最新レビュー


お待たせしました。たまっていた分を一気にレビューします。Jayhawks, Son Voltは頼んではあるのですが、未着のため次回に回します。

3/10−4/30


Kim Richey/ Bitter Sweet (Mercury/314-534 255-2) 1997

ビル・ロイドとは大学時代からの友人であるナッシュビルの女性SSW。95年の「Kim Richey」(Mercury)に続く2作目。お店ではたいていカントリー・コーナーに置いてありますが、カントリー色は薄く、ロック・ファン向けです。ルシンダ・ウィリアムズ(アメリカンから出るはずだった新作はどうなったんだ!)あたりのファンにお薦め。プロデュースのAngeloはバンド・メンバーで、今回はほとんどの曲をキムと共作している。もともとは前作のプロデューサー、Richard Bennett(スティーヴ・アールでお馴染み)に頼むつもりだったところ、彼がマーク・ノップラーとツアーに出てしまったため、自分たちでプロデュースすることになったのだとか。ノース・キャロライナのオルタナ・カントリー・バンド、Joleneメンバーの参加あり。


Richard Buckner/ Devotion and Doubt (MCA/mcad 11564) 1997

前作はDejadiscから出ていたカリフォルニアの渋めSSWによるメジャー第1弾。地味ではあるが、深みのある歌声は不思議と人を引きつける。無伴奏で朗々と歌われる6やピアノのみをバックに切々と歌われる9に彼のそうした魅力が集約されているのではないか。アリゾナとオースティン録音で、プロデュースはお馴染みJ.D.Foster(*)。その人脈もあってか、Howe Gelb, Joey Burns, John Corvertino, Rich Brothertonなどそうそうたるメンバーが演奏に参加している。ジャケットの月が美しい。

(*) Green on Red「Too Much Fun」(92)のプロデューサー。80年代半ばまでカリフォルニアのドワイト・ヨーカムのバック・バンドで活躍していたが、近年は彼の元を離れ、さまざまなセッションに参加し、95年にはダン・スチュアートの1stソロもプロデュースしている。主な参加作はダーデン・スミス&ブー・ヒューワダイン「Evidence」(89)、サイロズ「The Silos」(90)「Hasta La Victoria!」(93)、ヴァルガー・ボートメン「Please Panic」(92)「Oposite Sex」(95)、サイモン・ボニー「Forever」(92)「Everyman」(95)など。(jem7号用の原稿より)


Jimmy LaFave/ Road Novel (Bohemia Beat/0007) 1997

オースティンのSSWによる4枚目。前回のバッファローに続いて今回は「ロード・ノヴェル」。相変わらずアメリカならではの豊穣かつ雄大な音楽性が楽しめる。恒例のディラン・カヴァーは"Buckets of Rain"(「血の轍」収録)でした。レオン・ラッセル"Home Sweet Oklahoma"のカヴァーもやってます。集中ベストは往年のスプリングスティーンを思わせる11の"The Open Space"かな。


The Dead Reckoners/ A Night of Reckoning (Dead Reckoning/0007-2) 1997

Kieran Kane, Kevin Welch, Tammy Rogersらお馴染みの面子がじっくりと聞かせるルーツ・ロックの神髄。1+1が2以上になるという好例で、スーパーグループにありがちなぎこちなさがなく、それぞれの曲に全員が自然と馴染んでいるところはさすが。イントロに歓声は入っているものの、どうやらライブではないようです。Kieran KaneはO'Kanes時代の曲も再演してます。個人的に苦手意識のあったMike Hendersonの曲が結構よく聞こえるのは貴重な発見だった。


Chuck Prophet/ Homemade Blood (Cooking Vinyl/COCK CD 114) 1997

期待通りの傑作。元Green On Redメンバーによる4枚目。ツーソンのEric Westfallという人とチャックが共同でプロデュースしており、バンドはMax Butler(guitar/mandolin), Anders Rundblad (bass), Paul Revelli (drums), そしていつものようにStephanie Finch (vo/key)という構成。割とまとまっていた前作よりかなりラフな音作りで、曲調も多彩。オルタナ・ファンにもこれならアピールできるのでは。ゲストはGreg Leiszのみ。今回は録音にそれほど手間暇をかけなかったそうで、バンドによる勢いと演奏の生々しさをそのままアルバムに定着させるという狙いは十分成功したと言って良いだろう。チャック流にラウドな味付けを施したカントリー・ロック"Whole Lot More"が今のところ一番気に入っている。


