戻る

 

古英語名:フローズルフ (OE Hrolðulf;古ノルド語名:フロールヴル・クラキ (ON Hrólfr Kraki);ラテン語名:ロルフォ・クラグ (Rolfo Krag) その他、原典によって多少読み方が異なります。

1. 「挽き臼の歌」Grottasongrから:第22連

「[二人の巨人の娘は、挽き臼で働きながら、フロジ王の運命と彼の子孫の運命を予言する]

さあ、もっと速く挽かせなさい! ユルサの息子 [訳注 フローズルフ]は

ハゥルフダンの死の復讐を フロジにふりかけるでしょう

彼はユルサの息子とも、ユルサの弟とも呼ばれるでしょう

あたしたちは それを知ってるの」

 

 

2. 『レイレ年代記』第四章と第七章より

ヘルギとウルスラ(=ユルサ)の息子、若きフロールフは成長し、たくましく、また勇ましくなった。彼の母のウルスラはいまや未亡人となったので、スウェーデン王のアジスルスと結婚した。アジスルスとの間にはスクルドという名の娘が生まれた。すなわちフロールフにとって彼女は同じ母から生まれた妹ということになる。

・・・(ここで『レイレ年代記』は、スキョルドゥング一族でない二人の王が、スウェーデン王アジスルスによってデンマークに無理矢理押しつけられた旨を語る)

さて、そのラチとスニョーの二人が統治していたとき、ヘルギの息子フロールフ(渾名をクラキといった)は力強く成長し、スニョーが没した後、デーン人達は彼を自分たちの王として選んだ。彼の祖先達と同じように、彼はシェラン島のレズラによく留まっていた。彼は、これまで語ってきたように母ウルスラとアジスルス王との間に生まれた妹のスクルドとともに暮らしていた。フロールフは妹のお付きの女性達が暮らせるようにと、彼女にホルンシェレスと呼ばれる土地を与えた。さらにフロールフはそこにスクルドの名前にちなんだ村を建て、「スクルデレフ」という名でそこは呼ばれた。

その当時、スコーネ地方のヤールに、ゲルマンの血筋のヒヤルワルドという男がいた。フロールフに貢納をおさめていた。ヒヤルワルドはフロールフに使いを出して、妹御のスクルドをもらい受けたいという求婚の申し出をした。フロールフが良い返事をしなかったため、彼女の願いによって、ヒヤルワルドはスクルドをさらい、自分の妻にした。こうして二人はフロールフをどのように殺そうかと計略をたてた。彼が死ねばヒヤルワルドが王国を受け継ぐことになるからだ。そして、しばらく後に、ヒヤルワルドは妻によって扇動されて勇気を出し、軍を組織してシェラン島に向かった;義理の兄のフロールフに贈り物をしようと見せかけながら。夜も明ける頃、彼はフロールフに使いをだして、贈り物を見に出てきませんかと尋ねた。フロールフがやって来ると、そこには贈り物はなく、ただ兵士達だけが待ち伏せていた。こうしてフロールフは圧倒的な軍によって殺された。シェラン島とスコーネの人々はヒヤルワルドを自分たちの王にした。しかしそれはほんの短い間だけであった。彼は朝からお昼までの間、王を名乗った。というのは、その時、ハグバルドの弟でハムンドの息子のアキがヒヤルワルドを殺し、デーン人の王となったからだ。

『スキョルドゥンガ・サが』(1200年頃)から、ヨゥンの息子アルングリームル(1596年)による抜粋より第12,13章

ロルフォ(=フロールフ)はクラキという渾名で、つまりはデンマーク語でクラグのことである(この語は我々の知るウミガラスを意味する)。彼はヘルゴの息子であり、また孫であるという関係で生まれた。彼は八歳の時に国を受け継いだ。しばらくすると、ロルフォの叔父であるローアス(=フロースガール)が自分の従兄達すなわち、インギャルドゥスの息子レァーレクスとフロドによって殺された。ロルフォ・クラキは、その権力と富と勇気と謙遜さと驚くばかりの寛大さ、さらに長身と痩躯によって、王たちの中で最も有名な彼について次のような話がある。ある日、ウォッゲルスという人物の訪問を受けた。ウォッゲルスはこの有名な王を見たいという好奇心に捕らわれ、心も焼けこげるほどだったのだ。そのウォッゲルスが王にじっと見つめていると、ロルフォ王は、私から何か欲しいものがあるか、と尋ねた。すると相手は、目の前にいるのは、かの有名なデンマークの王ロルフォその人であるか、と訊いた。すると王は、自分はそう呼ばれているのは本当だ、と答える。

ウォッゲルスは叫んだ「なんと噂とは空々しいものか!真実と異なっていることか!」と。「私はこれまで王様というものは、その内なる才と同じく、その肉体も天からの恵みに満ち、他のすべての人間よりも優れいているものだと思っていた。だが、王というよりもカラスと呼んだほうがずっと本当ではないか!」

王は答えた「この呼び名を与えてくれるにあたって、そなたはどのような贈り物を私に与えてくれるつもりか?」(というのも、呼び名を与える時には贈り物を携えるのが習慣だったからである)

「王よ、私はそれにふさわしい贈り物は持ってはおりません」とウォッゲルスは答えた。

「それならば」と王は答えた「我々のうちのどちらかがそれに対する返礼を与えるべきであろう」そういうと、王はウォッゲルスに、贈り物として、手に付けていた黄金の環を与えた。

ウォッゲルスはそれを受け取り、感謝して言った「王よ、もしあなたが剣に倒れることが運命だというのであれば、私がいつかあなたの死の仇を討つことを神々に誓いましょう。」

王は笑っていった「ウォッゲルスを幸せにするためには、代価は安いものだ」と。(この言い回しは、誰かが小さな贈り物を与えるとき、あたかもそれが大きな贈り物であるかのように振る舞う時に用いられる、格言となった)

トップへ