ウプサラ大学構内 U940

 「(手の?)ギルラウグ(?)、イーグッルとソルゲイルは自分たちの父ケティルファストルを偲んで石碑を書かせた。魂を救い給え。オーピルがルーンを監修した

と、ルーン文字で刻まれています。

 

11世紀のルーン石碑です。

このルーン石碑に関する説明プレートには「このルーン石碑の碑文は、未熟な彫り師によってデザインされ、彫られている。

この彫り師は、語法的誤りを犯しており、装飾も上手くなく、非線対称のデザインとなっている。

というルーン文字の組み合わせをどのように解釈するべきかは不明である」と書かれていました。

 

「kilauh hãnt | ihul / auk / þurkiR / litu / rita / stain . iftiR / kitilfastr / faþur / s[i]n / hialbi sal [riþ] runaR / ubiR」

(ルーン碑文写し)

「Gillaug hönd (?) Ígull ok Þorgeir létu rita stein eftir Ketilfast föður sinn. Hjálpi sál. Réð rúnar Öpir.」

(古北欧語標準化形)

・語法上の誤りとは、「亡くなったケティルファストルを偲んで」という部分のことでしょう。主格「Ketilfastr」ではなく対格形「Ketilfast」(ケティルファスト)と書くべきだったのです。中世の北欧で、主格と対格とが混同されたのでしょうか? それとも単なる誤記でしょうか? ちょっと気になるところですね。

・不明部分の四文字については、よくわかりません。とりあえず上記のように「hãnt」としてみましたが、音価の可能性はいろいろです。

「hant」「hænt」「hönt」「gant」「gænt」「gönt」「hand」「hænd」「hönd」などなど。

・ビルギット・ソーヤー博士のカタログに記されている註から察するに、「ギルラウグ」は亡くなったケティルファストルの夫人だったという説もあるようです。その場合は、この四文字は「ギルラウグ」の渾名だった可能性を示唆しています。いずれにせよ、確かなことはわかりませんが。

 

ウップランド・ルーン碑文 U940番

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