』(スプーナー・オールダム、ジム・ディッキンソン参加の傑作! 三月にペインテッド・スカイ・ディスクから国内盤も出ます)など、注目アルバムがどんどんリリースされているけれど、今回は昨年印象に残った作品を振り返っておきたい。まずはトップ10(ポップ編)から。

@Swag『CATCH-ALL』(Houston Party)

AMark Johnson『LAST NIGHT ON THE ROLLER COASTER』(Lazy Cat)

BMichael Penn『MP4』(Epic)

CRobert Crenshaw『VICTORY SONGS』(Gadfly)

DLackloves『AS FAR AS YOU KNOW』(Endura's Box)

EMichael Carpenter『HOPEFULNESS』(Not Lame)

FBrown Eyed Susans『AFRAID OF HEIGHTS』(11 Records/Page)

GJupiter Affect『TWO WAYS OF BECOMING ALICE』(eggbert)

HJill Sobule『PINK PEARL』(Beyond)

IMayflies USA『THE PITY LIST』(Yep Roc)

番外:V.A.『FULL CIRCLE;A Tribute to Gene Clark』(Not Lame)

 @はついに出たフル・アルバム。詳しくは本号レビュー欄参照。Aは長年NYで活躍し、最近LAに移ったポップSSWによる三枚目。オールディーズ感覚を持ったポップ・ソングの数々はまさに絶品。本誌昨年四月号に編集長のレビューあり。BGは昨年五月号の本コラム参照。Cはマーシャル・クレンショウの実弟による二枚目。1st同様職人技が光るレトロ・ポップ感覚がたまらない。十月号の特集でも取り上げたDは元ブロウ・ポップスのマーク・ジャーヴィスによる新バンド。初期ビートルズ・ファンにも大推薦。Eはノット・レイムの近作中一番気に入っている一枚。今年二月号本コラム参照。Fはカナダの一押しポップ・バンドによるセカンド。プロデューサーにジェイソン・フォークナーを迎え、明快で力強い佳作を届けてくれた。昨年十一月号レビュー欄で編集長も書いていたように、ジェリーフィッシュ・テイスト満載です。Hは一連のブラッド・ジョーンズ・プロデュース作品のポップ・サイドを代表して。Iはノース・カロライナの注目新人バンドによるセカンド。  他にはメイフライズUSAと並んで個人的に気になっているイヴリン・フォーエヴァーの三枚目(二月号レビュー参照)、日本盤もめでたくリリースされたマイク・レヴィのソロ、ボビー・サトリフのセカンド、マット・ブルーノのデビュー作なども大きな収穫だったと思う。続いてはルーツ編。

@Steve Earle『TRANSCENDENTAL BLUES』(E-Squared/Artemis)

AMarah『KIDS IN PHILLY』(E-Squared/Artemis)

BTim Carroll『NOT FOR SALE』(Self-release)

CWill Kimbrough『THIS』(Waxysilver)

DMichael Hall『DEAD BY DINNER』(Blue Rose)

EBeaver Nelson『LITTLE BROTHER』(Black Dog)

FBellwether『BELLWETHER』(Self-release)

GHensley Sturgis『OPEN LANES』(Blue Rose)

HTerry Anderson『I'LL DRINK TO THAT』(Not Lame)

ICharlie Chesterman『HAM RADIO』(Aerola)

番外:Sky Kings『FROM OUT OF THE BLUE』(Rhino)

 本誌十月号でもレビューされていた@はアイリッシュ録音を含む一方、ビートルズ風味が強い側面もあり、ばりばりのルーツ派にはあまり評判がよろしくないようだが、ポップOKのこちらとしては、文句なく楽しめた。年末に出たビデオも◎。ギター、エリック・アンベル(元デル・ローズ)というクレジットを見た瞬間、飛びついて購入してしまった。音楽的な充実はもちろん、ウィル・リグビー(元dB's)やエリック・アンベルがスティーヴ・アールと結びついていく人脈の流れも興味深い。Aはフィラデルフィアのルーツ・バンドによるセカンド。1stもよかったけれど、こちらも大傑作。BCはナッシュヴィルのアナザー・ルーツ・サイドを代表して(昨年十月号本コラム参照)。ウィル・キンブロウは、ブラッド・ジョーンズと共にジョッシュ・ロウズ、ジェス・クライン、エイミー・リグビーらのアルバムにも参加。エイミーの三枚目『THE SUGAR TREE』(KOCH)は彼女にとっても会心の出来であろう佳作だった。DEはオースティンのルーツ・ロッカーによる最新レポート。どちらもプロデュースはジャド・ニューカム(元ルーズ・ダイアモンド)だ。ジャドのソロも一度聴いてみたいな。Fはミネアポリス、Gはオハイオから届いた充実作。HIは痛快ロックンローラーによる新作を続けて。Hは元ウッズ、Iは元スクラフィ・ザ・キャット。80年代から活躍しているのに、日本での紹介には恵まれない人たちだが、僕はどちらも大好き。もっと評価されていいと思うんだけどね……。

 他にはノース・カロライナのルーツ・ロック勢からライアン・アダムス(ウィスキータウン)待望の初ソロ、ルー・フォードのセカンドなども愛聴盤でした。最後にお気に入りSSW編を順不同で。

・Jules Shear『ALLOW ME』(Zoe)

・Peter Case『FLYING SAUCER BLUES』(Vanguard)

・Freedy Johnston『LIVE AT 33 1/3』(Singing Magnet)

・Martin Zellar『TWO GUITARS, BASS & DRUMS』(Owen Lee)

・Chuck Prophet『HOMEMADE BOOT』(Corduroy)

 後の三枚はライブ盤。ああ、もうコメントする余裕がない。取りあえずこれだけは書いとかないと。チャック・プロフィットは何と来日が決定! 五月の連休に、東京・横浜での公演が決まっているそうです。詳しくは次号で。

SWAG/Catch-All (Houston Party/hpr-032)2000

MARK JOHNSON/Last Night on the Roller Coaster (Lazy Cat/COS-04)2000

STEVE EARLE/Transcendental Blues (エピック/ESCA-8207)2000

MARAH/Kids in Philly (E-Squared/Artemis/751024-2)2000