アムレズについてその2!!!

「あ、虻のしっぽに藁しべが・・・!!!」

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アムレズAmlethが、幼なじみの女の子といかにして恋を成就させたか?

 

「恋を成就」! なんて、とっても、ロマンチック!! などと思っては

となるのがオチかしら?

 

なお、この話題は、eikaさん御主催の神話の森の掲示板から拝借いたしました。 ここに、謹んで、その掲示板の皆様に感謝申し上げます。
 

アムレズが、阿呆を装っていたとき、周りのものは一人の女性を送ります。

彼女はアムレズとともに育てられた女性。シュレーダーという学者などは
アムレズと彼女とに、ヴァン神族の間での習慣であった兄妹の近親相姦結婚
の名残をみたりしていますけれど、それは少々深読みしすぎでしょう。
 
むしろ、北欧に昔から見られた恋人同士の営みと考えた方がよいのでしょう。
 
さて、アムレズの義兄弟は、アムレズの芝居に疑いを持ち、実は正気の侭
なのだと思っています。そして、藁しべを拾うと、そこにいた虻(あぶ)の
お尻にむすびつけ、アムレズの所に追い立てるのでした。それを見たアムレズ
は、自分への奸計に気をつけなければならない、と気がつくのです。
 
なぜ、虻のおしりに藁しべがついていて、「奸計に気をつけなければならない」
という警告だとわかったのかしら? 
 
みんながそう不思議に思ってます!!  
ケンプ・マローンは、その義兄弟の名前が Vifill すなわち、甲虫の一種だと
いう意味なので、そこからわかったと言っています。
 
バローは、お尻に針があるぞ、という意味だと解釈しています。
だから「その女と寝るな!」という意味なのだというのです。
 
もっと説得力のある説は、オルリクという学者のものです。
 
この記述は文字通り「頴尻」(頴(えい=もみがら)をつけたお尻)
という意味だろう、というのです。
デンマーク語では avnebag といいます。この単語は、畑から
麦を盗み、それを服の下、あるいはズボンの中に隠した泥棒のことを表す
言葉なのです。
 
 
この単語はヴァルデマール王の法典(シェランスケ・ローヴェ『シェランの法典』3,12)
に見られます。この罪は極刑が課せられたそうです。
 
したがって、この警告は、「アムレズはこのわらを盗んだ盗賊の
ように注意深くして、他人に見られることを避けなければなら
ないぞ。というのもお前を見張っていようとする者がいるはず
だからだ」という意味になるだろうというのです。
 
この後、警告を与えてくれた義兄弟に感謝の意を表すために、「何か藁を
運ぶものが、うしろの方に藁しべをつけながら羽をひらひらさせ
ながら飛んでくるのを見た(谷口訳)」と言って、自分が警告をきちん
と理解したことを示そうとするのです。が、コレを聞いて周りの人たちは大
笑いをするわけです。
 
これは、藁を運ぶもの、と谷口幸男氏が訳したものが、「藁のマットをつけた
ものが」という解釈もできるらしいので、「お尻に藁のマットレスをつけたもの、
つまり、男と寝ようとすぐにでも用意の出来た女が、自分のところに飛んでくる
のを見た」とも解釈できるので笑ったのか、それとも、「本当に、この藁を隠した
罪人が自分の所へやってくるのを見た」という状況が面白くて笑ったのか、その
どちらかのために笑ったのでしょう。
 
そして、ボクが典拠としたHilda Ellis Davidsonの解釈では、後者ととっているようです。
つまり、そんな極刑を受けるような罪人がアムレズの前に現れた、という状況が
彼らの笑いを誘ったのでしょう。
 
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