キンモクセイの甘い香り

 最近は健康のためにと家内にうながされて玉川上水の緑道散歩コースを経て小平中
央公園の散歩が楽しむようになりました。 途中で「あ、ミズヒキが咲いている」と
か、「ケヤキに似ているけどこれはムクノキかな」などと立ち止まって葉を撫でたり
するのですから、普段から早足で散歩をしつけている家内には、時折「これでは散歩
にならないわよ」と、お叱りを受ける始末です。

 「甘い香りが漂っているね。これはキンモクセイだよ。この辺に木があるからちょ
  っと見て行こうよ」

 これには反論が無く、高さが3ー4メートルにもなったキンモクセイがスポーツセ
ンターの植木として並んでいるのを仰ぎ見ました。 花は橙黄色で4弁の小さな花が
葉の根元からかたまって咲き、直接に鼻をつけて香りをかぐよりも少し離れて、大き
く息を鼻から吸い込んだほうが、甘くて悩ましい香りがするような気がします。

また、思わぬ所で甘い香に接したりします。 「木犀はどこだどこだとまごつかせ」
と江戸川柳に詠まれているようですが、漂うこの香りに、ふと足を止めてあたりを見
回した経験は誰にもあるものと思います。

      人のゐるごとくおもひてふりむきぬ
               金木犀がすぐそば匂ふ      栗原 潔子

中国原産の植物だけにモクセイにまつわる話の数は中国には多いようで、そのなか
に太陽の様に明るくならない月について、子供に語ったとされている話に次ぎのよう
なものがあります。

   月の中にモクセイが生えていて、これが大木の育っているという。仙人に
   なりそこねた男が枝をせっせと切っているが、切っても切っても枝が伸び
   て広がってしまう。 そのため月は太陽のように明るくならないというこ
   とです。(四季の花事典から)

 子供の頃は、お月さんの中でウサギが餅つきをしているということを聞かされて育
ってきましたが、今、月の世界へ人間が行く時代では、月に関するロマンや伝説はす
っかり色あせてしまいましたね。

                            うめだ よしはる

   秋の花へ

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