週刊墨教組 No.1354 2002.1.31

来年度、中学校持時数に「その他の活動」二時間分を現行通りカウント!
 教科・選択・特活の端数はカウント!

 都教委は、一月二三日、二〇〇二年度の「教職員定数配当と講師時数配当一般方針」を提示しました。
 中学校では、来年度から選択教科数・時数の拡大、「総合の時間」導入により、一層の多忙化が予想されます。そうした中、私たちは持時数の軽減を強く要求してきましたが、残念ながら実現はできませんでした。しかし、「中学校の講師時数配当方針」に留意すべき部分がありますので、その点について整理します。
 なお、中学校の教員の授業持時数は、「講師時数の算出基礎(資料2参照)」で示されます。

「その他の活動」として二時間分を継続することは当然
私たちは、
@これ以上の多忙化反対、
A選択・「総合」の準備時間保障、
B教科時数減により非常勤講師の時間が削減され、その結果非常勤講師の収入減に繋がる、
C教科時数減により、教科間で授業時数に極端なアンバランスが生じる
等を理由に持時数の軽減を要求してきました。
 それに対し、都教委は講師時数配当方針の中で、「その他の活動」として二時間分を、持時数にカウントすることを、提示しました。「その他の活動」は、現行では「裁量」を意味しています。組合の最低の要求に対し、こうした形で都教委が答えたのです。新指導要領では、「裁量が消滅した」と考えれば裁量分の二時間は持時数からなくなります。そうなれば、二時間分が持ち授業時数として加わる形になりますが、今回の提示では、従来通り持時数としてカウントすることになります。
 
教科・選択・特活の端数は持ち時数にカウント
  「総合」の端数時数は切り捨て
 資料1の☆印の教科は、授業数を三五で割ると割り切れません。そこで、小数第二位を四捨五入し、小数第一位までを☆印の教科の持時数にカウントします。選択と特活についても同様に算出します。次に資料2の各教科の持時数上限を越えた数を合計し、その合計の整数部分が、学校として必要とする講師時数となります。その結果、切り捨てより若干講師時数が増えることになります。さらに、今回複雑さが増すのは、資料1にあるように、選択と「総合」の授業数が相互に関係するからです。二年では、選択と「総合」の時数合計は一五五時間になります。「総合」の端数時数は切り捨てになることから、総合を七〇時間とすると残りは八五時間になります。この八五時間が、選択や特活に割り振られます。選択教科、特活は各担当の持時数にカウントします。これによっても、非常勤講師の時数は僅かながら確保されることになります。
 しかし、中学校では端数教科が出現したため、年間に何種類もの時間割を作成することになり、時間割によっては授業をある週に集中することも予想され、より多忙化することはあっても、個々の教員に余裕が生じるとは言えません。

これ以上の多忙化反対、勤務時間の厳守を!
 多くの中学校では、来年度から授業時数が週二八時間になります。持時数の上限は、現行通り、週二四時間(国・社・数・英)、週二二時間(理・音・美・体・技家)です。
 しかも、六時間授業の日が週三日になります。A中では六時間目の終了は三時二五分、帰りの会・清掃が終了するのは四時頃になります。休息が四時一〇分〜二五分まで、その後休憩時間に入ります。
 小規模化している墨田の中学校では、一教科一教員のケースが生じます。その結果、例えばA中では、社・理の教員は、授業持時数が上限になることが予想されます。教員の仕事が「授業」だけなら勤務時間内で仕事が終わるでしょう。しかし、授業準備・分掌の仕事などが加わります。そうすれば、必然的に勤務時間をオーバーすることになります。
 今、どの学校でも来年度の教育課程の編成に向け、論議がなされています。来年度、自分の持時数や分掌がどのようになるのかを予想する必要があります。そして、是非多忙化・勤務時間厳守の視点からも論議をし、問題点を明らかにし、それを少しでも解決できる教育課程、分掌組織を創りだすことが、今、重要です。

