体得したモノ
−「化石探し」−


基本の心

 まず大きなポイントは、「掘る」のではなく「探して歩き回る」ことが化石探しの第一歩だという点です。 そしてどうやら単なるモンゴル砂漠のローカルルールというわけでもなさそうです。 特に、ツアーで訪れたような「化石が出てくるのは分かっている」という土地では、 ただやみくもに掘って化石にぶちあたろうなどとも考えがちですが、実は間違いなのです。
 自然の風化によって、その一部が地表に出てきている化石を見つける「作業」が大事です。 要は、「せまく深く」ではなく「広く浅く」探し、見つけてから初めて「掘る」のが正義です。
(などと偉そうに言ってますが、ツアー中の自分も「深く掘りたがる」タイプでした。 なんとなく、「あと少し土をかけばそこに化石があるかも」という根拠ナシ高揚感につき動かされてしまいました…。 頭で分かっていても体はなかなか…)


まぎらわしいもの

 さてここで、モンゴルローカルかもしれないけれど、このツアーでの化石探しのなかで化石とまぎらわしくて、 興奮と落胆の立役者となったものをいくつかまとめてみました。

・現生動物の骨:
 まあ当然ながら、「骨」なので、実にいい形をして地表に落ちているので悩ましさは抜群です。 素手で触れば、冷たさや重さなどから化石じゃないかなと分かるけれども、 小さかったり軍手をしていたりすると、もォ。
 この道のプロは、化石を見慣れている場数ゆえか、見ただけで簡単に区別しますが。

・切開質の土:
 表面をハケなどではいていると、突然白いものが地中から出てきて、心ざわめきます。 でも非常に柔らかいので、骨でないことは分かりやすいけど、なんの脈絡もなく出てくることが多いのでおどろかされます。

・草の根っこ:
 根そのものもまぎらわしいけれど、砂質層では根の周辺が「それっぽい」茶色や黒色に変色していることがある。 実にまぎらわしいけれど、根の近くはハケでもどんどん削れるほど土がもろくなっているのでバレるのも早いです。

・砂+鉄、の球:
 層状に割れる硬い岩の層でよく見かけました。殻の中に赤茶色の砂が入ったボールのような構造をしています。 岩を割ったときにこれの断面が見えると、「貝か、卵か、骨か」という気にさせられる逸品です。


「化石」とただの「石」を一発で見分けるプロの姿

 地中に半分埋まった状態でも、カギ針状の道具で引っかいたりたたいたりして、即座に判別します。 どうやら音やひっかいたときの感触で分かるみたいです。さすが。

 モンゴル語で石のことを「チョロ」といいます。
 地中から掘り出したものや、地中から一部がのぞいているものを見せて、化石かどうかをたずねます。 「チョロ」と言われると、さっきまでこわごわと扱っていたものの価値は急落。その場に捨てたり容赦なく乱暴に掘り起こしたりしたものです。

 特に、すでに掘り出されていて、地中にないもののときの判定はすばやくて、一瞥しただけで結果が下るので、なかなかスリリングです。

 また、こうした化石掘り職人のスタッフは「この地方から出る化石の種類」「この発掘ポイントの地層の年代(以前に見つかった化石からの概算)」 によってあらかじめある程度は、出てくる生物の種類を限定して頭に入れているようです。 さらに、フィールドノート(その地方で出たことのある化石のたくさんの図版のコピーを束ねたもの)も持っているので、化石の鑑定は迅速で迷いがありません。 見つけた化石がたとえ一部の破片でも、「何の」「どこの」骨なのかをすぐに判別します。
 いやホント、専門家は違います。


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Last update at 1998/06/30