タイザンボク

 タイザンボクは北アメリカ原産の木で、あの広大な土地に育っただけあって、樹
高は20メートル余にも達する木だとされています。 植えるのには、それ相応の
広がなくてはなりません。それだけになかなか、花を近くで見る機会が得られず、甘
い香りの木の下から仰ぎ見るだけになります。
 皆様もご存知のように花も大きく、下から見た範囲では、開ききった状態では直径
が30センチ程度もあるのではないかと思われますね。 花の命は短いようで、2、
3日で変色してしまいます。 毎朝の散歩では、そびえ立ったタイザンボクに白い花
が、次々に開いてゆくのを楽しみにして、眺めています。

     泰山木はもろき花かも留守の間に
            花心を残しこぼれ落ちたり       藤沢 古美

 タイザンボクは、樹形が大きな山のような姿を示すことから「大山木」と書かれ
たのですが後に、文献では昭和24年に亡くなられた園芸植物の権威者である松崎
博士によって、「泰山の安し」の言葉から、葉も花も樹形全体から受ける感じがどっ
しりとした木であるところから、泰山木という字名が与えられたとされています。 
また開いた花が杯に似ていることからも、大盞木という字も与えられていますが、花
の姿を良く表しています。 泰山木の名からは

     むかし人気の養生(ヤシナヒ)といひにけり
            泰山木の花のまひらき         岡  麓

     すがすがし泰山木の花びらよ
            盃として酒のむべかり         植松 寿樹

 と詠まれています。 厚い緑の葉が茂った安定感のある木の下では、ほのかに
芳しい香りが、見上げれば白く開いた大きな花がということで、「気の養生」、気分
転換なるとしたのでしょう。 広く栽培されるようにようになったのが、明治も中頃
以降になりますので、むかし人はちょっと大げさですね。 後者は大盞木そのもの
です。

 日本へ入ってきた由来を調べますと、明治6年に初めて日本へ導入されたのです
が、明治12年に南北戦争で勇名を轟かせたグランド将軍夫妻が来日し、明治天皇
が上野へ案内された際、記念に将軍夫妻がこの木を植えられ、以来グランド玉蘭の名
で有名になったようです。 今でも健在だとあります。

 この植物は、以前にも紹介しましたが、コブシ、モクレンと同じ仲間で冬でも葉
を落さない常緑のグループのものです。 学名は Magnolia grandiflora マグノリア
 グランディフローラ この名の示す通り、大きな花の咲くモクレンと言うことにな
ります。 しかも、日本で有名になったきっかけが、グランド将軍によって植えられ
たからといいますと、これもグランド、何か縁があったのでしょう。


                       うめだ よしはる


晩春から夏の花へ