資料2


 講師時数算出の基礎となる
        教員の持ち時数
 国、社、数、英の教員
  道徳・特活・教科・選択・「総合」・
  「その他の活動」の合計が二四時間

 理、音、美、体、技家の教員
  道徳・特活・教科・選択・「総合」・
  その他の活動の合計が二二時間


週刊墨教組 No.1349   2001.12.20


「地域に根ざした教育」こそ私たちの原点
中学校希望選択制度の問題点
 私たちは、子どもたちを、地域の人と人とのかかわりの中で、地域で、地域に学びつつ、地域総体で育てることを大切にしてきました。
 各地域・町会にも子ども会活動やさまざまな活動を通して地域全体で子どもたちを守り、育てていこうとの意識が強くあります。
 しかし、「学校選択の自由化」はそれと明確に逆行するものです。この点から、私たちは「学校選択の自由化」に反対してきました。
 十一月十三日付けで「中学校希望選択の応募状況」が区教委から公表されました。その応募状況に関する現時点での分析と問題点を整理します。
 最終的には、入学者が確定した段階で問題点をあらためて整理します。

応募人数二百九十八人をどう見るか
 区教委の資料(1)では、他学区の中学校を希望している児童は二百九十八人になっています。学区域内在籍人数全体から見ると、この人数は約二〇・六%になります。この人数の中には私立中学校を希望している児童も含まれています。
 資料(2)は、現中学一年生の他学区・私立中学などへの進学結果です。
 個々の保護者・児童が、どういう観点から他学区の中学校を希望したか定かではありませんが、資料(2)から判断すると、二百九十八という数が示す傾向は例年通りと考えられます。つまり、二〇〇一年度に学区域制により指定された学校以外(私立や指定校変更願により指定外学校)に進学した割合と似た傾向にあると見ることができます。
 また、各分会の調査・報告から見ると、他学区希望者の内、少なからぬ人数が隣接学区の中学校に希望している状況があることがわかります。

学校間競争に陥ってはならない
 私たちは、「ひとりの子も切りすてない教育」をスローガンに、教育実践にとりくんできました。このスローガンに込められた想いは「目の前の子どもと向き合い、その子に寄りそい、その子のもつ課題を克服していく」実践を目ざしたものです。「生活指導上心配の少ない中学校」、「あの子とは一緒の学校に行きたくない」との観点で他学区中学校を選んだ保護者・児童があるとするなら、こうした点から提起された教育課題を私たちは実践を通して克服していかなければなりません。
 しかし、「特色ある学校」をことさらに強調し、学校間競争を煽ることには「NO!」の姿勢を貫く必要があります。学校間競争は、いたずらに学校を、教師を、忙しくさせ、学校の子どもをスポイルすることにつながらざるを得ないことを私たちは感覚的、本能的に感じています。

教育環境の整備は行政の責任
 「校舎がきれいだ」「設備が良い」との観点から学校を選択した保護者・児童があるとするなら、行政の怠慢の結果と言わざるを得ません。校舎等施設・設備については、どの学校も平等であるはずです。保護者へのアンケート結果を区教委は分析しているはずです。そのような指摘があるなら直ちに改修等に着手すべきです。
 
学級数の確定がより複雑になった
 来年度の予測学級数に基づき、すでに異動作業が始まっています。
 各中学校では、例年学区域内在住児童のうち私立中学校への進学者がどのくらい出るかを予測して学級数を想定してきました。
 しかし、今年はまず、抽選もれになった児童の動向が、私立入学の結果が出てもつかみにくい状況にあります。「指定校変更」により希望中学校に進学するのか、学区域の中学校に入学するのかが定かでないからです。
 また、他区からの入学希望者が出ることも不確定要素になっています。
 学級減で止む無く「異動申告書」を出した、しかし、結果的に学級減が解消された、だが、そのまま異動させられるケースが出てこざるを得ません。また、二月中旬の私立中進学確定期になって、学級減→過員。そして、異動強制されるケースが出てくる恐れも大きくあります。さらに、新年度の校内人事を決めかねる状況も生じかねません。
学校選択制度は、私たちの人事に関する諸問題については考慮されていないと言わざるを得ません。


週刊墨教組 No.1347   2001.12.11

来年度教育課程を組むために
 完全週五日制に対応し、ゆとりのある学校を実現するために、各校で着々と準備・話し合いがすすめられていると思います。教育課程はあくまで学校が、児童、学校、地域の実態をふまえて編成するものです。ところが区教委指導室は、教務主任研修会などで、あまり根拠のない説を出しています。

