ウグイスカグラの花との出会い

 この花との出会いは昨年の春、花の時期も終わりに近い頃でしたので、今年は散歩
をしながらも注意をしてと言い聞かせ玉川上水の遊歩道を歩いていましたが、今年も
葉のわきから垂れ下がる細長い花柄の先に薄紅色の漏斗状の筒形の花が下がっている
ウグイスカグラと出会いました。

 スイカズラと同じ仲間の植物ですのでウグイスカズラがなまったのかと自分なりに
想定していました。 しかし、別名ウグイスノキの名でも呼ばれていますので鳥の鴬
に何か関係があるのかと牧野植物図鑑をひもとくと「ウグイスカグラは恐らくウグイ
スに関係があろうがはっきりわからない」と突き放してしまっています。 いろいろ
と手元にある書物を調べ、結局は中村浩著「植物名の由来」で「ウグイスカグラは鴬
隠れの意」との標題の元に、多くの古名に基づいた検討を紹介されているものに行き
当たりました。その中でウグイスガクレの名前に注目し、次のように書いています。

  「ウグイスガクレという名は、この木の幹に細い小枝が多くしげり、ウグイスが
   隠れるのにつごうがよいので、”鴬が隠れる木”という意味でこの名がつけら
   れたのであろう。
   わたしの山荘では、春から初夏にかけて鴬が良く鳴くが、いつもその姿をみる
   ことができない。おそらくこうした低木の木陰に身をひそめて鳴いているので
   あろう。
   このウグイスガクレが、いつしかウグイスカグラに変転したものと思われる。
   ガクレがカグラになることは決して不自然でない。
   もう一つウグイスカズラという古名もあるが、この名もウグイスガクレの転訛
   した名であろう。しかし、この木は蔓にならないのでカズラとい名は適当では
   ない。」

 この植物についてはスクラップしてあったはずと過去のスクラップ・ブックを開い
たところ、ありました。 毎日新聞で1991年1月9日から毎週水曜日の新聞でス
タートした「野の花に親しむ」、著者は園芸研究家の高橋勝男氏で、ウグイスカグラ
は1993年3月17日の水曜日に取りあげられていました。 この中でも命名の由
来についてかなりの行数を割いています。

 落語の八っつぁんか熊さんかが、物知りと称するご隠居にいろんなことを尋ねる中
での「蛇の大きいのを何故『ウワバミ』というのか」に困惑するご隠居さんをたとえ
に出してウグイスカグラの命名の由来の難解さを説明しています。 氏の文章では命
名の由来に、次のような四っつの説を紹介します。

 (1)初夏にグミと似た実をつけるが、ウグイスがこれを喜んで食べる様子が神楽
    を舞うようだから。
 (2)ウグイスが隠れやすい薮の中に自生、ウグイス隠(かく)れが変化したら。
 (3)実を求めて、飛んで来たウグイスを、もち竿や網でとりやすい狩座(から)
    (猟場)になるから。
 (4)薮の中で小枝が茂り蔓(かずら)のように見えるから。

 氏はどれもなるほどと思うが、でも、これに間違いないと飛びつきたい説はありま
せんと締めくくっています。

 こうした命名の由来を念頭に置いて眺めるウグイスカグラは散歩を一層楽しいもの
にしてくれます。

                            うめだ よしはる

春の花