最新レビュー


12/16

John P. Strohm and the Hello Strangers/ Caledonia (Flat Earth/FECD106)

豪華120pのブックレット付きコンピレーション"American Songbook"で一番気に入っていたバンドがついに待望のフル・アルバムを出した。これが聞いてみたら傑作でびっくり。コンピ収録曲"Geronimo's Cadillac"もいいが、1曲目の"Slip Away"と2曲目の"Tangelo"で僕はがつんとやられてしまった。グラム・パーソンズ流カントリー・ロックを基本にジェイホークスのしなやかさ、ウィルコのポップ性を加えた良質な曲作りと演奏にただ圧倒されて、気づいたらここ2,3日はこのアルバムばかり聞いていた。ネオ・ルーツ系ではこんなに入れ込んだのは去年のジェイホークス、今年初めのスティーヴ・アール以来だろうか。後半はさすがに少しだれるが、前半5曲目まではとにかく完璧と言ってよい。John StrohmといえばBrake Babies, Antennaを経て今はVelo Deluxeで活躍中の人だが、そういった経歴は無視して構わない。乱暴な言い方をすると、そもそもアメリカ人はみなカントリー魂を成長過程で植え付けられるものらしく、育った環境がものを言うのはしかたないのだろう。彼の場合は父親がバーズとFBBのファンだったそうで、その手の音を聞きながら育った素養が明らかに本作につながっている。元々は去年の秋、Velo DeluxeではできないことをやろうということでMitch Harris(Velo Deluxeのドラマー)、Glenn Hicks(b)、Lisa Germanoらと集まったのがきっかけとか。前述コンピに掲載されたJohnの影響を受けた人ベスト10を挙げておくと、「Gram Parsons/ The Rolling Stones/ Merle Haggard/ Townes Van Zandt/ Neil Young/ Louvin Brothers/ Uncle Tupelo/ Buck Owens/ Jayhawks/ Big Star」といったところ。これらのアーティストに興味のある人はとにかく聞いてみてほしい。


12/5

V.A. / Come and Get It: a Tribute to Badfinger (Copper/CPR2181)

ついに出ました。米インディー・ポップ・アーティスト総出演のバッドフィンガー・トリビュート。同系統のラズベリーズよりも面子は豪華だし、何と言っても元歌がいい。誰がどう料理したってやっぱり"No Matter What"や"Day After Day"が名曲であることには変わりないし、Chris von Sneidernの"Midnight Caller"やAimee Mannの"Baby Blue"あたりはもう背筋ぞくぞくもの。数あるトリビュートものの中でも最高の1枚でしょう。ただ一つだけ不満を言うと、予告にあったMartin Luther Lennonが入っていないのはなぜ? "Without You"も聞きたかったんだけどなあ。

Vic Chesnutt / About to Choke (Capitol/CDP 7243 8 37556 2 2)

先頃彼の歌を集めた「Sweet Relief 2」が話題になったアセンズのSSWによるメジャー第1弾。通算5枚目。メジャー・デビューという気負いはまるでなく、いつものように淡々と、渋くて深い独自の歌世界を追求している。ゲストにはプロデュースも手がけたJohn Keane, John deVries, Mark LaFalceなど。


11/29

ドイツのGerman Music Expressに頼んで置いたCDがようやく到着。初めて使ってみたのですが、ここは価格がドル仕立てで分かりやすく、カードも使えてお薦めです。値段は1枚$25.00前後で送料は基本が$3.00。まあドイツ盤はどこで買っても高いので、こんなものでしょう。今回頼んだのはBlue Roseものを4枚。実はドイツ先行で8月に出ていたPeter Holsappleのソロが目当てだったのですが、品切れで残念。Blue Roseについての詳細はこちらを参照のこと。

The Schramms / Dizzy Spell (Blue Rose/BLUCD0038)

待望の4枚目。今のところ米盤は出ていない。期待を裏切らないオーソドックスなカントリー・ロック12曲入り。第一印象が地味ではあるが、味わいは深い。メンバーは前作と同じで、特にゲスト参加はなし。前回一つもなかったGeorge Usherとの共作が3曲、Kate Jacobsとの共作が1曲収録されている。カヴァーはPeter BlegvadとAndy Partridge共作の"In Hell's Despite"("Just Woke Up"に収録)。

Shakin' Apostles / Austin, Texas (Blue Rose/BLUCD0036)

ESD盤2枚からの選曲に、ライブ、未発表曲を加えたベスト盤。ライブではMike Wilhelmをゲストに迎えたトラックが入っており、要チェック。

Rich Hopkins & Luminarios / El Paso (Blue Rose/BLUCD0033)

こんなところでアルバムをリリースしていたとは。傑作"Dumpster of Love"からわずか1年で届けられた新作。Luminarios名義では4作目となる。タイトルで一瞬"Paraguay"再びかと余計な心配をしてしまうが、蓋を開ければ、いつも通りのデザート・ロック。ハードかつパワフルに迫る1曲目"Careless"からぐいぐい引き込まれる。とにかくかっこいい! ニール・ヤングとケヴィン・セイラムのファンには是非聞いていただきたい1枚だ。


11/13

Wilco / Being There (Reprise/9 46236-2)

待望の2枚目。2枚組ということで最初はちょっと散漫な印象もあったが、聴き込むと結構味がある。1枚目ではホーンを導入した軽快な"Monday"、Wilco節が堪能できる"Outtasite(Outta Mind)"、2枚目ではその"Outtasite(Outta Mind)"をひねって、ちょっとビーチ・ボーイズ風にアレンジした"Outta Mind(Outtasite)"が気に入った。

Tom Petty & the Heartbreakers / She's The One (WEA Japan/WPCR-796)

同じ曲を別テイクで収録するっていうのはニール・ヤングの十八番だけれど、そういえばトム・ペティも新作でやってました。アルバムとしては前作を越えてはいないし、もう一つの出来ですが、12曲目の"Walls(No.3)"(オルガンやストリングスを多用した1曲目"Walls(Circus)"の別ヴァージョン)は近来希に見る名曲。お得意の12弦ギターとハーモニカを軸にシンプルにまとめただけのテイクだけど、これぞフォーク・ロックという仕上がりを見せている。歌詞もよくって泣けます。