九・二八文書
 九月二八日、教務主任研修会で、朝日指導主事は、「平成十四年度以降の教育課程の編成・実施の基本的な考え方 墨田区教育委員会指導室」(以下「九・二八文書」)を資料として出しました。そこには、「年間授業時数を確保するために、総授業時数を三五で割った数を、各学年の基本となる週時程(時間割表)に位置づける」「小学校四年以上は週二七コマ・・・を時間割の基本とします」とあります。「月から金までが五・六・五・六・五」(さらにクラブを月曜の六時間目に置いている)の「モデルプラン」が出されています。
 参加者から、「三五で割る根拠は何か?」との質問が出ましたが、法なり指導要領に依拠したきちんとした回答は得られませんでした。最終的には、「年間総授業時数が確保されることが大切であり、それがクリアーできれば三五週で割っていなくてもいい場合もある…」という説明がされました。
 九・二八文書はその程度のものですが、どうもこの根拠のない文言が一人歩きをしているようなので、問題点を整理しておきます。

指導要領からの逸脱?
 指導要領解説総則編(以下「解説」)には、「時間割を年間で固定するのではなく、地域や学校、児童の実態、各教科などの学習活動の特質に応じ、弾力的に組み換えることに配慮する必要がある」「このこと(三五週以上にわたって行うよう計画すること)は、各教科等の授業時数を三五週にわたって平均的に配当することを定めたものではなく、児童の実態や教科等の特性を考慮して週当たりの授業時数の配当に工夫を加えることが大切である」とあります。
 それに対して「小学校四年以上は週二七コマ・・・を時間割の基本とします」「一単位時間を弾力的に運用する場合は、児童・生徒にとって学習効果を高めることが期待される場合に、計画的に実施することとする」(九・二八文書)というのは、後ろ向きで、硬直した思考だと言わざるをえません。
 指導要領総則には、「年間三五週以上にわたって行うよう計画し、週当たりの授業時数が児童の負担過重にならないようにするものとする」、「解説」にも「年間の授業日数は、各教科等の授業時数が適切に確保されるとともに、週当たりの授業時数が児童の負担にならないよう配慮して定めるべきものである」とあります。しかし、九・二八文書には「負担過重」への戒めなど見出すことができません。
 ゆとりや弾力的な週時程、授業時数の適切な確保、負担加重にならないように…など、指導要領の大きなポイントを外している文書と言わざるをえません。
 かわりに強調されているのが週二七時間の週時程です。「具体的な配慮事項のC」として、アンダーラインまで引いて、「来年度四月下旬をめどに、各学級の基本となる週時程の提出をお願いします」とまであります。こだわりがあるようですが、根拠のないものであり、「九・二八文書」のこだわりが本当に教育改革・新指導要領をよりよく実施することに益するとは思われません。

七〇時間の減とは土曜日のカット
 一九九八・七・二九 教育課程審議会答申「教育課程の基準の改善について」では、「完全学校週五日制の実施に伴い、年間総授業時数を縮減する場合の具体的な縮減幅については、現行の授業日となっている土曜日分の授業時数である年間七〇単位時間(週当たりに換算して二単位時間)程度を削減することが適当である。」と述べています。意見の中には「月二回の学校週五日制がおおむね順調に実施されてきていることを前提に、児童生徒の学習負担を増加させないこと及び生活上のゆとりを確保することを重要なことと考え、月曜日から金曜日までの一週間の授業時数を現行以上に増やすことはせず、そのなくなる分の年間七〇単位時間(週当たりに換算して二単位時間)の授業時数を削減するのが適当である」というものもありました。
 区教委の言う「三五週で割る」というやり方で考えれば、七〇時間は週あたり二時間です。現在隔週土曜日を四時間やっている学校ではほぼその分がなくなり、土曜日が三時間の学校では、さらに他の曜日の分も減らせるということになります。
 各校では一九九五年四月からの隔週土曜休みに対応して、行事の精選や授業の効率化で総授業時数一〇一五時間を確保してきました。具体的に言えば、すべての週で二九時間はやっていないが、「三五週以上にわたって配当」し、「年間の授業時数について児童の負担過重にならない程度に、週当たり、一日当たりの授業時数を平均化」してきたのです。それは区教委も認めるところでしょう。

行事時数
 「九・二八文書」には「学校行事等の時間を、教科等の時間に安易に読み替えることのないようにします」という文言があります。よく意図のわからない文ですが、ここ何年か行われている行事時数の数え方が、一番その学校の実態にも沿い、納得できるものであるということは確実です。来年度週時程を語る上で、今年までの行事の内容(さらに精選!)と時数カウントをベースにすることはとても大切なことです。

