
1977年発表のエルヴィス・コステロのあまりにも有名な、記念すべきデビュー・アルバム。パンクの文脈で語られることの多い彼のデビュー作だが、今聴くとパンクというのはあまり感じない。どちらかというと、英国の伝統に根ざしたビート・ロックとほのかなロカビリー・カントリー臭が僕には感じられるんだけど。ただ、歌詞に関してはたしかに、パンク、というかひねくれたところがある。とくに「BLAME IT ON CAIN」の「俺を責めるな、ケインを責めろ。ホントは誰のせいでもないんだけど。でも俺達、誰か火炙りにする奴が必要なのさ」とか「LESS THAN ZERO」の「なにもかもがゼロ以下の世の中じゃんか」というラインなんかは、そのひねくれ根性が爆裂している。後にコステロは、「初期のアルバムには、世間で言う「軟弱」だとか、「負け犬」的な要素をたっぷり盛り込んだんだけど、それってパロディみたいなもんで、僕自身にとっては笑える部分が多かったんだ」なんて言っているが、たとえパロディだとしてもここまでいってくれると、ちょっと嬉しい。今作には、当人気投票でもダントツの人気を誇る名曲「ALISON」も収録。確か僕はワーナー以前の彼にはこれで入門しました。バックについてるのはまだATTRACTIONSではなく、急遽呼び寄せられた、後に「ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース」になることになるクローヴァーズ。そのため、バンド・サウンドがこのアルバムでは確立されてない。しかしだからこそ、このアルバムでは等身大の「素材としてのコステロ」が光輝いている。

THIS YEAR'S MODEL (DPAM2)
前のアルバムは急造のバック・バンドで録られたものだけに、バンド・サウンドは確立されておらず、アンサンブルという点では取り立ててどうこう言えるレベルではなかった(もちろんだからこそ、デビュー作にふさわしく、素のコステロが写し出されていたのだが)が、このアルバムは違う。番号的に後になるから、ここではまだ紹介していないが、「LIVE AT ELMO CAMBO」というライヴ・(ミニ)アルバムもほぼ同時期に録音されている。つまり、それだけライヴをこなして、バンドのサウンドが確立していった時期なんだと思う。ファンの中で鳴っている「ELVIS COSTELLO&THE ATTRACTIONS」の音とは、つまりはこのアルバムの音である。本人は否定していたが、サウンドのヴォキャブラリーがこのアルバムと似ている(曲がある)「BRUTAL YOUTH」と、その時のツアーでこのアルバムの曲から9曲演奏したため、「原点回帰」と騒がれたのもそういうことである。1曲目の「NO ACTION」から、とにかく突っ走る。疾走感あふれるビートに、独特の虚無感を湛えた白目をむいたようなキーボード。サウンドはほぼ完成の域に達している。歌詞はひねくれから更に進み、底意地わりーと感じさせる所まで行っている。コステロの声も、最近の慈しみあふれる味わいとは違い、本当に意気地が悪そうに響いている。ちょっとゴダールなんかの佇まいに似てるかも(顔も似てないですか?)。一般的なそれのイメージとはだいぶ違うが、やはりコステロ史の中では一番パンクなアルバムだろう。コステロはこのセカンド・アルバムでひとつの完成を見た「コステロ・スタイル」を、次作からはやくも(時折回帰を交えつつ)解体していくことになる。