黄葉/イチョウ

付近の雑木林や樹木畑に木枯らしが吹抜けるようになると、周辺の景色は緑一
色から黄緑、黄、そして、紅色に変り、弱い秋の陽がそんな葉を通り抜けますま
す色彩が映えてきます。 雑木林を構成する植物には紅葉する植物の種類が少な
いためか、武蔵野の紅葉は黄葉の言葉で代表されるといっても良いでしょう。
イチョウの街路樹の黄葉が日に映える美しさ、風に吹かれて落ちる黄色の葉、株
元に敷き詰められた黄色の落ち葉には侘びしささえも感じました。

     金色の小さき鳥の形して
           銀杏散るなり夕日の丘へ     与謝野 晶子

 イチョウの原産地は中国南部で、日本には仏教の伝来と共に渡来したといわ
れ鎌倉時代の頃から、神社や寺の境内等に盛んに植えられるようになったと言
われています。そんなことから、イチョウにまつわる伝説も多いようです。 
鎌倉の鶴ケ岡八幡宮の大イチョウ、実朝暗殺の物語なども、神社にイチョウが
植えられたということを裏付ける話ではないでしょうか。

 イチョウの葉や種子は漢方薬として利用されているようで、近所の農家でも
イチョウの樹木畑を作り、樹幹を切り詰め、側枝に繁る葉を収穫、乾燥してド
イツへ向けての輸出のため契約栽培をしているといいます。 聞くところによ
りますと、霜やけや冠動脈硬化による心臓病に有効な成分を含み、それがドイ
ツの製薬会社に利用されているとか・・・・・

 種子は皆様よくご存じの銀杏(ぎんなん)ですが、白果(ハクカ)とも呼ば
れるとか。食用に用いられるのはもとより、薬用としては咳止めや痰のきれを
良くするのにも用いられるようです。 茶碗蒸しの中からグリーンに輝く銀杏
の一粒を見つけだすのは楽しくもまた嬉しいことですね。

 イチョウの名の由来にもいろいろと説があるようで、江戸時代に外国=異国
から来た植物というところから「異朝の木」とか、「葉の形、蝶に似たれば寝
たる蝶」から「寝蝶」だとの説、また、貝原益軒の「大和本草」にある「一葉」
葉が一枚だけ付くということから、一葉がイチョウになったとする説などがあ
り、長く「一葉」の説に統一されてきたとのことです。
しかし、昭和2年、新村 出博士が、渡来先の中国の名称の一つである「鴨脚
樹(オウキャク)」の宗音「ヤーチャオ」がなまったものと発表し、現在はこ
の説に落ち着いたと、私の植物学の教授であった館脇 操氏が「北方植物園」
・朝日新聞社発行に紹介しています。

                          うめだ よしはる

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     晩秋から冬の花へ