「三五週で割る」の根拠はない
 昭和二二年「学習指導要領(試案)」では、「授業時数については、指導に弾力性を持たせるという主旨から、各教科とも年間の総時数で表し、一年間を三五週とした場合の週当たりの授業時数を併せて示した」という文言があります。「週当たりの授業時数」の発生はなんとここにあったのです。しかし、その後、昭和二六年改定で「総授業時数の基準を二学年ごとにまとめ」たり、「最低授業時数を明示」(昭和三三年)したりもしました。後者は昭和四三年で「標準時数」と改められたりしたが、二二年のような「週当たりの授業時数」は書かれることはありませんでした。何より大事なことは、二二年のものでも「一年間を三五週とした場合の週当たり授業時数」という言い方をしている点です。三五週は仮定であり、計算上の例示です。「一年間は三五週である」とも「総授業時数を三五週で割れ」ともこの時点でさえ言っていません。
 新指導要領「解説編」にも、「各教科等の授業時数を年間三五週以上にわたっておこなうように計画することとしているのは、各教科等の授業時数を年間三五週以上にわたって配当すれば、学校教育法施行規則別表第一において定めている年間の授業時数について児童の負担過重にならない程度に、週当たり、一日当たりの授業時数を平均化することができることを考慮したものである」とあります。「三五で割って週時数を決めろ」とも、あるいはそのように受け取れるようにも書かれてはいません。
 「三五で割る」の根拠が見出せない限り、「九・二八文書」の「総授業時数を三五で割った数を、各学年の基本となる週時程に位置づける」は撤回されるべきです。

緻密な計画でゆとりを
 六時間目が増えることや、水曜日が五時間になること、これは明らかに負担過重です。実際に、来年度の年間予定を立てて時数をあてて試算してみれば、「九・二八文書」の「モデルプラン」では、標準時数を三五〜六〇時間も越えてしまいます(行事の数え方などでもかわってきます)。これを負担過重と言わずに何と言いましょう。週当たりで二六時間の週時程を立てて試算しても年間総授業時数はクリアします。
 各学校で、緻密な計画を立て、児童の負担過重にならないゆとりのある教育課程を作っていきましょう。


週刊墨教組 No.1310 2001.2.1

小一年→二年・五年→六年、
中二年→三年の現学級維持
       都教委、二〇〇一年度予算案で定数増

 一月二三日、東京都の二〇〇一年度予算案が決定されました。それを受けて都教委は二四日、教育予算案についての説明を関係組合に行いました。
 この中で都教委は、「都財政危機にもかかわらず、総予算の中で教育費の占める割合を昨年度比で〇・四%増の八千九億円とすることができた」と説明、新規予算化できたものを中心に説明を行いました。
 新規予算化の中で注目すべきものは、学年進行に伴い「現学級維持」を打ち出したことです。そして、その実施のために小学校四九人、中学校六人の定数増を行うとしています。
 学年進行時に児童生徒数減による学級減は、近年、現場でしばしば起き、さまざまな問題が生起しています。そのことが改善されることにつながれば幸いですが・・・・・・・

学級定数割り込んでも現学級維持
 都教委予算案に盛り込まれた「学級編制における現学級維持」とは、小学校一年から二年、五年から六年、中学校二年から三年への学年進行時、学年の総児童生徒数が四〇人学級定数を割り込んでも、現学級数のまま進行させるというものです。例えば、一年生が八十一人で三学級で出発した場合、年度途中で転出者があり、八十人以下となった場合でも、二年生進級時にそのまま三学級で進行させることを認めるということです(ただし、クラス替えをする場合はだめ)。
 学年児童生徒数が四十一人以上で二学級編制で出発したものの途中転出者があって学年児童生徒数が四〇人以下となり、学年進行時に一学級編制になる等の例が多いことは、だれもがよく知っています。
 また、その結果、急に多人数学級(例えば二十一人の学級→四〇人の学級)となり、担任・児童生徒双方が戸惑い、混乱し、学習・生活指導両面でさまざまな問題が生じたことも事実です。そうしたことを避けるべきだとの考えから今回の予算化(定員増)がされたと思われます。

