最新レビュー


12/1 - 12/31


The Billy's/ Another Winner (Redshirt/86984 9768 2)

ミネアポリスのネオ・ルーツ・バンド。これが3枚目だが、僕は初めて聞いた。派手さはないが、メロディーを重視した曲作りと、土の匂いを感じさせる音作りが実に上手く溶け合って、気持ちのいいアメリカン・ロックを聞かせてくれる。ジェイホークスやハニードッグスを思わせるサウンドだが、もう少し荒っぽい感じもするし、くせのあるヴォーカルやストレートな音作りには、同郷の先輩バンド、ギア・ダディーズの影響が強く感じられる。プロデュースはハニードッグスやギア・ダディーズを手がけたトム・ハーバーズ。いつもながら、いい仕事である。取り立ててすごいところがあるわけじゃないけれど、何となく聞き続けてしまい、12月の個人的ベストとなった1枚でした。パワー・ポップも悪かないけど、こういうまっとうなロック・バンドもやっぱりいいね。過去の作品も併せてMiles of Musicで扱っています。

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Rank Strangers/ Target (Veto/TRG/89371-2)

ミネアポリスのバンドをもう一つ。トム・ハーバーズとビリー・ダンカート(ex-Gear Daddies)がプロデュースを手がけた「Far Cry for Home」(Crackpot/93年)、ベーシストがチェンジして、オルタナ色を強めた「Mystery Spot」(Veto/96年)に続く3枚目だ。1枚目のぶっきらぼうなロックンロール・テイストが気に入っていたので、2枚目の方向性には少し違和感があったのだが、この新作も基本的には前作の流れを受け継いでいて、どうも煮え切らない印象が先に立つ。随所にビートルズを思わせるフレーズがあったりして、親しみやすさは増しているんだけど、個人的にはもう少しストレートなアプローチを期待したいところ。


The Marys/ Back This Way (Zesty/0704)

ニュー・ジャージーのフォーキー・ポップ・デュオ。デビュー・アルバムと思われるが、詳細は不明。Don BrodyとConnie Shararという男女2人組で、ほとんどの曲はドン・ブロディのペンによるもの。ヴォーカルは仲良く分け合っており、ジョン&メリーやケネディーズ風のさわやかなハーモニーが楽しめる。ゲストがすごい。1曲目でバックを担当しているのは何とマーシャル・クレンショウ、ジェイムズ・マストロ(Health & Happiness Show)、グラハム・メイビー、という東海岸の超豪華トリオだし、3曲目にはジョージ・アッシャーもオルガンで参加している。


6 String Drag/ High Hat (E-Squared/1055-2)

豪快なオルタナ・カントリー・バンドによる、スティーヴ・アールのレーベルから出た2枚目。先行シングルの1曲目こそがんがん飛ばしているが、全体的にはのどかな曲が多く、よれよれのヴォーカルに何とも言えない味がある。3曲目のトロンボーンや5曲目のサックスには、どことなくザ・バンドの影響も感じられ、南部風の味付けを施したアーシーなロックを聞かせてくれる。お世辞にも歌がうまいとはいえないが、ぶっきらぼうな中にどこか親しみが感じられる好バンド。スティーヴ・アール御大も1曲ギターで参加。


Rainravens/ Diamond Blur (Blue Rose/BLU CD0049)

日本ではなかなか注目されにくいが、ドイツのブルー・ローズから続々と注目盤が出ている。ここで、まとめて紹介しておこう。

96年にデビュー盤がデジャディスクから出ていた、オースティンの4人組。すっきりとした後味のネオ・ルーツ・サウンドが身上で、ここでもアコースティックな肌触りを重視したソングライティングが光っている。前作に比べルーツ度を増した曲も多いが、ミディアム・テンポのバラード(5,8)やカントリー・ワルツ(12)からは早くも円熟の境地が感じられる。ベスト・トラックはイーグルスやポコを思わせる、オーソドックスなカントリー・ロックの11。ロイド・メインズやガーフ・モリックスなど、ゲスト多数あり。


Rich Hopkins & Luminarios/ The Glorious Sound of...(Blue Rose/BLU CD0053)

