最新レビュー

お待たせしてます。やっと3月です。全然追いつきませんが、気長にお待ちを。

3/1 - 3/31


Tommy Keene/Isolation Party (Matador/Ole-297-2)

 期待通りの11作目(EP含む)。録音メンバーが前作とは一部変わっている。89年から活動を共にしていたブラッド・クインがベースを降り、代わりに前作では3曲ギターを弾いただけのジェイ・ベネット(確かに今はWilcoのメンバーなんだけど、Titanic Love Affairという彼自身のバンドも忘れてはいけない)がベースを8曲担当(他にもオルガン、ギターと大活躍だ)、残り5曲の内4曲を担当したのは何とLeroy Bocchieri(ソロ・アルバムを1枚とデイ・ワン名義でのアルバムを2枚リリースしている、ジェフ・マーフィー絡みの人)ではないか。ドラムはやはり89年のツアーからお馴染みのジョン・リチャードソンで変わらず。ジェフ・マーフィー(Shoes)、ジェフ・トウィーディー(Wilco)、ジェシ・ヴァレンズエラ(Low Watts, ex-Gin Blossoms)と並んだバッキング・ヴォーカル陣が豪華だ。国内盤もめでたく5月に発売される模様(アップが遅れている内にもう出てますね。解説は誰なんでしょう?)。

Liquor Giants/Every Other Day at a Time (Matador)

 SXSWでムーヴのカヴァーを演奏する彼らを見て遅まきながら気づいたのは、60年代英国ビート・ポップから中期ビートルズ流ソフト・サイケにつながる流れがこのバンドにも当てはまるのではないかということ(そういえば今回のジャケットもそれ風だ)。もう一つの重要な要素であるビッグ・スターというか、リプレイスメンツ風味からもう少し力強い方向を期待していたので、最初聞いたときの印象はよくなかったのだが、そう思って聞き直せば随所に夢幻的な味わいがあり、これはこれで悪くない。同じ方向性を持つブライアン・カサン(Chewy Marble)が参加しているのもなるほどと思わせる。

The Posies/Success/Popllama (Popllama/PLCD-3232)

 前作より僕は好き。特に4曲目が気に入って、何度も繰り返し聞いた。手元にある資料にはジョンの言葉として「本当に終わるのは、生活手段、支配力、アイデンティティーとしてのポウジーズだ」なんてわけのわからないことが書かれているが、解散という解釈でいいんだよね?

Richard X. Heyman/ Cornerstone (Permanent Press/PPCD 52707) 98

 70年代後半にリンク・レイのバッキングを担当したり、ワシントンDCのニューウェイブ・バンド、ザ・レイジ(トミー・キーンも一時在籍)に参加したり、随分と古くから活動しているNYのポップ・アーティスト。昨年自主製作でリリースされていたものがようやくリリースされた。7年ぶりの3枚目はブランクをほとんど感じさせない傑作である。効果的なストリングスも前作でお馴染みの手法だし、1作目からのパートナー、ナンシー・リー(b)やアンディ・レズニック(g, mandolin)も今までと変わらない好サポートを見せている。ビートルズ+コステロ風のポップ・テイストにはますます磨きがかかり、今までの無念(があるとしての話)を一気にはらすかのような爽快感に満ちている。ゲストにルークスのMichael Mazzarellaが参加。これが気に入った人は是非90年の「リヴィング・ルーム」(国内盤はアルファから出ていた)や91年の「Hey Man!」(Sire)を中古屋で探そう(「コーナーストーン」は現在国内盤がMSIから好評発売中)。

Chris von Sneidern/Wood & Wire(Mod Lang/ML005) 98

 シスコのポップ職人による新作。最近はJ.W.ハーディングやラス・トールマンなどの作品でプロデューサー、エンジニアとしても腕をふるっているが、自分のアルバムも相変わらずいい出来だ。ソロ・デビューこそ93年のことだが、80年代にはスニーチズ、フライング・カラー(ただし、どちらもアルバムには参加していない)とシスコの優良バンドを渡り歩き、一時はポール・コリンズのツアーにも参加という経歴が物語るように、この人の活動歴も随分と長い。ソロもこれで4枚目になる。内容はまたまた文句なし。英国風の哀愁を漂わせつつも、湿っぽくならずにからっとしているのがこの人の長所だろう。30歳以上のバッドフィンガー・ファンは今度出るビデオを喜んで買うより(僕も買っちゃうだろうけど)、このアルバムを聞いて、90年代を代表するポップの天才を認識することが大切だと思う。ジョーイ・モランドもハンナ・クラーナより、クリスと組めばよかったのに。やることがなくて困るだろうけど(笑)。

The Vandalias/Buzzbomb! (Big Deal/9044-2)

 ミネアポリスの覆面バンドによる2枚目。痛快の一言。外見やカヴァーに惑わされず、オリジナル・ソングのすばらしさを評価しよう。

Dan Kibler/Capsule (Big Deal/9052-2)

