桜百句
1993年は例のない寒い年でした。桜はいつまでもみしみしと咲きつづけ、
桜百句が出来上がるまで待っていてくれました。その夏は異常な冷夏、
米不足に悩んだ年でした。
1994年は、一転して猛暑。そして、1995年は大地震に見舞われました。
1993年のあの桜の長さは何を予言していたのでしょうか。
- 雷鳴の青き一瞬花の闇
- チョゴリ舞ふ青山墓地の花見かな
- 西洋の老婆おりくる花の坂
- ひと泳ぎして学校の桜かな
- 花筏浮かぶプ−ルにハイダイブ
- 千姫や姫路の城の花爛漫
- 朝出でて夕べ我が家の桜かな
- 歯ブラシをつかう窓にも花の散る
- 夕靄の金色を帯び花の雲
- ホットケ−キたべてなにやら花の午後
- 花冷えや予備校資金用意して
- 花冷えの芦屋の町も変りけり
- 隣りから竹輪のとどく花見かな
- 花妖艶その辺りから胴間声
- 花びらの風の箒に掃かれゐる
- 見らるるを意識せず咲く花一樹
- 登りつめ行止まりけり花吹雪
- 金婚も銀婚もゐて花衣
- 花便りあの子は懐妊せしといふ
- 雨戸繰る二階のありし花の雲
- 潮の香の雨にまじりて花催
- 陣取りの花の筵を敷く係
- 乱雲のにほひいろいろ八重桜
- 嫉妬かもしれぬ心に花三分
- 留守番の母の嘆きや花日和
- 朝桜お菓子のすきな人がゐて
- 花の雨早仕舞する土産売り
- 道を掃くおばさん鼻歌朝桜
- 朝桜学童はまだ来てません
- ボヘミアの玻璃の器に山桜
- 象も目を細めてゐたる花の風
- 花の庭たま打ち返す響きかな
- 裏山に隠されてゐし桜花
- 花冷えの座を半ばにて帰りけり
- 花人の俺ポエットよポエットと
- 夜桜やソプラノ降らす窓のあり
- 花疲れ陀羅尼助丸よう効いて
- アフリカに赴任する友花の駅
- 忙しや花あることを忘れゐき
- 新学期桜の観察理科その2
- 花の土手キラリと水の光りけり
- 制服も靴も大きめ花の下
- 如月の望月の夜の花の宴
- 花の灯は美術教師が造りけり
- 焼肉の煙目にしむ花の宴
- 来てみれば花のトンネル失せてをり
- 雪焼けの教師柔和に花のした
- 銀いろに輝く海や朝桜
- 花そしてまた花楽し電車かな
- な蹂みそ小暗き径の花の屑
- 笑いあふ目くそ鼻くそ花のした
- 花の磴おりれば平内さんの家
- 一塁に走る女生徒花明かり
- 花の降る独身寮の昼下がり
- 朝桜ブブカのごとく跳ぶ人も
- 夕桜瞼重たくしもぶくれ
- 雨上がり花のほてりの冷まされて
- 天と地に腕のばしたる大桜
- 裏山に雪を降らせて花の雲
- 花追ふて漫歩二漫歩三漫歩
- 夜桜や雨も静かに照らさるる
- 洋ネコと和猫の雑種遅桜
- 振り返り目の会ひたれば花を賞む
- つくづくとねむたき昼や花疲れ
- 礼言ふて涙や花のしらしらと
- 風ひゅうと花と小鳥を吹きちらし
- 花びらを追ひかけて風いつまでも
- 思い出し笑うことなど夕桜
- この道は花ひとつなし素っ気なし
- みしみしと花の重さに揺れる枝
- 花びらの風の形にくるくると
- 花の駅阪急電車とまりけり
- 花を背に魚釣る人や桂川
- はらはらと枝垂桜の散るなかで
- 懐かしく切なき花の頃となり
- あだし野のさいの河原や花曇り
- 金色に睫の染まり夕桜
- 嵐山来て頬張れる桜餅
- 白鷺の曼陀羅山の花に来て
- 天龍寺掲諦掲諦花の冷え
- 近道や湯屋の煙突朝桜
- 花に酔ひ迷ひて戻るもとの道
- けさ晴れてこの海深く桜鯛
- かくれんぼする子桜によっといで
- えんぴつを置く良き音のして花盛り
- B組の窓は満開桜色
- 散りはじめどこかが楽に花疲れ
- 花の雨ちゃいろくなったクリステイ−
- 花吹雪あの子は元気にしてるかな
- 粛粛と枝垂桜に絹の雨
- 花びらを輪まわしにして遊ぶ風
- 花びらのあしあと厨の戸口まで
- 近づけるうれしきことや八重桜
- 関ケ原雲湧き出でて夕桜
- 桜蕊ふるキスシーンに咳の出て
- 畠中の石の鳥居や遅桜
- じいちゃんと花浴びているベンチかな
- 退屈な会議桜の蕊の降る
- 花は葉に少年と犬ころと
- 葉桜の間で消えしシャボン玉