不平等取り扱いの恐れも
 だったら、なぜ小学校三年→四年についてもやらないのか。ほとんどの小学校では一・二年、三・四年、五・六年という二年間サイクルで学級編制替えが行われており、一・二年、五・六年について現学級維持が行われるならば、三・四年についても行われなければ不平等な取り扱いだと言わざるを得ません。教育指導面からこうした措置を行うならば、不平等が生じないようにやるべきです。

奇妙なことも起こる
 ところで、この措置は「現学級維持」というところに照準を会わせています。そこで奇妙なことが起こります。逆の場合つまり当初八十人で二学級編制で出発し年度末で八十二人になっている場合、「現学級維持」という考え方からいくと二学級のままということになります。また八十人のままで「現学級維持」の考え方により二学級で学年進行した場合、四月七日時点で八十三人を越えても(現行制度では三学級に更生編制することが可能ですが)、二学級のままということが起こります(ただし、この場合、「学級維持」でいくか、「現行の学級編制基準」でいくか、選択の余地があるようです)。

三〇人学級実現こそ焦眉の課題
 ところで、この方針は、「学級編制基準の弾力化」という中教審答申に基づくものです。そして、都教委としては、ここに独自性を発揮したつもりでしょう。
 また、都教委予算案には「定数法改正」に伴う「少人数指導」のための定数増も盛り込まれています。「少人数指導」は、習熟度別(能力別)指導を可能とするものであり、問題があります。
 私たちは、三〇人学級という少人数学級の実現を要求してきています。それこそがまず第一に手をつけねばならぬ焦眉の課題であることを現場で痛感しているからこその要求です。改めて、そのことを要求します。


週刊墨教組1265号 2000.1.20

移行期間中、

総合的な学習の時間を必ず実施しなくてはならないのか
   『移行措置期間はこうしようー教育課程Q&A』(東京教組発行)の活用を!

学校は、年度末反省を踏まえて来年度の教育課程をどう作成するかについての話し合いが始められる頃だと思います。二年間の移行措置の中で、教育内容をどう押さえ、各教科の授業時数はどう運用していったら良いかなどと、頭を悩ませる問題が出て来ると思われます。「特色ある学校作りはどうするか」「総合的な学習の時間はどうするか」なども論議になることでしょう。
 東京教組が今回作成した「移行措置期間はこうしようー教育課程Q&A」には、これらの問題を検討・論議する際のポイントが、簡潔にまとめられています。各校の教育課程編成論議に当たっての資料として、活用してください。今号では、最大の問題になるであろう「総合的な学習の時間」についての内容を紹介します。

移行措置とは何か
小学校の教育課程は、二年後の二〇〇二年四月一日から全面的に新学習指導要領に基づいて実施されます。
 先日、墨田の教育課程届け出説明会において、指導主事から、「来年から総合的な学習の時間をどこの学校も実施してもらいます。やらない学校は、なぜやらないかの説明をしてもらいます。納得のいかない説明なら、もう一度検討していただきます。」などという脅しにも似た発言がありました。これについて、「そんなことを今から言われても困る」「いつ、そんな説明をしたのか。この時期になって、やれなどと言うのは無理がある」などという意見が出されました。これに対し、「四月の段階からやれと言う訳ではなく、一学期はどういうことを総合的な学習の時間にしていくかという分析をして、二学期から一部取り入れるということでもいいのです」とややニューアンスを変えた言い方で回答しました。
この話を聞いた管理職や教務主任は、学校に戻って「来年からは、何が何でも総合的な学習の時間を取り入れて実施しなくては困ります」などと強引な説明をする学校も出てくるに違いありません。
「総合的な学習の時間」は実施強制しない
東京教組との交渉(九九年九月二九日)で、都教委は 「総合的な学習の時間の趣旨を踏まえ、積極的にとりくみに努めるよう指導助言していく。ただし、これは実施を強制するものではない。」と回答しています。
 区教委の移行措置資料にも、「総合的な学習の時間を加えて教育課程を編成できる。」となっているだけで、「総合的な学習の時間を編成しなければならない」とは書いてありません。したがって、無理に実施する必要はまったくありません。
 あせって取り入れて、子どもも教師も忙しくなり、空回りになるようなものなどは、かえってマイナスになりかねません。各学校でじっくり論議しましょう。