 1作目もなかなかだったが、今回もかなりいい線いっている。ルーツ・ロックともパワー・ポップとも言い切れない中途半端なところは弱点だが、どちらも好きな人にとっては、ちょうどいいルーツ・ポップが楽しめる好盤だ。プロデュースは1作目と同じくジェフ・マーフィー。ハーブ・アイマーマン(ジェフ・マーフィーと組んだナーク・トウィンズで知られ、ソロも2枚出ている)が2曲でマンドリンを演奏し、プリムソウルズのエディー・ムニョースも数曲ギターを弾いている。

Absolute Zeros/(Big Deal/9053-2)

 元チョッパーのスティーヴン・ディールによる新バンドがついにアルバムを発表。後期は少しルーツ度を高めていたチョッパーだが、初期を思わせるパワフル路線を復活させて、再スタートにふさわしい勢いを取り戻している。ただ以前に比べるとかなりパンキッシュなところも増えて、そこは今一つかな。

John Wesley Harding/Awake(Zero Hour/ZERCD1210)

 シアトル録音の1曲目(カート・ブロック、スコット・マッコーイ参加)を除いてシスコ録音。当然のようにCVS(共同プロデュース)、チャック・プロフィット、ロバート・ロイドらが参加し、堅実なバックアップを見せている。前作より曲の粒がそろった佳作。すぐ終わってしまう1曲目の完全版を聞きたいのだが、これどこかで発表済みなんだろうか?

Sara Hickman/Two Kinds of Laughter(Shanachie/8029)

 オースティンのフォーキーな女性SSWによる4枚目。メジャーとのいざこざは有名な話で、その辺は国内版「ネセサリー・エンジェルズ」(Discovery/94年/クリス・マッケイも参加していた)ライナーに全部書いてあるので御一読を。正直国内デビューとなった「ショートストップ」(Warner/91年)はあんまり感心しなかった記憶があるが、編集盤「Misfits」(Shanachie/97年)を挟んでShanachie第2弾となったこの新作は傑作だ。今までのベストと言ってもいいだろう。プロデュースを手がけたエイドリアン・ブリューのどこまでも澄んだ音作りが曲のよさと相まって、実に気持ちのいいフォーキー・ポップを聞かせてくれる。後半はちょっと地味だが、特に1から3曲目までの流れは完璧で、これを聞きながら青空の下を散歩したら最高だろうなどとアンチ・アウトドア派の私に柄にもないことを思いつかせるパワーを持っている。4曲目は何とJon Brionとの共作でびっくり。こんなところにまで顔を出しているとは...。

Steve Wynn/Suitcase Sessions(Return to Sender/RTS28)

 ドイツのメール・オーダー専門レーベルから届いたセッション集。カムのメンバーと組んだ「Melting in the Dark」(Zero Hour/96年)時のものが中心だからどうかなあと思っていたのだが、お蔵好きのスティーヴだけあって、これまた未発表曲にいいものがざくざくとある。さらにうれしいことに、蓋をあけてみればカムではなく、何とイレヴンス・ドリーム・デイとのセッション(95年)が6曲収録されていた。「Melting in the Dark」発表時はこれとカムとのセッションが両方収録されているはずだったのだが、アルバムは結局全部カムとのセッションで統一され、聞けずに終わっていた貴重な録音だ。6曲中アルバムに収録されたものは"Why"と"The Way You Punish Me"の2曲しかなく、後に「Sweetness And Lights」に収録された"This Deadly Game"を除く3曲が未だに正式には録音されていない(2やリック・リゾーとの共作4なんかアルバムに入れてもよかったのに)。この中で一番古い92年の"The Actress"は第1期ガーターボ−ル時代のまたもや貴重なもの。96年3月のセッションと4月のライブ(?)計5曲はデニス・ダックが参加しているツアー時の録音。カヴァーが多く、ショッキング・ブルーやバナナラマでお馴染みの"Venus"なんていうのも入っている。あまり期待してなかったけど、さすがリターン・トゥ・センダーという感じだね。

Wagon/Anniversary(Glitterhouse/GRCD423)

 最近はブルー・ローズに押され気味だったが、この春まとめて新作がリリースされたドイツのレーベルからミズーリ州のカントリー・ロック・バンド、ワゴンのセカンド・アルバムが到着。ファーストはロイド・メインズのプロデュースでハイトーンから出ていたが、契約を切られたのだろうか。今回はロイドの参加はなく、自分たちでプロデュースをしている。枯れたジェイホークスという味わいは今回も健在で、ナチュラルで素朴な味わいを生かした静かな曲が淡々と続く。盛り上がりには縁がないサウンドだが、暗めというわけでもなく、聞いていて心落ち着くアルバムだ。

Neal Casal/The Sun Rises Here(Glitterhouse/GRCD430)

 もう一枚、昨年のメール・オーダー・オンリー作に続いて、正真正銘の新作がリリースされている。ニュージャージーのSSWによる3枚目。前作のアコースティック路線からバンド・サウンドに戻っていて、1作目と2作目のちょうど中間という感じ。1作目に続いてグレッグ・レイズやドン・ヘフィントンが参加。プロデュースはこれまた自分でやってます。ワゴンといいニールといい外部プロデューサーをつけないのは、レーベルにお金がないからとにらんだがどうだろう。グリッターハウスからは他にGo To Blazesの編集盤も出ています。