ポインセチア・クリスマス・フラワー

クリスマス商戦が近づいた商店街やデパートなどの店先にはクリスマス・フラワー/ポインセチアの鮮やかな赤い色が客の購買意欲をそそるように飾られていますね。 先日もテレビのニュースで紹介していましたが、横浜に立った高さ10メートルの人造のクリスマスツリー・パイプで構築されていましたが、その壁面はポインセチアの赤で鮮やかに飾られていました。

 ポインセチアはメキシコ原産の常緑潅木でアメリカの初代のメキシコ大使であったジョエル・ロバート・ポインセット(J.Robert Poinsett)が1825年この植物を発見して、自分でこの植物を故郷で園芸化を意図するとともにアメリカの人々に紹介し、これがヨーロッパへまで広がっていったといわれています。 彼の名前にちなんでポインセチアという名が付けられたとされています。 

学名も Poinsettia plucherrima から Euphorbia poinsettiana へ、そして更に現在のEuphorbia plucherrima と再度改訂されたとの記録があります。 ポインセチャという最初の名前が残って現在に至っているのです。

 日本への渡来

 はっきりとした渡来の時期は不明ですが、最初の渡来は開拓使などによって明治の初年にもたらされたものと考えられています。明治9年(1876年)頃には東京大学の附属植物園の前身であった小石川植物園で栽培されていたと言われています。 一般に普及したのは大正に入ってシクラメン等とともに非常に珍しい高級鉢物として出回ったようですが、そのころのポインセチアは現在のものとは比べものにならないほど貧弱(苞葉の巾の狭い)なものだったとも伝えられています。

 日本の名称

 この植物の苞葉が猩々緋緋のように真っ赤になるので「猩々木」と和名をつけています。 牧野植物図鑑でも「日本名猩々木(ショウジョウボク)。赤い総苞葉を花の顔に見立て、顔の赤いショウジョウにたとえたもの。」と解説されています。広辞苑には、この猩々は当然に中国伝説の酒の精の神とされている猩々、日本の能にとりいれられている猩々で赤い髪、赤い面、赤い衣装を身につけての姿に見立てて猩々(ショウジョウボク)の名前が付されたのは先刻ご承知の通りです。

 クリスマス・フラワーとしてのポインセチア

 原産地のメキシコではノーチェブエナ(聖夜=クリスマス・イブ)と呼ばれていることから、赤いセイヨウヒイラギがクリスマスの聖夜の飾りであると共にクリスマスには赤いものを迎えることもあり、赤い飾りに広く利用されるようになって、クリスマス・フラワーという位置を築いたのでしょう。

 11月から12月に入ると花屋さんの店先にはポインセチアの鉢が並ぶようになります。最近では耐寒性の品種の改良も進み商店街などではプランターに植えて野外の飾り植物としても多く用いられるようになり栽培面積(鉢数)もぐんと増加の傾向をたどっているようです。

 短日性の植物ですから日が短くなると苞葉が赤くなります。家庭で部屋の中で栽培された場合に赤くならないとの質問が園芸雑誌などに寄せられていますが、これは部屋の中では夜遅くまで電気をつけているためで、よくダンボールの箱などで覆って電気の光が当たらないようにしなさいと回答されているのを見ます。でも一度赤くなったものは大丈夫ですからご心配はいりません。

      美しき花かとも朱にきはまりし
           その葉を見ればあはれポインセチア      宮 柊二

 耐寒性といってもメキシコ原産の植物ですから外に置いてというわけにはゆきません。夜間の最低温度が4度C以上は欲しいものですから部屋の中へおいて日中は日に当ててあげることも必要です。気温が下がると水を吸い上げる力が極端に低下してしまい葉がしおれてしまいます。こうなると回復はなかなか難しいようですので長く楽しむには最低温度を10度C位のところで管理すると良いとされています。

 すこし長くなりましたが、皆様からご家庭にもポインセチアの鉢が並び、楽しいクリスマスをお迎えになられることと思いますので、由来と管理のことなどをまとめてみました。

                            うめだ よしはる

  晩秋から冬の花へ