ホタルブクロ(蛍袋)/武蔵野の花


  25年前、ここ武蔵野の一角の国分寺市の北のはずれに移り住んだ頃は、雑木林に囲まれた家の周りに、梅雨の時期になると薄紫色のホタルブクロの可憐な花があちこちに咲いていました。 最近ではめっきり少なくなりましたが、それでも梅雨の頃から夏の暑い時期まで緑の木陰に咲いて、風に揺れる花姿は風情があります。

 梅雨のしとしとと降るここ数日の雨に打たれながらも袋状で薄紫色の先端部が五つに裂けた花を見つけると、なにかほっとした心の安らぎを感じます。

      むらさきに梅雨の雨間をあざやけし
              あら草むらのほたるぶくろの花     宮 柊二

 ホタルブクロはツリガネソウとも言われていますし、最近では観賞用に花数の多い改良種がカンパニュラの名前で鉢植にされて花屋の店先に並んでいるのを見かけます。 ホタルブクロを含めてこのグループは宿根生の草ですので、うまく育てると毎年花を楽しめましょう。 昨年から八重咲きの白いホタルブクロが庭の植物の仲間入りをしました。 

 ホタルブクロの名前の由来はいろいろあるようで、この釣鐘状の花に子等がホタル(蛍)を入れるからホタルブクロだと言う人もいるようですし、また、ホタルブクロ(火垂る袋)は火を垂れ下げる袋・・提燈(ちょうちん)と形が似ていることに由来していることから、地方によっては、チョウチンバナ、トウロウバナ、アンドンバナとも呼ばれているようです。 さらに、梅雨の時期に咲くので、アメフリバナの名も与えられています。一つの花の名前も、土地々々によってその呼び名も変わるようです。

 梅雨の雨に濡れ、少し大きめの葉の間から咲くうす紫色のホタルブクロには、楚々とした美しさがあり、学名のカンパニュラの名にまつわる金のリンゴ園を忠実に命にかえて守った娘の生まれ変わりだという神話を思い起こさせる花です。

      山中のほたるぶくろに隠れんか         小澤 實

                                うめだ よしはる

晩春から夏の花へ

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