
コステロの自作カヴァーを含む最新作。ブロドスキーカルテットとのコラボレーション、アトラクションズとの久々の合体、幻の全曲カヴァーアルバムの発売ときて、ここ3・4年でおそらく最も記号性の少ない作品だろう。事実、このアルバムは地味である。このアルバムのリリースのされ方が地味なら、一聴した印象も地味で、おまけにチャート・アクションまで地味だった。僕は、毎週UKのアルバムとシングルのチャートをメールでもらっているが、コステロの名前は全く見あたらなかった。まさか、まだイギリスでアルバムが発売されていないというわけではないだろうから、多分、売れてないということなのだろう。また、久しぶりの「elvis costello & the attractions」名義の作品なのに、まるでそれが当然のことであるかのように、全然話題にならなかった。だが、この作品は傑作である。まず最初の「the other end of telescope」を聴いてほしい。いつになくヴォーカルが前に出ているアレンジは、ジェフ・エメリックのプロデュースのせいだろうか、とにかくヴォーカルの細かいニュアンスまで余すことなく伝えていて、ホントに素晴らしい。コステロの声が好きな人(そんなにいないのかもしれないけど)だったら間違いなく感動する出来だ。アルバムを通して感じられるのは、一音一音を本当に大切に扱っているコステロの姿である(もっともこれはプロデューサーの資質が現れたものなのかもしれないが)。僕は、コステロはアップやバラードよりもミドルの曲に一番資質が現れると思っているが、このアルバムに関してはバラードが出色の出来。文句なしの良質アルバムに仕上がっている。
これは熱心なファンには関係ない(僕も熱心なファンですが)ことなのかもしれないが、僕には、でも、と思ってしまう部分もある。というのは、このアルバムが売れるとはちょっと僕には考えられないからだ。コステロ自身にも、どうもそこの部分については達観してしまったようなフシが見受けられる。そりゃぁ、このまま成熟したアーティストとして、優秀なアルバムを量産していくというのもアリだとは思うし、その方向でも充分、僕は彼を大好きでいられるだろうが、少し釈然としないものが残ってしまうだろう。僕は、彼にもっともっと売れてほしいのだ。この言い方が下品なら別の言い方に変えよう。彼のことをもっともっと多くの人に知ってもらいたいのだ。そりゃぁ、彼は日本では人気があるし、ミスチルやL-Rも頑張ってはいるが(笑)、まだまだ僕は不満なのだ。今のままでは、なんか終わってしまったアーティストみたいではないか(スティングとかね)。せめて、アルバムをだすときにPAUL WELLERみたいに騒がれてほしい。そのポテンシャルは確実に持っているし、発表されるアルバムも優秀だ。しかしその作品が示す作家性故、ポップ産業のフィールドでは語りづらくなってきている。どうも僕にはそこに歯がゆさが残ってしまうのだ。もう少し下世話で速効性があって、確信犯的にポップ・フィールドにターゲットを絞った同時代性の感じられる作品が次に続いて、僕の心配が杞憂に終わってくれることを切に期待する。まだまだ、彼には黄金期が残されているように思うのだ。この状態に諦めてもらっちゃあ、こっちが困るよ。