聴覚に障害がある人に写真の撮り方を教える「県ろう者写真倶楽部」を熊
本市の写真家吉岡功治(58)さんが開いている。「カメラを通じて社会に目を
開いてほしい」との思いで、部員として参加する7人とともに自然風景や史
跡にレンズを向ける。部員たちは全国聴覚障害者写真コンテスト(全日本ろ
うあ連盟主催)への出品をめざしている。

 1月下旬の撮影会は熊本城。「天気がいいので石垣が映えます。光と影を
うまく利用してください」と参加した6人に語りかけると、原田慶子さんが
手話で通訳した。
 クスノキの影が映える石垣や、石垣の斜線と青空に浮かぶ雲に吉岡さんが
レンズを向けると、何人かが後ろで同じようにカメラを構える。吉岡さんは
写真をデジタルカメラの画面で見て「もっと明るい設定にしたほうがいい」
「主役は一つ。欲張っちゃだめ」などと指導した。
 倶楽部は07年9月、吉岡さんが財団法人県ろう者福祉協議会に提案し、協
会機関紙で部員を募集して発足した。ボランティアで月1回、撮影会や品評
会を開き指導する。荒尾市の旧三井三池炭鉱・万田抗跡や菊池渓谷、大分県
竹田市の白水の滝などを訪れた。
 一度決めた対象から離れない執着心。目に込めた力。吉岡さんが言葉を発
するたび、じっと口元を見つめて理解しようとする姿に「『見る』行為にと
りわけ懸命な彼らなら、きっといい写真を撮れる」と感じる。
 吉岡さんは約10年前、知的障害者施設から成人式の記念撮影を頼まれた。
重度の障害があり全員が寮生活の入所者たちは、自分たちの晴れ着の写真に
声を上げて喜んだ。「わずかでも写真が人に生きる力を与えられる。そのこ
とを多くの人に伝えたい」
 部員の渡邊雅信さん(38)は、週末は飛行機と風景を絡めた写真を撮りに出
かけるといい、「カメラが生活の一部」。佐藤民樹さん(65)は昨年の全国コ
ンテストに阿蘇のつららの写真を出し、約150人中2位の準特選になった。
「川や滝、動物を撮りに妻と外出する機会が増え、世界が広がった。写真を
撮るのに耳が聞こえないことは不利にならない」と語る。
 今年のコンテストには「腕試しをしたい」と部員全員が出品し、入選作は
6月に茨城県である全国ろうあ者大会で展示される。吉岡さんは「写真は常
に現実の対象と向き合う。発見や出会いがある」と話す。今月28日には熊本
市の県聴覚障害者情報提供センターで品評会もある。問い合わせは県ろう者
福祉協会(096-383-5587 ファックス096-384-5937)へ。

※朝日新聞掲載写真を複写しています

※2009年2月24日朝日新聞掲載