96年の「El Paso」に続くブルー・ローズ第2弾。今回のルミナリオスにはMC5のマイケル・デイヴィスが全面参加している。前作もよかったけど、今回もまた出来がいい。特に傑出しているのが、80年代初期に平和部隊の一員として滞在したパラグアイの思い出を歌った"Paraguay"。以前同じタイトルで、インストとスペイン語による異色アルバムをリリースしているが、それとは全く異なり、こちらはいつものようにニール・ヤング風のアプローチで迫る曲なので、ご安心を。静かなイントロから次第に盛り上がり、情感たっぷりのギターに載せて、10分以上に渡って展開される、自分を見つめ直す旅。いや、これは名曲だ。リッチの今後を考えたとき、ニール・ヤングにとっての「ライク・ア・ハリケーン」のような位置を、この曲が占めていくのではないか。ブルー・ローズ・コレクションで一足先に披露されていたエレクトリック・プルーンズのカヴァー(「今夜は眠れない」)も収録。是非もっと話題になって欲しい1枚である。


Todd McBride/ Sketchy (Blue Rose/BLU CD0055)

96年の冬に解散してしまった、アセンズのロックンロール・バンド、ダッシュボード・セイヴァーズの中心メンバーによるソロ第1弾。アルバム3枚持ってるけど、ダッシュボード・セイバーズってそんなに印象に残っていない(ファンの人ごめんなさい)。でも、このアルバムはよかった。いい意味で肩の力が抜けていて、リラックスして作ったことがよく分かるのだ。たとえて言えば、ドライヴィン・クラインとケヴィン・キニーみたいなものかな(ただし、ケヴィンのソロよりはロックしてます)。同郷のよしみか、ヴィック・チェスナットが1曲だけ、バッキング・ヴォーカルを担当している。


Shakin' Apostles/ Medicine Show (Blue Rose/BLU CD0059)

オースティンのカントリー・ロック・バンド。昨年の編集盤に続くブルー・ローズ第2弾はうれしい新録の登場だ。こちらはESDからの移籍組。デジャディスクとESDの両方をカヴァーしてくれるとは、何て立派なレーベルなんだろう。両者亡き後、所属バンドの行く末を心配していた一部マニアもこれで取りあえずは安心か(とはいっても他に一杯いますがね。マイケル・ホール、リサ・メドニック、テリー・アンダーソン、etc.はどうなってるの?)。西部劇風の「Tucson」もそうだったけど、どうもこのバンドは1枚ごとのコンセプトにこだわりがあるようで、今回はジャケットといい扮装といい、タイトル通り、メディシン・ショウ(薬売りのショウ...でいいのかな。確か古い大道芸みたいなものですよね。)をモチーフにしているようだ。とはいっても、音楽的には数曲を除き、ほとんど現代風ののびやかなネオ・ルーツ・サウンドで統一されている。J・D・フォスター、ロイド・メインズなどがゲスト参加。


Neal Casal/ Field Recordings (Glitterhouse/GRCD429)

個人的に期待している東海岸のSSW。これはドイツのグリッターハウスからメール・オーダー・オンリーでリリースされた編集盤。2枚目に収録されていた"Best to Believe"や"Angel on Hold"のバンド・ヴァージョンを始めとして、デモやアウトテイクを満載した貴重な1枚だ。ファンなら絶対に買いでしょう。直接注文してもいいし、Miles of Musicでも買えます。


The Setters/ Dark Ballad Trash (Return To Sender/RTS 23)

ついでにもう一つドイツ盤を。メール・オーダー・オンリーのリターン・トゥ・センダーから、以前から予告されていたセッターズのアルバムがようやく出た。セッターズはアレハンドロ・エスコヴェード、ウォルター・サラス・ヒューマラ、マイケル・ホールの3人によるプロジェクトで、ドイツのブルー・ミリオン(米盤はウォーターメロン)から94年にアルバムを1枚リリースしている。もともと3人が曲を持ち寄って作ったユニットだけに、今回収録されたライブ(91年のもの)も、それぞれのソロやバンドから自由に選曲されており、全13曲中、アルバム「Setters」との重複は"River of Love"(ホール)1曲のみ。アルバムでは聞けなかった"Paradise", "Broken Bottle"(エスコヴェード)、"Find A Way", "My Big Car"(ヒューマラ)、"Going Round", "Sharlene"(ホール)などの名曲群が1枚に凝縮され、しかもセッターズ・ヴァージョンで楽しめるのが何ともうれしい。こうなると各自のベスト盤の様相も呈してきており、1粒で3度おいしいわけだ。ただ単にライブを録音しただけが、いやでも高密度の傑作に仕上がっている。これまたMiles of Musicで購入。2000枚限定ですから、在庫のあるうちに是非確保しましょう。