都教委、管理職の成績率制度をまた強化

競争主義・成績主義による勤勉手当差別支給を拡大

 三月十一日、都は現在全都の管理職に実施している勤勉手当の成績率制度について、成績主義を強化する立場に立った改悪を決定しました。 改悪の内容は、成績率の原資の確保方法とその配分方法であり、減額割合を大きくし、上乗せ分を大幅に増額しています。つまり査定幅を大きくし成績主義をさらに強化したものになっています。
 また、これと合わせて業績評定の内、絶対評価部分の本人開示を決定しています。これは都労連が要求している開示要求に応える用意があることを示し、一般職員への成績率導入について突破口をひらこうとの意図が見え隠れしています。
 
配分原資を拡大

 ー「(強制)拠出」部分を二・八%に
 勤勉手当の成績率制度とは、基本的には業績評定によって個々人の「成績」を五段階に相対評価し、ランク下位者の勤勉手当を減額し、その分を上位者に配分するというものです。
 現行の管理職の成績率制度では、全員から一%相当分を強制的に拠出させ、それと下位者(A〜Eの五段階相対評定したEランク者)から取り上げた五%相当分を合わせて配分原資としています。
 今回の都による改悪は、まず、年間〇・九月分(夏季〇・四五、年末〇・四五)の内、〇・〇二五月分を配分原資として別にします。つまり、増額配分も成績による減額もない中位者(C、Dランク者)の勤勉手当支給率は、〇・八七五月分になるということです。これを現行の「拠出」という言い方で表すと、約二・八%を「拠出」させられることになります。この「拠出」は全員からですから、それだけでも原資はかなり大きくなります。ーランク下位者から八%近く取り上げ
 さらに、最下位者から勤勉手当の五%を減額(とりあげる)します。最下位への支給割合は、〇・八三一二五月分(本来の支給月数〇・九月分から〇・〇六八七五月分減額となる)ということになります。
 この二つを合わせたものを配分原資とします。かなり大きな額になります。

最上位者には年間で一月分上乗せ
 この原資を最上位者(Aランク者)と上位者(Bランク者)に上乗せ配分します。最上位者には〇・一月分の上乗せ(本来の勤勉手当支給率年間〇・九月分が一・〇月分になる)、上位者には〇・〇三七五月分の上乗せ(勤勉手当の支給率が年間〇・九三七五月分となる)します。この二ランク者は、本来の勤勉手当支給率を上回ることになります。しかし、中位者(C、Dランク者)は上乗せはありませんから、年間支給率は〇・八七五月分で本来の〇・九月分を下回ります。中位者、最下位者の支給割合は〇・八七五月分、〇・八三一二五月分で、いずれも本来の支給割合〇・九月分を下回ります。つまり、A、Bランク者のみが増額され、その他のものは減額されるということです。

最上位者と下位者、十二万円もの差
 さて、この方式でいくと、具体的な支給額でどのくらいの差が出るかということです。都の試算(モデルは五〇歳の統括課長。算定基礎となる給与月額七十三万九千六百九十五円)によれば、このモデルの人がAランク者と評定されると、中位者(C、Dランク者)と比較して年間で九万二千四百六十二円の差、下位者(Eランク者)と比較すると十二万四千八百二十四円もの差が出ることになります。このモデルの人がBランク者として評定されると、中位者との差は四万六千二百三十二円、下位者との差は七万八千五百九十四円となります。何と大きな差、差別支給となることでしょう。別記の試算表を見てください。現行方式による差別支給より、ずっと差が大きくなっていることがわかります。「査定幅を拡大し、成績主義を一層推進する」(都文書の表現)ものになっています。

初めは小幅の差、やがて大幅な差に
 管理職への成績率導入が強行された九四年当時は、減額幅も上乗せ幅も小さいもので、最上位者への上乗せも年間二万円程度でした。ところが、二回にわたる改悪で、以上見たように差別支給を強化しました。
 都は、一般職員への「成績率」導入を強硬に主張しています。恐らく初めは差が小さい案を提案してくることでしょう。しかし、ひとたび制度を導入するや原資の確保方法、配分方法を変えることによって、成績主義、差別支給を強化していくことは、この管理職成績率制度の改悪状況を見れば、火を見るよりも明らかです。

 何としても、一般職員への「成績率」導入を阻止しなければなりません。

本人開示は絶対評価のみ
 都は、この改悪と合わせて、「業績評価」について第一次評定者による絶対評価による評定結果を本人開示することを決定しています(校長の場合、第一次評定者は区教委人事担当部長ー墨田の場合、学校教育部長)。この本人開示決定は、都労連が教員を除く都一般職員に実施されている「業績評価」の開示要求をしていることに対応したものと見られます。しかし、第二次評定者による相対評価も含めてではなく、絶対評価だけに限定していることは不十分なものと言わざるを得ません。

実施時期は、今年六月から
 成績率制度の改悪の実施時期は、今年(九八年)六月の夏季手当からとなっています。なお、夏季手当の成績率の査定基礎となる業績評価のランクは昨年度の評定で決定しています。
 業績評定の絶対評価部分の本人開示は、今年度の評定時期になると思われます。