カタクリの花

 万葉集に詠まれている「かたかご」の花はカタクリの古名で、花が美しいばかりではなく、根茎から上質の澱粉が採れ、葉も花も上質の山菜として食用に供された山野草で、春の到来のシンボルでもあったのでしょう。

  

    もののふの八十をとめらが汲み乱(まが)ふ
               寺井の上の堅香子の花  大伴 家持

 私の地域では彼岸を過ぎる頃からカタクリの開花が始まります。 群生地は丘陵や低い山の雑木林の北側の斜面で、紅のかかった紫の花が一面に咲き乱れているのは、何回見ても見飽きない光景です。 

 訪ねた植物園ではニホンカタクリ(かたかご)に加えてセイヨウカタクリに、やや開花時期が遅い黄色の花を咲かせるアメリカ種の類も植えられていて、それぞれの違いを知ることが出来ます。 3種のカタクリの画像を紹介しました。 黄色のものは花の色で区別がつきますが、下の画像のセイヨウカタクリは反り返った花弁の基部が黄色味を帯びていますので、注意してご覧下さい。

 カタクリは葉が伸びるにつれて蕾も育ち、花が開くと6枚の花弁が大きく反り返ってうなだれ、花弁の外へ一本の雌しべと六本の雄しべが長く垂れているのが印象的です。 一度見ると忘れられない優しい姿で、春の妖精の名に恥じません。

    うなだれて撓ふはなびら悩ましく
         風にさいなまるる山慈姑の花    植松 寿樹

 花屋さんの店先にアメリカ原産の黄色の花を咲かせるカタクリの姿を見かけるようになりました。 比較的栽培が容易な事から、家庭の庭での栽培に適している花です。

                          うめだ よしはる

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