カムチャツカにて水族館向けにオルカ捕獲
(2003/10/10 11/7追補)

2003/9/26、かねてから危惧されていた極東ロシアでの水族館向けのオルカ捕獲が行われ、若いメスのオルカを捕獲。捕獲の巻き添えとして一頭が溺死。10/23前後には、捕獲されたオルカも収容先である黒海の施設で死亡しました。
このことについて、野生オルカの野外研究機関・ORCALAB のWebサイトに30年間オルカの野外研究を続けているポール・スポング博士からのメッセージが掲載されています。
下記は、スポング博士から和訳許可を得てその全文、およびプレスリリースを翻訳したものです。
(訳:Yoshi NAGATSUKA / Paul Spong 和訳承諾済)


オルカラボ・ニュース( 2003 / 10 / 6 )
http://www.orcalab.org/news-archive/captivity/10-06-03.html

ロシアのオルカ捕獲

極東ロシアの海でオルカが捕獲されたことについて、深い遺憾の意とともにお伝えします。
オルカ捕獲が行われたのは、カムチャツカ半島南部、ペトロハバロフスク・カムチャツキーという町に近いアバチャ湾という場所です。
捕獲されたメスのオルカとその家族への影響という面を割り引いても、この捕獲の影響は計り知れないほど重大なものです。
オルカを閉じこめることで成り立っている産業の水槽を、今後十年にもわたって満たすような、オルカ捕獲の新たな局面への扉を開くことになるからです。
今年はロシアの動物商社がオホーツク海でのオルカ捕獲に乗り出してから3年めであり、 さまざまな観点からも、この悲しむべき出来事は予期されざるものでした。彼らが捕獲に失敗し続けてきたことに加え、今年はロシア政府からの捕獲許可の交付も遅れていたのです。
悪天候が今年も再びオルカを捕獲から守ってくれるのではないか、という希望もありました。
ですが、悲しむべき事に、そうはならなかった。

正確な状況は掴めてはいませんが、捕獲者達が、捕らわれたオルカとその家族を恐慌に陥れたことは確かです。捕獲されたメスは、まだ幼い赤ん坊を連れた若い母親で、その赤ん坊は脱出したか逃がされたと聞いています。
それが本当ならば、赤ん坊はかなりの確率で死んでしまうでしょう。
捕獲時、網がからまったまま溺れてしまったオルカもいるそうです。
こうした報告は、初めて聞くものではありません。
捕獲の試みの中、一家の他の個体を殺したり傷を負わせることもあった北西海岸(訳注:北米大陸の)やその他の場所での悲しむべきオルカ捕獲の歴史を、私たちは記憶しているからです。

ロシア政府は今年10頭までのオルカ捕獲を許可しており、
今回の捕獲からの生還者たち、そしてオホーツク海にいる他のオルカの家族は、なおも重大な危険の中に暮らしています。
このようなことが今年、いや永久に起こらないように、私たちは可能なあらゆる努力を払うことを決意します。私たちの願いは、狂気に終止符を打つ世界的な運動に転化するでしょう。
皆さんがそれに参加する方法については、再びこのサイト(オルカラボのWebサイト)をチェックしてみてください。


オルカラボ・ニュース( 2003 / 10/31)
ロシアのオルカ死亡
http://www.orcalab.org/news-archive/captivity/10-31-03.html

ロシアでついに捕獲されてしまった若い雌のオルカが、捕獲後1ヶ月を待たずして死んだことを、きわめて深い悲しみとともにお伝えしなければなりません。
死亡時の状況は不明ですが、ショックや輸送時における体内の損傷による死、あるいは食餌を拒否したことによる餓死が考えられます。
恐らく私たちが彼女の正確な死因を知ることはないでしょうが、このことは、まだ若い生命の不必要な浪費であったことは確かです。
死亡したオルカの年齢は6歳くらいと推測されています。
彼女はロシア東部のカムチャツカ沖で9/26に捕獲され、
Utrish Delphinariumが運営する黒海沿岸の施設に10/5に輸送されました。そして10/23かその近辺に彼女は死にました。
この数週間、ロシアの捕獲者がほかのオルカを追っているのかどうかはわかりません。しかし、捕獲許可は今日(10/31)で満了となります。
これ以上の捕獲が行われないこと、ロシア連邦政府が方針転換し、来年、いや永久に捕獲許可を出さないようにすることを願うのみです。

<オルカラボ プレスリリース>
ロシアのオルカ、捕獲後1ヶ月で死亡

ロシア沿岸で最初に捕獲されたオルカが、捕獲後一ヶ月足らずのうちに死亡した。
死亡時の状況はいまだに不明であり、捕獲されたオルカの収容先であるロシア黒海沿岸Utrish Delphinariumからは、問い合わせに対し返答が無い。

「雌のオルカの死因が、ショック又は輸送時に発生した体内の損傷である可能性は非常に高い。」

オルカについて詳しいカナダ・オルカラボのポール・スポング博士は言う。

「ベルーガでの例から見ると、捕獲した鯨類を輸送する時のロシアでのやりかたは、輸送機の床に放置しそのまま離陸するというものだ。身体の下には何も敷いていない。
オルカの大重量は体内の組織を強く圧迫するため、内臓が損傷し死亡につながったとしても不思議なことではない。」


6歳と推定される若いメスのオルカは、ロシア極東海域のカムチャツカで9/26に捕獲された。
彼女はUtrish Delphinariumにより運営されている黒海の施設10/5に輸送され、その死亡は10/23と考えられている。

「悲しむべき生命の浪費だ。」

サンフランシスコを拠点としているEarth Island Institute海洋哺乳類プロジェクトのアシスタントディレクターであるマーク・バーマンは言う。

「ロシア人はオルカ2頭を捕獲し、その両方が死んだ。これは非道なことだ。
オルカはその家族とともに海洋に属するものだ。飼育環境ではない。
飼育環境は彼らを殺してしまうのだ。」


ロシア連邦政府は、今年10頭のオルカを極東海域で捕獲することを認可している。
認可は10/31をもって満了した。