ヤマブキ
ヤマブキの花というと誰でもが思い浮かべるのが太田道潅にまつわる話で、知らな
い人は居ないほどに有名な故事でもあります。
道潅がある日、鷹狩りに出かけたおり雨に降られ、近くの小屋に立ち寄って蓑
を貸してくれるよう頼んだところ、若い女性が無言で山吹の花一枝を折って差
し出したと言う話です。道潅は花を貰いに来たのではなく蓑を貸りに来たのに
と怒って帰ってしまったということです。
この話を伝え聞いたある人が、これは古い歌にある心を伝えたものであること
を道潅に教え、道潅は自分の無知を大変に恥じたということです。それからと
いうももは道潅は歌の道にいそしみ、後には歌の大家になったという教育的な
お話です。
その歌というのが、
ななへ八重はなはさけども山吹の
みのひとつだになきぞ悲しき
というもので、書物によりますと、後拾遺和歌集にある兼明親王(914ー987)
の歌であるといいます。 この歌の出来たいわれも、親王が小倉に住んでいたとき、
雨の日に傘を貸りに来た方がありましたが、親王は山吹の枝を折って渡してやったと
ころ、それが何を意味するのか解らないということで、親王は上の歌を書いて返事に
したということです。
むかし、あるところに相思相愛の男女がいた。二人は共白髪までと将来を誓いあ
ったのだが、浮世の義理とでもいうものか、二人は別れなくてはならないことに
なった。そこで二人は別れに際してお互いの面影を忘れないようにと、互いの面
影を鏡に映し合って持ち帰ったという。その鏡を地中に埋めておくと、そこに山
吹が芽吹いて明るい黄金色の美しい花が咲いたといわれている。