CANADA

 

 
オルカと人間

 

先住民族の時代

 古来、優雅さと力とを合わせ持つオルカは、この地域に住む先住民族から超自然界に属する存在として畏敬の対象となっていました。彼等はオルカから勇敢さを学び、勇者は死後オルカになると考えていました。彼等はまた、クジラをも攻撃するオルカが決して人間を襲わないことを知っていました。現在でも、付近の町のいたるところに様式化されたオルカのデザインが見られ、トーテムポールには必ずと言っていいほど、彼等のいわば兄弟であるオルカの姿が彫り込まれるなど、人々がオルカからいかに大きな影響を受けてきたのかを随所に見ることができます。

 

 

受難の時代

 19世紀頃から、豊かな漁業、森林資源をめあてにこの地に世界各地から入植者がやってきました。先住民族の智恵に耳を貸さない彼等にとって、オルカは漁業資源を食い荒らす害獣であり、人間をも襲いかねない海の悪魔でした。オルカ駆除のためにマシンガンが設置されたこともありますが、幸い弾丸を発射することはありませんでした。
 時は下り1960年代、今度は、主として米国のマリンランドやシーワールドでのショーのスターとしてこの海域のオルカが捕獲されはじめました。この頃は欧米においてイルカやオルカのショーが盛んになりだした時代であり、1970年、ブリティッシュ・コロンビア州が捕獲を禁止するまでに,60頭以上(全生息数の20%)ものオルカが捕獲されました。野生オルカの寿命は60〜70年ですが、この時代に捕獲されたオルカは天寿を全うすることなく、その後ほとんどが死亡しました。

捕獲から保護へ

 1971年、この海域に住むオルカの生息数と行動を探る研究がマイケル・ビッグ博士を中心に始められ、オルカの総数は300頭前後と、それまで想像されていたよりもはるかに少数であることが明らかとなりました。写真撮影による個体識別を基本とするこの研究は、野生動物の個体識別法としてその後さまざまな動物に適応されるようになり、オルカの社会の変化を追跡調査するために現在も引き続き行われています。
 近年、世界的にイルカ、クジラへの関心が高まり、ジョンストン海峡にもオルカの姿を一目見ようと多くの人が訪れるようになりました。確かに、人々が野生のオルカを直に目にすることは非常に意義があることですが、この数年、増加するウォッチングボートがオルカに与える影響が指摘されており、事実ボートに接触されたオルカが負傷するという事故が何度か発生しています。現在、この地域ではオルカ・ウォッチングを目玉とした地域の活性化とオルカの生活環境の保全を両立することが課題となっています。