不思議な姿/ネジバナ


 半日陰を好むランの花とは違って、ラン科の植物なのに、日当りのよい芝生の中にみかける花、ネジバナですが、この頃では見かける機会が少なくなりました。 

 花穂に小さなピンクの花が一つづつ並んで、そのつき方が螺旋状にねじれている、そんな姿が可憐であるところからネジバナとそのものずばりの名がつけられてのでしょうが、見かけなくなるにつれて園芸店での値が高くなるのはちょっと考えものですね。

 ネジバナの別名はモジズリ、いや、ものの本によってはモジズリの別名がネジバナとありますが、何れにせよ花がねじれて咲く様子からきた名称には間違いはないようです。 モジズリの名も「捩じ摺り」の意味で、花がもじれてつくことからの呼び名であり、短歌の世界でも「もじずり」が多くの場合用いられています。


もじずりの花をめくりてたはむれる
            しじみ蝶ふたつ離れては寄る    関塚 柳子

     みちのくの信夫もじずり誰ゆえに
            乱れそめにしわれならなくに    河原左大臣

「信夫もじずり」は、福島県信夫郡の地から産した乱れ模様の摺り布のことで、草花を捩じり摺りつけて染めたもとされています。 そしてモジズリの名は、この捩じ摺りに由来すると言われていますので、長い歴史と観察から付けられた名前ですね。

 ネジバナでは、花のねじれ方は左か右かの疑問がいつも話題の中心です。 ものの本にはその比率は1:1に近いとのこと、しかし、なぜかヒダリマキという別名もこの花には与えられています。

 シロバナ種は別として、皆さんの観察されたネジバナの花の巻方の左、右の比率はいかがでしでしょうか。

                            うめだ よしはる

晩春から夏の花へ

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