Matthew Sweet/ Blue Sky on Mars (Funhouse/FHCP-1008) 1997

6枚目。いろいろ言う人もいるでしょうが、僕はこれでよいと思います。一人録音にしたところで、もともと彼はスタジオ作り込み派だったわけだし、結果オーライでしょう。あと、これは以前からそうなのだけど、相変わらずアナログにこだわってますね。A面、B面それぞれ6曲ずつと考えると構成の妙が見えてくるので、一度区切って聞いてみることをお薦めします。


Gladhands/ La De Da (Big Deal/9034-2) 1997

ノース・キャロライナ州チャペル・ヒルのパワー・ポップ・バンド。2作目。前作のストレートな音作りに比べて曲のタイプが増え、音楽性に幅が出てきている。1曲目こそまだ前作の名残があるが、2曲目や4曲目なんてほとんど70年代ポップスだ。だが、これも悪くない。一皮むけてようやくバンドとしての主張が出てきた感じがする。今後が楽しみ。

ところで、本作のプロデューサー、Wes Lachot(3月に本人に会ってきた添野によると、フランス風にラショーと発音するのだそうだ)は同州ダーラムにオーヴァーダブ・レイン[Overdub Lane]というスタジオを構え、何でも手がけることで有名。今手元にそのスタジオの写真があるのだが、壁に今まで彼の手がけてきたアルバムが24枚掛けられている。クリス・ステイミー、プレッシャー・ボーイズ、コネルズ、ディロン・フェンス、クラリッサ、テリー・アンダーソン等々、お馴染みのアーティストに加えて、期待のフライング・ピッグス他よくわからないアルバムがずらり並ぶ様は壮観。この辺の話は多分8号で取り上げる予定なのでお楽しみに。


The Lonesome Strangers/Land of Opportunity (Little Dog/Mercury/314-534-641-2) 1997

以前ハイトーンからアルバムを出していた4人組から2人が脱退、8年ぶりにデュオとして2作目(多分)がリリースされました。前作は悪くはなかったものの新味には乏しく、それほど印象に残っていなかったので、今回もあまり期待はしていませんでしたが、聞いてみるとこれが予想を上回る佳作でした。曲によってはもろにカントリーだったりブルースだったりしますが、大体はさわやかなネオ・ルーツ路線で統一されており、前作に比べてメロディーの輪郭がかなりくっきりしています。


Julie Miller/ Blue Pony (Hightone/HCD8079) 1997

Victoria Williamsとも仲の良い正当派女性SSW(詳しくは5号参照)。3年ぶり待望の5枚目でも独自のロリ声は健在。今まで続いてきたVictoriaの参加は今回なくて、代わりにEmmylou Harris, Steve Earle, Tammy Rogersらが参加している。難点を挙げるとすれば、ちょっと曲が地味かな。やや単調な印象が残る。次作に期待しましょう。


The Skeletons/ Nothing to Lose (Hightone/HCD8080) 1997

昨年はSyd Strawのバックで、その腕をふるったベテラン・バンド。Aliasの「Waiting」(92年)以来となる新作は、ずばり傑作です。今回特に目立つのがキーボード担当Joe Terryの成長ぶりで、3,6,10と3曲提供していますが、いずれも素晴らしい。D.C. Thompsonも1や4のように相変わらずいい曲書いてるし(4曲提供)、Lou Whitney作ヒルビリー風の9も楽しく(2曲提供)、Kellyは脱退してしまったようですが(現在4人組)、バンドとして今かなりの充実期にあることがうかがえます。NRBQほどひねりはないけれど、ロックンロールの醍醐味を味わいたい人は是非。


The Beltways/ The Beltways (Sawng MFG. Records/No Number) 1996

写真と資料付きで突然送られてきました。jemで紹介してくれと言うことなのでしょう。メリーランド州バルティモア出身の3人組による多分デビュー作。期待せずに聞いてみたら、リプレイスメンツ風の痛快なギター・サウンドにポップなメロディーがのっかる僕好みの曲ばかりで、かなりよいではないですか。デル・ローズやバズ・ジーマーあたりも連想させる好バンド。ほとんど無名のバンドですが、ホームページあります。音も聞けるので詳細はこちらで。