マンサクの花を見る

 昨年のファイルを見ると1月中旬にマンサクの開花を見ていますので、府中市の
郷土の森公園から東京都薬用植物園まで出かけるのが恒例です。

 府中市の郷土の森公園は梅林と旧家を移転させたオープン・ミュウジアムで名が知
られている場所で、江戸から明治にかけての府中の宿の家々の片鱗を見ることが出来
ます。

 薬用植物園のマンサクは1月中旬にはボケの花と共に花を開きます。

 マンサクの中でも昨年の枯れ葉を付けたまま花を咲かせるシナマンサクは開花も早
く、寒く冷たい冬の季節に、万花に先駆けて「先ず咲く花」にふさわしいマンサクは
、花弁のちじれた黄色を、まだ落としていない枯れた葉を背にして冬の光にまぶしい
ほどに輝きます。

 花弁が四、萼片が四、雄蕊が四という四ずくめのこの花は、本田正次氏の著書に「
切り紙細工でも見るように手足を四方に伸ばしたような格好は、まさに黄金の衣を着
た小人の踊りでも見ているようでとても楽しく、黄金花咲く豊年満作の踊りを踊って
いるように見える。」という素晴らしい表現があったことを思い出しました。

     黄がよじるまんさくの花の花びらに
              春と冬とがまとひつく     長沢 美津

 「先ず咲く花」からのマンサクの名は確かフクジュソウやコブシにも与えられてい
た方言でもあり、山や野に春の先駆けとして咲き出す花は「マンサク」であったので
しょう。
 牧野植物辞典では「日本名:満作の意味で、満作は豊作と同様、穀物が豊かにみの
ることをいい、この木が枝いっぱいに花を咲かせるので、このようにいう。またある
人は早春にまっ先に咲くの意にとっている。」と「まんずさく」=「マンサク」のな
まったという名称の由来にはかるく触れているだけです。 でも、こうして風がまだ
冷たく、霜も降りる真冬に他の植物に先駆けて咲き出した健気な花には「まんず咲く
花」=「マンサク」の名がふさわしいと思いました。

 マンサクの花を良く見ると蕾が一ヶ所から3ー4個かたまり、それぞれの蕾から四
方に四本の花弁を伸ばしていますので、黄色の紐状の花弁が一ヶ所から12ー16本
出ていることになります。 それが、手足を四方に伸ばして豊年満作の踊りを踊る小
人のように見えるのですね。

                           うめだ よしはる


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