最新レビュー


7/5

Kris McKay/ Things That Show (Shanachie/8020)

オースティンの女性アーティスト(ex-Wild Seeds)による待望の2作目。前作「What Love Endures」(90年/Arista)でもJon Dee Graham, David Halley, John Hiattら優れたライターの曲を取り上げてきた彼女ですが、今回もまず選曲の妙にうならされます。例えば3曲目のサン・ヴォルト "Tear Stained Eye"、4曲目のマシュー・スウィート "How Cool" (「Earth」収録)、7曲目のマイケル・ホール "Baby You Scare Me" (「Love Is Murder」で彼女自身がリード・ヴォーカルをとっていた曲)、11曲目のジョー・キャロル・ピアース"Loose Diamond"など、いずれも力強く繊細な歌声により、見事に自分の作品として歌いこなしています。プロデュースはイアン・マシューズやハミルトン・プールでお馴染みのマーク・ホールマン(演奏にも全面参加)。ゲストにマシュー・スウィート、グレッグ・リーズ、リッチ・ブラザートン、イアン・マシューズ等を迎え、アルバム全体がサイローズのManuel Verzosa(93年に交通事故で他界)に捧げられた、フォーキーな魅力あふれる1枚。


7/4

スウェーデンのSound AsleepからCD4枚とEP1枚が届く。レーベル主宰のJerker Emanuelson氏の手紙付き。jem4号の「Hit the Hay Vol.1」レビューを見たそうで(僕は送ってない。誰かが送ったんでしょう。)、「日本にまでうちの作品が出回っているのは大変喜ばしいことだ。最新リリース作品を送るので、是非またレビューしてほしい」との内容だった。何て親切なレーベル! 4枚中3枚は既に入手済みだったが、そんなことはまあいい。Jerker氏は立派な人物だ。次号が出るまでにはまだ少し時間があるので、代わりにここでレビューしてしまおう。

Tim Carroll/ Good Rock from Bad (Sound Asleep/ZZZ04)

現在はナッシュビルで活動している元Blue Chieftains (NYのネオ・カントリー・バンド)リーダーによる7曲入りCDEP。以前出ていたカセットとは1曲ダブるだけで、ほとんど新曲の模様。いかにも彼らしいほのぼのカントリーが楽しめます。

The Phenomenal Cats/ Seagirl and 5 Other Dogs (Sound Asleep/ZAX200)

「Hit the Hay Vol.1」に曲を提供していたKeith KlingensmithとChris Richardsの2人(どちらも元Hippodrome)による新バンド。6曲入りCDEP。ミシガン州デトロイト出身の彼らですが、デトロイトのイメージとは全く逆の、さわやかなパワー・ポップを聞かせてくれます。

Bill Lloyd/ Confidence Is High (Sound Asleep/ZZZ02)

昨年リリースされた5曲入りCDEP。1、2はフックのきいたメロディアス・ポップで期待を裏切らない出来。3はMarvinとの共作で、ちょっと渋め。短いインストの4を挟んで5はハード・ロック風の異色作。最後の6は弾き語り風の小品。

Jamie Hoover/ Nobody Wins This Time (Sound Asleep/ZAX100)

Spongetonesメンバーによる7"single。何とA,B面共にRobert Crenshawとの共作で、B面ではDon Dixonがベースを弾いている。A面はゆったりとしたテンポの美しいポップ・ソングで、ドリーミィなコーラスが効果的。


6/25

V.A./ Hit the Hay Vol.2 (Sound Asleep/ZZZ03)

「Yellow Pills」と並ぶ、米パワー・ポップ/ルーツ・ロック・ファン必聴の優良コンピレーション第2弾。 Brad Jones, Swinger, SwaraysのGingerトリオに加えて、Charie Chesterman, Spongetones, Planet 10, 5 Chinese Brothers, Gregg Swann, Hank McCoy & The Dead Ringersなどなど相変わらず凄い面子。今回のめっけものはずばりKyle Abernathieでしょう。テキサスの人で、2枚CDを出しているらしいのですが、詳細は不明。何の変哲もないのびのびとしたギター・ポップだけど、好みです。あとはRobert Crenshawの曲(Jamie Hooverプロデュース)が兄貴(もちろんマーシャル・クレンショウのこと)ゆずりのセンスで聴かせます。(ほんとにそっくり!)

