春告花/ロウバイの花開く

吐く息も白く、冷たい冬、でも、春の花、スイセンの花の便りが寄せられて春の到
来の近かさを感じます。 また、家にこもって、年賀はがきを前にして、新春、初春
等という文字を書き並べていると、寒さはまだこれからだというのに、何か春を感じ
てしまうのも不思議なことです。

 そのうえ、早春の花、春告花と言われている、ロウバイ(蝋梅)の開花が始まり、
芳香を放つようになると、春がそこまでやって来たという思いになり、花好きの私に
は、ことのほか気持ちが浮き浮きとしてきます。 今年の冬は日中穏やかで暖かいせ
いか、近くの家の庭のロウバイが花も早く咲きそうです。

 

  「木枯しに花びらをふるわせ、時には雪に埋もれるこの可憐な花を見るとき、
   この樹種の特性とはいいながら、寒気に向う雄々しさよりもむしろ哀れさを
   感じ、思わず激励と愛撫の声を送りたくなる。」

と、麓次郎氏は「四季の花辞典」のロウバイの項を書き出しています。 至言です。

 漢名には臘梅又は蝋梅があてられていますが、梅の字がついているもののウメとは
全く関連のないロウバイ科の植物で、原産地の中国から300年ほど前に渡来し、花
の少ない冬の庭木として広く栽培され、愛されています。 別名としてのカラウメや
ナンキンウメの名にその渡来の由来を伺い知ることが出来ます。 蝋梅の名は花が蝋
細工に似ているから、臘梅は臘月(12月)に小黄花を開き蘭の香に似た香を放つと
ことからその名があると書物には記されています。 花は来る春を感じさせます。

蝋梅のまはりの空気うすみどり  中嶋 秀子

  蝋細工さながらの花弁を下向きにして咲き、寒い風に小刻み震えている姿は冬の後
を追っている春を告げて咲く花の代表でしょう。

 ロウバイも花の中心部の内部が暗紫色の、いわゆるロウバイと内側もすべて黄色い
ソシンロウバイが普通に見られますが、最近では花が全部黄色のソシンロウバイの人
気が高いようです。

 このように、ロウバイは真冬に咲く花で、周囲の木々が葉を落としている冬の枯れ
た木立の中にひっそりと黄色の花をうつむかせて開き、ほのかな香りを周囲に放つ花
は愛好家も多く、特に茶人に好まれていると聞きます。 花言葉も「故淡」、侘、さ
びの世界です。 
                             うめだ よしはる

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