ムラサキシキブとコムラサキ

朝から冷たい雨の降る休日は、先日本屋の店先で見つけた毎日新聞社発行の「東京の
自然」のページを繰って過ごす一日になりました。 「コムラサキの小さな秋」と題
した項には、コムラサキがムラサキシキブと呼ばれることが多く、その名前に混乱が
あるとあり、千代田区大手町の北の丸公園でも「ムラサキシキブ」と名札を付けられ
た植物が、コムラサキのようだったと紹介しています。

牧野植物図鑑に「優美な紫色の果実を才媛紫式部の名をかりて美化したものである」
と牧野博士は述べています。 コムラサキは実のつきがが良いことから最近では生け
垣用に多く植えられているようですので、こうした記事を読むと、私達がムラサキシ
キブと称し果実の美しさを愛でているものには意外にコムラサキが多いような気がし
てきました。

  ムラサキシキブ最も早く実を持てど
               最も早く鳥の食い去る     土屋 文明

以前に発行された「趣味の園芸」11月号(NHK)に「ムラサキシキブとコムラ
サキ」と題して、園芸店でムラサキシキブを買ってきて楽しんでいたらこれは「コ
ムラサキ」だといわれたが、どう違うのかとの問があり答えが載っています。
回答では、園芸店ではコムラサキを通りが良いのでムラサキシキブとして売っている
ようだとの前談から、日本にはムラサキシキブ属(クマツヅラ科)のものには数種が
あり、このうち園芸店では、コムラサキ、ムラサキシキブ、シロシキブ(正確には白
実のコムラサキ)の三種が良く売られていること、そしてわりにコンパクトに仕立て
られて実つきが良く見栄えがするという点でコムラサキに人気があると記してます。

ムラサキシキブとコムラサキの一番の違いは、コムラサキでは葉柄と花柄が少し離れ
て出るのに対し、ムラサキシキブでは葉柄のつけ根の近いところに花柄が出ることで
、これが比較的分かりやすい確実な見分け方のようです。

コムラサキはコシキブ(小式部)とも云い、百人一首の「大江山いくのの道の遠けれ
ばまだふみもみず天の橋立」の詠み人で優雅な才能ある女性であった、小式部内侍の
名からの由来であるという記載を「花の手帖」永井かな著でみつけ、両種ともに美人
の名をかりて美化された名前であったことに命名者の豊かな知識に感銘を受けた日で
もありました。

家の廻りで紫色の小粒の実を光らせているのは、上の見分け方に従うと、コムラサキ
になります。
                             うめだ よしはる

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