Chris Von Sneidern/ Go! (Mod Lang/003)

シスコきってのポップ・アーティスト、3枚目のソロはカリフォルニアのレーベルに移籍しての1作目となりました。全11曲38分という短さにもかかわらず、充実感みなぎる佳作。コンパクトにまとまっていて、1曲1曲がよりシャープに感じられます。特にアップテンポの4曲目と美しいワルツの10曲目は最高。Richard X. Heymanと組んだと伝えられる次作にも期待。

Swinger/ Half Day Road (Ginger/GR1002)

Brad JonesでスタートしたシカゴのGinger Record第二弾。実はGingerの元締めって、DangtripperのDoug Robersonだったんですね。Dougがプロデュースを手がけた本作は、いかにも彼の好きそうな中期ビートルズの匂いを匂いを漂わせつつ、さわやかテイストも加味した極上ポップ満載の傑作。ビートの効いた5(「Hit The Hay」に収録)とほのぼのカントリー風の7がよい。第三弾として、Doug自身の新バンドSwaraysが予定されているとか。

Kenny Howes/ Kenny Howes' Second Albums (AAJ/102)

1stは以前レイルで買って、結構愛聴した記憶があります。V.Crush風ギター・ポップを基調に、結構多彩な曲調が楽しめた1stでしたが、今回はそのマニアぶりに拍車がかかり、彼なりにポップのルーツを掘り下げた作りになっています。一曲目は意表をつくSpongetones風マージー・ビートで幕を開け、本領発揮ラウド・ギター・ポップの2、ジャングル・ビートの3と続き、大笑いのパロディ "(Gonna See)Cheap Trick"(ドリーム・ポリス!)、スニーチズでもお馴染み、レフトバンクの"She May Call You Up Tonight"など、やりたい放題の14曲。しかも終わった後には延々とラジオ・ライブやデモを模したボーナス・トラックが続き、ビートルズ"Norwegian Wood"やポウジーズ"Flavor of the Month"、フー"The Kids Are Alright"など新旧のカヴァーが楽しめます。


5/15

Syd Straw「War And Peace」(Capricorn/314 532 457-2)

実に7年ぶり、セルフ・プロデュースによる待望の2枚目。まだざっと聞いただけですが、これはよい!バックは噂通りSkeletonsメンバー全員が担当しており、彼らのルーツ色が1曲1曲を丁寧に彩っているばかりか、全曲オリジナルで固めたSydの曲(合作3曲あり)もバンドの魅力を上手く引き出すようなポップ志向に満ちています。特に5曲目の"CBGB's"(名曲!)はタイトル通り、CBGB'sで10年前に出会ったバンドのメンバーに対して「覚えてる?」と語りかけるところから始まる内容で、ちょっと泣けます。


5/7

Paul Westerberg / Eventually (Reprise/9362-46251-2)

連休前にテープを入手して、結構聞き込みました。確かにホーンを導入した9やピアノ伴奏の12など、意外な感じがしたのは確かです。以前のドライブ感があるのは5曲目の"You've Had It With You"くらいなんで、ちょっとリプレイスメンツのファンにはつらいかも。でも、3曲目の"Love Untold"は名曲です! この1曲でアルバム全てを肯定してもいい位気に入ってしまいました。"語られぬ愛"だなんて、まずタイトルがかっこいいし、哀愁味のあるメロディといつもの渋い声が上手くマッチしています。あとは、8のメロディが"Merry Go Round"そっくりで笑えました。


4/2

Tommy Keene「Ten Years After」(Matador/OLE 177-2)

まともなフル・アルバム新作としては7年ぶりになるのかな? その間、MtadorからのEPやAliasからの2枚があったのですが、Alias作は正直言ってお蔵出しの感じがあって素直に喜べないところもありました。しかし。この新作はそんなファンの欲求不満を一気に解消する傑作です。プロデュースは自らも優れたアルバムを2枚Repriseから出しているAdam Schmitt! 以前にも一緒にツアーをした仲でもあり、このコンビで悪いわけがなく、よりラウドになったギター、より磨きのかかったメロディ、よりクリアなサウンド、どこを取っても申し分のないポップ・アルバムに仕上がっています。ベスト・トラックは疾走感あふれる1と6。もちろんスローな4、5も好きだし、ラスト曲「ライトが消える前に」での遊び心も笑えますね。ゲストも充実しており、Wilco(およびTitanic Love Affair)のJay Bennettが2曲、元Choo Choo Train→dB'sのEric Petersonも「Driving into The Sun」に続いて1曲、ギターを弾いてます。ティーンエイジ・ファンクラブ、ヴェルヴェット・クラッシュ、ポウジーズ、レッド・クロスなどのファンにも大推薦。ヨ・ラ・テンゴも出たことだし、同じMatadorのよしみでアポロンさん。是非国内盤を出しましょう!