最新レビュー


8/18

お盆で帰省していたため、随分間があいてしまいました。今回は、カリフォルニアの「Miles of Music」(e-mail: MilesOMusc@aol.com) というルーツ系のお店から届いたものを中心にした、ネオ・ルーツ特集です。

The Bindlestiffs / Low Road (Roadhouse/RDHS-R954)

「No Depression」のレビューにルー・ホイットニー(スケルトンズ)がプロデュースを担当と書いてあったので、気になっていた1枚。カンサス出身の3人組で、音は中期グリーン・オン・レッドやデル・ローズあたりを思わせる、シンプルかつ泥臭いロックンロールが主体。曲自体の魅力がもう一つだけど、方向性には共感できるし、悪くはない。まあまあかな。

Robbie Fulks / Country Love Songs (Blood Shoot/BS011)

ブラッド・ショットはオルタナティヴ・カントリーをメインにしたシカゴの要注目レーベル。コンピ2枚、ムーンシャイン・ウィリー、ワコ・ブラザーズ、オールド97's、と今まで出たCDはほとんど手元にある。レーベル・カラーとしては割と本物志向で、ヒルビリー、ブルーグラス的な要素が強いため(特にムーンシャイン・ウィリーとワコ・ブラザーズ)、実は苦手な部類なのだ(でも、オールド97'sはちょっとロック寄りで好き)。ルー・ホイットニーやD.C.トンプソンら、スケルトンズ・メンバー参加ということで、期待して聞いたのだが、音的にはやっぱりカントリーだった。うーん。こういうのってどう評価すればいいんだろう。素養不足を実感してしまう。

Neal Casal / Rain, Wind and Speed (Buy or Die/BOD96012)

Zooの「Fade Away Diamond Time」(95年)に続く第2弾は、インディーからのアコースティック・スタジオ・ライブ集。なんでこうなったかは自筆のライナーに詳しく書いてある。それによるとツアー、契約の打ち切りが昨年の末にあったそうで、しばらく落ち込んだ後、とにかくレコーディングをしようとバンド・メンバーと今年2月に集まり、数曲録音したところ、何か満足できない。音楽的真実に近づくにはやっぱりアコースティックだと思いつき、生演奏に切り替えて、たったの5日間で録り終えたのが本作なのだそうだ。地味ではあるが、前向きで真摯な歌がそろい、かつてのジャクソン・ブラウンを思わせる、誠実なアルバムとなっている。

The Handsome Family / Milk and Scissors (Carrot Top/SAKI-011)

古くてぼろぼろの帆船が、海上ではなく、深海をゆったり進んでいる...。シカゴの脱力カントリー3人組による2作目は、珍しくそんな印象批評的書き出しを僕に要請する。何と言っていいか、実に不思議な魅力を持った佳作である。音の骨格こそカントリー(+ノイジーなギター)だが、カテゴリーに収まりきらない異質性が彼らをはっきりと外部に押し出している。例えば2曲目の歌詞を見てみよう。「胃の中に住む千歳の魚」(しかもミンクを着こみ、歯をシェリー酒の中に浮かべている!?)に始まり、「指の中のガス欠車」、「ストーブに頭を突っ込んだ美女」など、前衛詩風のイメージを駆使して、何も育てず、何も作り出さない、現代の閉塞状況(なんだと思うよ)を象徴的に描き出している。こういった幻想と混沌を、半分壊れたようなカントリー・サウンドにのせて展開するところが何ともユニークだ。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、アス・ポニーズ、スカッド・マウンテン・ボーイズ、ペイヴメントあたりのファンは必聴。特に歌詞に注意すること。

The Scott Laurent Band / Caposville (Oar Fin/OAR96042-3)

打って変わって、こちらはさわやかな1枚。ジェイホークス、ハニードッグス、マーティン・ゼラーらに続く、ミネアポリス新世代の一人、スコット・ローレント率いる5人組のデビュー作である。期待を裏切らない、オーソッドクスなアメリカン・ロックが楽しめる。ちょっと手堅くまとめすぎたきらいはあるが、今後に期待できそう。


8/6

Steve Wynn / Melting in the Dark (Zero Hour/ZHD1160)

「Magnet」誌24号の最新インタビューによると、いつの間にかLAからニューヨークに移住し、今や身も心もすっかりニューヨーカーであるというスティーヴ・ウィン。何でも姉(妹?)のボーイフレンドがNYにアパートを持っていて、それを又貸ししてくれたことが直接のきっかけのようだが、最初にNYを訪れたとき(81年)からずっとNYに住みたいと思っていたそうだ。以前からルー・リード好きで知られる彼のことだから、まあ、納得できる話ではある。この新作がボストンのオルタナ・バンドComeメンバーと一緒に作られることになったのも、そんな理由があったわけだ。ソロとしては通算5作目になる新作は、初期ドリーム・シンジケートを思い出させるノイジーでアグレッシヴなサウンドが中心で、以前から予告されていた通り、原点回帰的な1枚と言えるだろう。


8/4

Marshall Crenshaw / Miracle of Science (Razor & Tie/RT2823-2)

断言してしまおう。5年ぶり、待望の新作は期待を上回る傑作だ。初期のはじけるようなポップ・アプローチや前作「Life's Too Short」にあったハードなギター・サウンドはここにはないが、年相応の成熟、過去の遺産に対するリスペクト、確かな技術に支えられた緻密な音作り、おそらくここ10年間では他に並ぶものがないメロディ・メイカーとしての資質――そういった要素が見事に溶け合い、さながら上質のワインのように、清冽で深みのある味わいを醸し出している。来日公演でも披露していた2の軽快なテンポに心浮き立たない人はいないだろうし、優しく甘いメロディ・ラインに一種の気品さえ感じさせる6、12にいたっては、ただうっとりと酔いしれるしかない。ブラッド・ジョーンズ、アンディ・ヨーク、ビル・ロイド、グレッグ・リーズらお馴染みの才人達と作り上げた、まさに職人芸の絶品。お薦めです。


7/24

Three Hour Tour / 1969 (Parasol/CD-011)

 シングルを集めた9曲入り編集盤。初期は結構Choo Choo Train色が濃かったことがわかる。もろビートルズ風の3曲目が気に入った。

Hispana Tim / VIVA (Parasol/CD-015)

 元Girl of the Worldメンバーが結成した新バンド。思ったほど悪くない。

Weird Summer / In Search of (Parasol/CD-017)

 バーズというか、フォーク・ロックというか、ルーツ・ロックというか、そういった要素が微妙に入ってきて、かなり充実した1枚に仕上がっている。今までの中では一番好き。

Supperbuzz / Three Mil Thick (Parasol/CD-022)

 Brian Leachの新バンド。といってもベースのGreg ManuelはLast Gentlemenのメンバーであり、1曲目あたりのサイケ色はもろLast Gentlemenで、ちょっと不安になる。まあ、通して聞けば割とシンプルな作りで一安心。同じ失敗を繰り返さない姿勢は立派だと思う。