ノルウェーで日本向けオルカ捕獲の可能性
(1999年3月10日)

 世界的に水族館や動物園のあり方が見直されている中、日本の名古屋港水族館は2001年の改装オープンを目指して新規にオルカとベルーガ(シロイルカ)、バンドウイルカの展示を計画し世界中から注目されています。特に、オルカの入手方法として野生からの捕獲が危惧されてきましたが、複数のソースからの情報によると、同水族館はノルウェー沿岸、特にロフォーテン諸島付近に生息するレジデント(定住性)のオルカの捕獲を計画していることが明らかとなりました。
この情報では、実際のオルカ捕獲の可能性を調査し、野生オルカの捕獲と輸出がノルウェーの法規上問題がないかどうかを同国政府と協議するために、名古屋港水族館側の関係者が近日中にノルウェー入りするとも伝えています。
 ノルウェー沿岸に生息するレジデント(定住性)のオルカは、かつては漁場を荒らす害獣として大量に捕殺されました。水族館向けの捕獲はかつて一度も行われたことはなく、生きたままオルカを捕獲するノウハウが全く無いことから、捕獲にはオルカにとっても、人間にとっても多くの危険が付きまといます。また、ノルウェー沿岸のオルカの研究、調査はまだ始まったばかりであり、生息数や生態系における役割などが、充分に解明されていません。
 ノルウェーの対岸・アイスランドでは映画"FreeWilly"に出演したオルカ・ケイコが、多くの人々の愛情に支えられながら野生への復帰を目指しリハビリテーションに励んでいます(1999年当時)。その目と鼻の先で、はるか東洋の島国の人間の欲求を満たすために、オルカの自由を奪う行為が行われようとしているのです。
 家族から引き離され、水族館に収容された野生オルカの平均生存年数は5年といわれます。1997年2月に和歌山県太地にて捕獲された5頭の野生オルカのうち、幼い子供と妊娠したメスの2頭は、わずか4ヶ月で死亡しています。
 この問題については、新たな情報が入り次第順次お伝えしてゆきます。

ノルウェーでのオルカ捕獲断念?(1999年3月17日)

ポール・スポング博士からの情報などによると、3月16日政府関係者などとの協議のためにノルウェー入りした名古屋港水族館のスタッフは、到着後ノルウェーをはじめ10カ国もの市民から強い抗議運動に遭い、同時にノルウェー政府当局も、捕獲後の長距離輸送でオルカの安全が保証されないことに強い難色を示したため、ノルウェーでのオルカ捕獲計画を断念せざるを得ない状況になったと伝えています。
 ノルウェーのオルカにとっての危機は去りましたが、オルカを収容するプールの建設が止まったわけではありません。今後は1997年の太地同様、国内、又はロシア近海で名古屋港水族館向けに野生オルカの捕獲が行われる可能性があります。特にロシアは日本同様十分な調査が行われていないにもかかわらず鯨類捕獲への規制が甘く、近年日本各地の水族館がベルーガ(シロイルカ)、オルカの新たな供給元として注目していると言われます。最近では八景島シーパラダイス向けにベルーガを捕獲したことが知られています。