「総合的な学習の時間」について
総合的な学習の時間は、何も新しいことを唐突にやるのでなく、今まで真摯にとりくんできたことを、改めて整理して総合学習として位置付けてもいいということです。墨田の中でも、人権・同和教育、平和教育、ジェンダーフリー教育、性教育などを先進的に実践してきている学校がかなりあります。国際理解をテーマに英会話を行うなどというのは愚の骨頂です。
また、遠足、運動会、移動教室、学芸会、各種集会などは、これまでも総合的な内容を含んで実施されてきました。学校行事という殻の中から脱出して、子どもがより主体的にとりくめるようにプログラミングし直せば良いのです。

授業時数上乗せをしてはならない
移行期の授業時数は、現行通りです。移行措置により削減した教科授業時数の枠内で、「総合的な学習の時間」は新設することができます。大事なことは、総合の時間を生み出すために、教科時数の無理な削減や「裁量の時間を充てる」などの上乗せは、絶対にしてはならないことです。文部省も今回の改定の柱に、子どもたちに『生きる力』『ゆとりある生活』をということを強調しています。せっかくの「改善」も、忙しくしては何の意味のないものになってしまいます。



分会長会資料

「来年度の教育課程」と

「新学習指導要領」

1999.1.18.文責 加藤書記長

 3学期に入り、各分会では年度末反省、来年度の教育課程編成の論議が始められていることと思います。
1月25日(火)には、来年度の教育課程編成に関する説明会が区教委で実施されます。一方、文部省は昨年12月14日に、新学習指導要領を告示しました。都の指導を受けて、区教委は何らかなコメントをすると思われます。また、校長の中には、新学習指導要領を念頭において、来年度の教育課程編成に関し、自らの「リ−ダ−シップ」を発揮しようと、先走った行動にでることが考えられます。
 教育課程の編成は、職員会議での論議を通して、各学校で実施するものです。区教委・校長の押し付けには断固反対し、児童・生徒、教職員の「ゆとり」を拡大するような、とりくみを強化しましょう。

1.「新学習指導要領」による教育課程の改訂スケジュ−ル


・1998.12.14「新学習指導要領」告示
・1999年度から文部省による説明会(現時点では、説明会は開かれていない)
・2000〜2001年度の2年間が移行措置
・2002年度実施
 ※行政の流れからすると、来年度から論議すべきである。

2.「新学習指導要領」は、完全学校5日制の枠組み
・今回の改訂は、2002年度からの完全学校5日制に対応したもの。児童・生徒、教職員の「ゆとり」がさらに拡大されるべきである。
 今回の改訂は、「第15期中教審答申」を受けて行われた。この答申では、こどもたちの生活について、「ゆとりのない忙しい生活、子どもはゆっくり休養したい」と述べています。月2回の5日制導入に際し、「ゆとり」について各分会では論議がなされたとおもいます。「ゆとり」の具体化のひとつとして、上乗せに反対して週時程(時間割)を編成した。現状が不十分な分会もありますが、来年度に向け再度「ゆとり」の論議をする必要がある。


・上乗せに対する反論
・土曜日が休日になることを前提に、月〜金の時間割りの工夫。長谷川資料(東京教組)を参照
・短縮の復元、拡大
・児童生徒、教職員の負担増には反対する

3.「総合的な学習の時間」について
 今回の改訂の特徴として「総合的な学習の時間」があげられています。この時間をどのように活用(利用)するかが論議の柱になる。他地区の学校では、すでに今年度から試行しているところもある。また、「特色ある学校」の具体化として、学校間の競争にもなるおそれがある。このことについて、辻村氏(初等中等教育局長)は「学校の特色を出そうと努力されると思います。しかし、意識的に特色を出そうと考えるのではなく、地域や子どもの実態を見ながら、実践してほしいと思います。特色はその結果として出てくるのではないでしようか。」と述べています。

・なんでもあり(例示はあくまでも例示、徳重氏のコメント参照)
・地域、子どもに根差したもの
・現在実施している行事・授業
・平和教育、人権教育へのとりくみ強化
・研修強化に反対する

4.「開かれた学校」
 「開かれた学校」ということで、授業を不特定多数に公開することが地教委・校長主導で実施されている区もある。その結果、授業内容、教員個人に対する攻撃に利用されたケ−スも出てきている。

・何を公開すべきかの論議
・プラスマイナスをきちんと論議する必要がある
・保護者、地域(具体的には何を指すか)との連携

5.「道徳」の強化、「日の丸・君が代」の押し付けにあくまで反対する

6.条件整備についての要求

7.その他
・1月30日P.2東京教組学習会
詳しいことは追って連絡いたします。